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(新型コロナ)感染者増、検査増えたから?


陽性率も上昇、感染拡大の様相

朝日新聞デジタル 

2020年8月2日

 新型コロナウイルスの感染者数が増えたのは、検査数を増やしたからだ――。

最近の急激な感染者数の増加について、政府や東京都からはそんな説明も聞こえてくる。

だが、それは正しい見方なのか。

データを分析すると、7月に入ってからの感染者数の急増は、検査数の変化からだけでは説明がつかないことが浮かび上がる。 

 「数だけをみると増えているが、検査数も増えている」。

西村康稔経済再生相は7月22日、感染者数の急増について会見でそう説明した。

東京都もこれまで、感染者急増の理由の一つとして検査件数の増加を挙げている。

 こうした説明はどれほど実態に即しているのか。

厚生労働省のまとめによると、約2カ月前の6月初旬、日本では1日に約3千件(過去7日平均)のPCR検査が行われ、40人ほどの感染者出ていた。

検査を受けた人のうち陽性者の割合を示す陽性率は、この時点では1・4%だった。

 その後、検査数は7月下旬時点で約1万2千件(同)まで増加した。

ただ、検査を拡充すると、一般的に陽性率は下がるとされている。

仮に陽性率が1・4%のままで推移したとして予測しても、現時点の1日の感染者数は170人ほどになる計算だ。

 しかし、実際の感染者数の増加は29日時点で1日に870人(同)を超えている。陽性率は7%「検査を増やしたから」という理由だけでは説明できないハイペースで、実際に感染が広まっていると考えられる。


 感染者数と死者数が共に世界最多の米国でも、トランプ大統領が感染者の増加について「多くの検査をしているから」などと説明してきた。だが、データをみると、日本と同様に、検査拡充だけでは説明できないペースで感染者が増えている。

一方、英国のように、検査を増やしても感染者が減っている国もある

 世界保健機関(WHO)は5月、各国が感染拡大をコントロールできているかの基準の一つとして、「陽性率5%未満2週間続いている」ことを挙げた。 南米や南アジアなど感染拡大が深刻な地域では陽性率が高く、60%を超える国もある。

検査が不足し、もっと多くの感染者が国内にいると考えられる。欧州オーストラリア、韓国などでは陽性率1%未満だ。 

 感染が落ち着き始めた国に比べると、現在の日本は陽性率が高めだ。感染の疑いが濃い人に検査対象を絞っていることなどを考慮しても、検査が感染拡大に追いつかない状況になっている可能性がある。(高野遼)

 ■ 業務集中、保健所パンクの危機 情報共有システム、課題も 

 新型コロナウイルスの感染が再拡大し、保健所の機能がパンクするとの懸念が強まっている。

厚生労働省はデジタル化によって保健所の負担軽減をめざすが、現場の実務を担う自治体とのすれ違いが目立つ。

春の「第1波」の課題を解決しきれていない。 

     * 

 <患者1人に30分>

 今春の感染拡大時。東京都文京区の保健所には、一部が黒塗りのファクスが続々と医療機関から届いた。 

 新型コロナウイルスの患者と確認されると、医師が保健所に提出する「発生届」だ。

「ファクスの誤送信が起きたら大変なことになる」(担当者)ため、患者の個人情報が黒塗りされた状態で送られてくる。 

 届いたファクスをもとに、保健所の職員は医療機関に電話をかける。

黒塗りにされた情報を一つ一つ、10分ほどかけて聞き取る。

さらにパソコンで情報を打ち込む作業も合わせると、患者1人あたり20~30分の時間を費やすという。

 

 PCR検査の対象かどうか判断する「帰国者・接触者相談センター」を運営するのも、感染経路を追って感染拡大を抑えるクラスター対策を担うのも、保健所。感染拡大を防ぐ要の機関に業務が集中している。 

 全国で1日あたりの陽性者が100人を超えた3月下旬から、厚労省の幹部は、保健所のパンクを肌で感じていた。

各都道府県からその日の感染者数などの情報を聞き取っていたが、「東京都や大阪府に電話をかけても、つながらないこともあった」。 

 1990年度には全国に850カ所あった保健所予算や人員が削られ、今年度469カ所とほぼ半減。

態勢が新型コロナで急増した作業量に追いついていないのは明らかだった。 

 だが、厚労省保健所に直接人手を送り込むことには否定的だった。

都道府県や政令指定都市、中核市などが運営する保健所の人員はまず自治体がやり繰りするのが筋と考えたからだ。 

     * 

 <「入力が多すぎ」> 

目をつけたのは、発生届の入力の手間を情報ネットワークで簡略化する方策だった。

3月下旬以降、新システム「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」(HER―SYS〈ハーシス)の構築に着手した。患者の情報を集約して国や自治体、現場の保健所で共有する。  

