日本がグーグルやアマゾンを生み出せない真因
製造業に適した人材ばかりを求めていいのか
出口 治明 : APU(立命館アジア太平洋大学)学長
2020年08月15日
グローバルな企業間競争は競技のルールもしくは競技そのものが変わった(写真:ロイター/Mike Blake、ロイター/Pascal Rossignol)
日本ではバブル崩壊後、経済の低迷が長期化し、
この30年間でどのくらい低迷してしまったのか、
判断基準となる項目別では、日本は「
一方、
人口減少もデフレも根本的な要因ではない
なぜこんなに日本の経済は弱くなってしまったのか。
しかし、
ユニコーン企業は日本に3社しかいない
ユニコーン企業とは未上場で評価額が10億ドル以上のベンチャー企業を指します。世界のどこにユニコーンが生息しているかというと、2019年7月末時点で、世界計380社のうち、アメリカが200社弱、中国が100社弱と全体の8割を占め、日本はわずか3社にすぎません(日本経済新聞)。問題の核心がここにあります。
戦後の日本の高度成長は製造業が牽引しました。ところがいまや製造業がGDPに占める割合はおよそ20%です。雇用に占める製造業の割合に至っては20%を切り、17%(2018年度平均 総務省「労働力調査」)に過ぎません。もはや製造業には日本全体を引っ張る力のないことは明らかです。
日本経済の低迷は、新たな産業社会の牽引役になれるユニコーンがなかなか生まれないところに根本的な原因があります。学者によれば、ユニコーンを生むキーワードは、女性・ダイバーシティ・高学歴の3つだそうです。
まず女性ですが、現在の世界はサービス産業が引っ張る方向に向かっています。そしてサービス産業のユーザーは世界的に見ると女性が6~7割と大勢を占めています。つまり需給ギャップが大きくなっている。このギャップを埋めるためにヨーロッパではクオータ制が行われているのです。ところがわが国の女性の社会的地位は153カ国中121位(世界経済フォーラム)というひどさ。これでは女性の望む新しいサービスのアイデアが生まれるはずもありません。
ダイバーシティについては、ラグビーワールドカップにおける日本チームの活躍振りを見れば誰しも理解できるのではないでしょうか。日本人だけで戦ってベスト8に入れたか。混ぜることでチームは強くなる、まさにOne Teamです。ビジネスの世界も同じです。日本の企業は極論すれば日本人の男性だけでワールドカップを戦っているのです。これでは地位が下がるのもなるほどとうなずけます。
高学歴についてですが、製造業とユニコーン企業を比べると、製造業で働く人は比較的低学歴で(世界の製造業の従業員の中に占める大卒以上の高学歴者は約4割)、ユニコーンは多国籍、高学歴という点に大きな違いがあります。
日本の大学進学率は53%前後でOECD(経済協力開発機構)平均より7ポイント程度低い。つまり、日本は先進国のなかでは大学進学率の低い国なのです。
そして大学に進学しても、学生があまり勉強をしない。これは学生ではなく企業側に責任があります。
新卒採用面接で「アルバイトやクラブ活動でリーダーシップをとった経験は?」などという質問をしている限り、誰が勉強するでしょうか。内定を出した後にはじめて「成績表を送ってください」といわれる現状では、学生は必死になって勉強して良い成績を取ろうとは思わないでしょう。つまり、日本では採用基準に成績が入っていないのです。
グローバル企業は成績の悪い人材に見向きもしない
グローバル企業はこうした成績軽視の在り方とは真逆です。
ということは、
「飯・風呂・寝る」
「飯・風呂・寝る」の生活から「人・本・旅」へ
これに対して日本の企業社会では、
こうした社員を5人集めて「
働き方改革を行い、
Copyright©Toyo Keizai Inc.All Rights Reserved.
コロナ時代の資産運用
新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が制約されるなか、主要国の株式市場は堅調だ。
しかし、それ以上に注目を浴び、史上最高値を更新し続けているのが、金の価格だ。
※ メール・BLOG の転送厳禁です!! よろしくお願いします。
コメントをお書きください