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日本全国津々浦々に数多存在する難読地名


『日本人として知っておきたい地名の話』北嶋廣敏著/毎日新聞社

一度は「どうやったって読めない」という地名に遭遇した経験、あるのではないでしょうか。

地名について、その由来を中心に記した本、300ページ超。

学生時代は自転車部を専攻し、社会学も学んできた。

本州、四国、九州のあちこちを走ったが、北海道だけは行けなかった。合宿直前に運送アルバイトで足を負傷したからだ。今はなき武揚堂の美しい道路地図を愛用して、いつも一人で走っていた。この本にそれら懐かしい地名がいくつも出て来た。もう風景など忘れてしまったが。

 

第1章は47都道府県名のルーツ、第2章は難読地名のヒットパレード、第3章はびっくりユニークな地名たち、第4章は地名のうんちく風土記、第5章は地名のミステリー、第6章は地名の謎学なるほど講座。この分野を好きでなかったら、どうでもいいような情報ばかりだが、好きなんだからたまりません。じっさい自転車で訪れたところもあって、そうだったのか~と今さら納得したりして。

  

京都の地図。なぜ右に「左京区」、左に「右京区」が位置するのか。

これは一瞬でわかった。京都御所を(平安京)を基準にしているからだ。

天皇は高御座で南を向いて坐ったから、東側が左、西側が右。

地図は普通、北を上にして描かれるから、右=左京区、左=右京区と、逆になってしまうわけである。 

「飛鳥」と書いてなぜ「アスカ」?古代この地はアスカと呼ばれていたが、語源ははっきりしない。「明日香」とも書くが、それはアスカに漢字を当てたもの。

「飛鳥」はトブトリ、ヒチョウとしか読めないが、アスカを「飛鳥」と書くようになったのは歌(和歌)において、「飛ぶ鳥の」が「明日香村」の枕詞に用いられてからで、そこから「飛鳥」をアスカと読むようになった。 

どうしてそんな読み方をするのか。

山形県鶴岡市に「無音」と書いて「よばらず」と読む地名がある。

昔、この地の沼にいた龍神を刺激して怒らせないため、とにかく無音で通ったからだという。

マニアがよく知る山形県真室川町の「及位」。

修験者が崖に宙吊りになって下を見る、のぞきの修行で悟りを開き、京にのぼって高い「位」に「及」んだ。そこでこの地は及位(のぞき)になった。

 

知る人ぞ知る「一口(いもあらい)」は難読地名・珍名の横綱。

京都府久世郡にあり、いまは「東一口」「西一口」に分かれている。

この地域は出入り口がひとつしかないことから「一口(ひとくち)と呼ばれていた。

恐ろしい流行病・疱瘡いもともいわれていた)の侵入を防ぐためお稲荷さんを祀り、天然痘を払う=いもを洗うから「一口のいもあらい」と呼ばれるようになった。

 

日田市の「一尺八寸山」は難読山名のナンバーワン。みおやま」と読む。

北アルプスの「野口五郎岳」は人名からとったのではない。芸能人の野口五郎は山名からとったものである。兵庫県篠山市の「安口」は「はだかす」と読む。山椒魚(ハダカス)のことだ。

奈良県御所市の「蛇穴」は「さらぎ」と読む。蛇がとぐろを巻くことをサラキ(あるいはサラケ)という。面白いなあ。

  

この本には既視感がある。以前書いていたかもしれない。

2008年の編集後記をチェックしたら、楠原佑介『こうして新地名は誕生した!』があった。

でもその後、読んでいたかも知れない。この年に裁判員制度がスタートした。

しつこくしつこく攻撃していたわたし。かつて住んでいた浦和市は「さいたま市」となったが、県名僭称・地名盗用かな書きで全国最悪ランクに落ちた。

日刊デジタルクリエイターズ 編集長 柴田忠男



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