発生届医療機関がオンラインで入力患者本人が健康状態をスマホで入力し、電話連絡の負担も減らせると、同省は期待を寄せる。 

ところが、自治体からは「入力するデータが多すぎる」といった声が上がり、評判が悪い。

東京都や大阪府、神奈川県などの自治体は独自に別の情報共有システムを運用していた。

国に先んじて独自システムをつくった大阪府の担当者は「大阪のように患者数が多い地域で滞りなく入力できるのか。現場が使いやすい仕組みになっているのか疑問な点がある」と話す。 

 厚労省によると、7月31日時点で東京都と大阪府はハーシスに全面移行していない。

発生届のやりとりはファクスで行われていた。

 

8月以降は「ハーシスは一部使うが、独自システムと併用する」(大阪府)といい、国がめざすハーシスによる全国的な情報共有は見通せない。


 東京都で感染者が再び増え始めた6月下旬、厚労省は新宿区の保健所に保健師を数人派遣した。

デジタル化が進まず、人手を直接送り込む現実策に追い込まれた。

だが、事務職も含めて送り込んだ人員を「保健所側が国の監視と受け止めて嫌がっている」(厚労省幹部)との声が漏れる。

 

 感染者は都市部から地方に拡大し、1日当たりの感染者数は1千人を超えた。

 

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は7月29日の衆院国土交通委員会で「保健所の機能はいまパンパンになっている。保健所機能がまひすることが目に見えている。早く手を打つ必要がある」と訴えた。(久永隆一)


コロナ接触確認アプリ、陽性登録者は「76人」--平副大臣が普及を呼びかけ

CNET Japan

2020年07月31日

厚生労働省が6月19日に配信を開始した、新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」。

配信から約1カ月が経過したが、実際の利用状況はどうなのか。

同アプリの責任者である内閣府副大臣の平将明氏と、アプリの仕様を担当したテックチームが現状について説明した。

新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」

 COCOAは、利用者本人の同意を前提に、スマートフォンのBluetoothによって、お互いに分からないようプライバシーを確保しながら、陽性者と接触した可能性について通知を受けとれるアプリだ。GPSなどの位置情報を利用せず、記録することもない。 

 自らの意思で登録をした陽性者と、過去14日間に1m以内で15分以上近接した可能性があった場合に通知される仕組み。通知を受けた後は、自身の症状などを選択すると帰国者・接触者外来などの連絡先が表示され、検査の受診が案内される。


  厚労省では医師会などを通じて同アプリについて周知を進めており、熱があり、かつアプリでも陽性者との濃厚接触の可能性があると通知された人については、検査を受けられやすい制度にしていると平氏は説明する。ただし、すぐに検査を受けられるかどうかは感染者数の状況により変わると付け加えた。

 

間もなく1000万DLも「陽性登録者数」が課題

 7月30日17時時点で、このアプリは950万ダウンロードに達しており、間もなく1000万の大台に乗る。

このペースについて平氏は、「ダウンロード数が少ないと言われているが、思ったよりも多く、皆さまも関心があると思っている」と評価。アプリ経由で陽性者が見つかった事例もすでにあることから、ダウンロード数が積み上がることで、より効果を発揮するようになるとの見方を示す。 

 また、日本大学 生産工学部が7月28日に発表した「人口の約半数がこのアプリを利⽤し、アプリによって感染者と接触したことを知った人が外出を半減させた場合、累計感染者数が半減することが分かった」とする、削減効果の試算なども例として挙げた。 そこで、今後はより一層の利用者拡大に向けて、さまざまなアプローチで国民に呼びかけていくという。

すでに7月6日から2週間、中井美穂さんを起用したテレビCMを流しているほか、8月中には第2弾のCMを予定しているという。また、Yahoo!ブランドパネルやGoogle検索広告などにも出稿している。

このほか、厚労省のウェブサイトや政府広報、SNSなどを通じて認知拡大につとめているほか、各都道府県や保健所設置市などの自治体、経団連や日商などの業界団体、さらにNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどの携帯キャリア、Amazon、楽天、LINEといった各プラットフォーマーにも周知協力を要請しているという。 

 こうした活動により、今後もダウンロード数は伸びていきそうだが、一方で課題となるのが、陽性登録者の少なさだ。

7月30日17時時点でも76人しか登録者はいないという。 

 ダウンロード数と陽性登録者数がどちらも一定の水準に達しなければ、アプリとしての真価を発揮することは難しい。

しかし、陽性者からすれば、いくらプライバシーに配慮されていると言っても、「私が感染者です」と自ら進んで登録したいとは思わないだろう。今後、たとえば登録者に何かしらのインセンティブを与えるなど、対策は考えているのだろうか。 

 この点について平氏は、「陽性者の登録が一番目詰まりしやすい構造であることは政府も理解している。

ボトルネックをどうするかは各省庁と議論する」とコメント。

ただし、引き続き登録の義務化はせず、あくまでも陽性者本人が家族や友人、同僚を守るために、自らの意思で登録してほしいと訴えた。 


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