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コロナで「働かないおじさん」が大淘汰される訳

「会社で不要な人は消える」あなたは大丈夫?

遠藤 功 : シナ・コーポレーション代表取締役

2020年07月23日

 わずか半年ほどで世界を震撼させ、経済活動や社会活動をいっきに停滞させ、世界中の人々の生活をどん底に陥れようとしている「コロナ・ショック」。しかし、「コロナ・ショック」は日本にとって、必ずしもマイナスばかりではない。

むしろ、経済的な側面よりも、日本人の価値観や働き方を大きく変え、日本という国が真に豊かで、幸せな国になるための好機と捉えている──。 


『現場力を鍛える』『見える化』など数多くの著作があり、経営コンサルタントとして100社を超える経営に関与してきた遠藤功氏は、「この『コロナ・ショック』は、ビジネス社会における『プロの時代』の幕開けになる」という。

「コロナ・ショック」を見据え6月に集中執筆した『コロナ後に生き残る会社 食える仕事 稼げる働き方』を緊急出版した遠藤氏が、「コロナで『働かないおじさん』を筆頭に『会社で不要な人』がどんどん大淘汰されていく理由」について解説する。


コロナという「目に見えない黒船」は、この国を再生させる大きなきっかけになりえる。

私たちは「コロナ・ショック」を、自らの手で「コロナ・チャンス」へと変えなければならない。

本書では「企業」「仕事」「働き方」という3つの視点で、ポストコロナの世界を展望してみたい。


会社の中は「不要不急」だらけだったという現実

コロナの影響で、多くの企業は操業停止を余儀なくされ、立ち止まらざるをえない状況に追い込まれた。動いていたものがひとたび止まると、いろいろなことが丸見えとなる。動いているときには見えなかった不都合な真実」がいっきに顕在化した。ひとことでいうと、会社というところが、いかに「不要不急」なもので汚染されていたのかが明らかになった。く必要のない不要な通勤、結論の出ない不要な会議ただ飲み食いするだけの不要な出張、意味や価値のない不要な業務、だらだらとオフィスにいつづけるだけの不要な残業……。

そして、たんに会議や出張、業務だけにとどまらず、いざ会社が本格的に再始動したときに、「『本当に必要な人』は誰なのか」「本当に役に立つ人』は誰なのか」も明白になった裏返すと、「不要な人」「役に立たない人」、つまり「『いらない人』は誰なのか」が白日の下にさらされてしまったともいえる。

「コロナ・ショック」は、たんなる大不況のみならず、「『働かないおじさん』を筆頭に『会社で不要な人』が大淘汰されていく時代」の幕開けにもなる。そもそも日本企業は、90年代のバブル崩壊後、「3つの過剰」苦しめられてきた。「設備の過剰」「債務の過剰」、そして雇用の過剰」の3つである。

「雇用の過剰」は日本企業のアキレス腱

【1】企業が「雇用のセーフティネット」を担う限界

たしかに、日本企業の多くは1990年代から2000年代はじめにかけて厳しいリストラを断行し、「3つの過剰」を解消する努力を行ってきたその結果、多くの日本企業は石油ショックなどの外的ショックに耐えられる筋肉質な体質」へと転換した。キャッシュフロー重視の健全経営を志向した結果、「設備の過剰」と「債務の過剰」はコロナ前までは限定的だったといえる。しかし、「雇用の過剰」はいまもって大きな課題であり、日本企業のアキレス腱である。

企業が「雇用責任」を果たし、「社会のセーフティネット」になることによって、日本という国の失業率は比較的低く抑えられてきた。しかし、ポストコロナにおいて、日本企業に「雇用の過剰」を抱え込んでいる余裕などない

【2】コロナ前と同じ経済活動は難しい

コロナ・ショックにより、「世界経済は大きく縮む」ことになる。そのインパクトは私たちの予想を大きく超えるだろう。経済活動の再開によって、少しずつ需要は回復しているように見えるが、一度蒸発した需要はそう簡単には戻らない。当面はコロナ前と比較して「30%エコノミー」「50%エコノミー」を想定せざるをえない

その先においても、しばらくは「70%エコノミー」が妥当な予測だろう。

それぞれの会社は、まずは「縮んだ経済」に合わせて、身を縮めるしかない。生き残るためには、痛みを伴う施策を断行せざるをえない会社も出てくるだろう。

例えば、日産自動車は生産能力を540万台にまで減らすと発表した。2028年には720万台だったものを、4分の3にまで縮めることになる。日産はコロナ以前から、業績不振により構造改革を進めていた。2019年7月に生産能力を660万台に減らすと発表したが、コロナ・ショック」によって120万台の追加削減をせざるをえない状況に追い込まれた。

こうした経済活動の縮小によって、「不要な人」がいっきに増えることになる。世界経済や日本経済が堅調であれば、「不要な人」を救う手だてはあるかもしれないが、中長期的な経済の低迷が予測されるなか、「いらない人」を抱えているだけの体力が日本企業にはなくなりつつある

コロナ禍が起きる前のことだが、ある大企業の経営者と会食した際、彼は本社で働く3割はいらないと本音を漏らした。いまだったら、「5割はいらない」というかもしれない。

【3】「船の大きさ」が縮めば、「働かないおじさん」はもういらない

実際、ここ数年、「働かないおじさん」は社会問題化していた。

「働かないおじさん」とは、出勤しているのに、仕事もせずにぷらぷらしている中高年層の社員たちのことだ。

明確な仕事や責任も与えられず、やる気も乏しく、職場に「負のオーラ」をまき散らす人もいる。

人手不足が叫ばれていたにもかかわらず、「仕事がない人」「仕事をしない人」たちが一定比率、存在していた。

しかも、働かないおじさん」の給与水準は高い。働かないにもかかわらず、若い人たちよりもはるかに高い報酬を当たり前のように受け取っている。

しかし、このコロナ禍で身の丈を縮めざるをえない企業にとって、「働かないおじさん」のような社員を雇い続ける余裕はない。

船の大きさ」が突然3割縮んだのに、「定員」がそのままでは、船は間違いなく沈没してしまう。

「働かないおじさん」は「不要な人」として真っ先に淘汰される報酬の大きな引き下げが起きるだろう。

自分の食いぶちくらい」は自分で稼がなければ、会社にしがみつくことは、もはや許されない

企業は生き残りに必死。問題は、社員だ

コロナをきっかけに、日本企業は大きく生まれ変わろうとするのは間違いない。変わらなければ生き延びていけないのだから、経営者たちは本気だし、必死だ。問題は社員たちだ。会社が生まれ変わろうとしているのに、社員たちの意識や行動が変わらなければ、その社員は間違いなく「お払い箱」になる。

それは「働かないおじさん」だけの話ではない。

年齢にかかわらず、「役に立つ人間」「価値のある人間」しか生き残っていけない時代に突入したことを、私たちはもっと自覚しなければならない。

あなたは「特別な付加価値を生み出せる人」ですか? 

ビジネスは「環境の産物」である。コロナによって、日本経済や日本企業を取り巻く環境は激変してしまった。

経済やビジネスが縮めば、「新陳代謝」が起きるのは必然で、合理的なことである。

強いものは生き残り、弱いものは淘汰される。生き残りを賭けた熾烈な戦国時代に、私たちは突入していく。

勝ち組と負け組の差はこれまで以上に大きくなり、格差は拡大するだろう。

しかし、変化にうろたえ、右往左往している暇などない。コロナ・ショックという「変化の本質」を正しく知れば、「生き残り策」見えてくる。

衰退していくと見られている職業であっても、特別な付加価値を生み出すことができる真のプロ人材」であれば、生き延びていくことはできる。

逆に、時代にマッチした最先端の職業であっても、付加価値の低いアマチュアレベル」では成功はおぼつかない

これから問われるのは、「個が生み出す付加価値」が「プロレベル」か「アマレベル」かなのである。

コロナがきっかけとなる「人材の大淘汰時代」は、日本人にとって「『個』に立脚した時代」の幕開けでもある。

それと同時に、それぞれの職業に従事する一人ひとりが「『本当に価値のあるプロ』なのか、それとも『価値の低いアマ』なのかが問われる時代」の始まりでもあるのだ。

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