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「コロナ感染をマンション管理組合に届ける」ルールは必要なのか


2020.06.20
未だ新型コロナウイルス感染者への偏見が根強い日本。
そんな中にあって、感染の報告義務のルール化を検討するマンション管理組合も現れ始めているようです。
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*マンションで感染者が出た情報の取り扱いは難しい
新型コロナウィルスの第二波、第三波に備え、マンションで感染者が出た場合の対応を考えている管理組合も多いと思います。その中で、そもそも、感染者が出たことを把握しないと対応ができないので、マンション住民に「感染者が出たら管理組合に届け出る」ということのルール化が可能かという話があります。
そして、届け出があったら、マンションに感染者が出たことを住民に知らせ、注意を促すと共に、感染者が特定され、差別を受けないように配慮しつつ、感染者のサポートをするというのですが…。
果たして、この仕組みは機能するでしょうか。
私が、マンションで住民に感染者が出たことを個人を特定できる形で知っているケースは3件しかありません。
あれだけの感染者数ですから、かなり多くのマンションで感染者が出たのでしょうが、そのことを、管理組合として把握している、さらには住民に知らせされているケースはどれほどあるのでしょうか。
私が知っている事例の1件目は、自宅でコロナと思われる症状が悪化し、救急車が来て搬送したケースです。
管理員さんが、それに立ち合ってサポートしたため、親族から、管理員さんにお礼とコロナ陽性であった旨の連絡があり、コロナだったことは内密に…と。
でも、管理員さんは、理事長だけにはそのことを報告
報告された理事長はどうしたらいいだろうと悩んだけど、親族に内密にしたいという意思がある以上、知らなかったことにしようと決め、住人にも、他の理事にも言わなかった…と。
ただ、救急車が来て、防御服を着た救急隊員が出入りしていたので、多少噂にはなり、理事長に問い合わせはありましたが、この時期、コロナ対応で、コロナであるかどうかにかかわらず、救急隊員の方は防御服を着ているのでわからないということで通したみたいです。
接触感染が心配な共用部分で、その住人に関係するエレベーターのボタンやドアノブ等は管理員さんが入念に消毒したようです(数日間、部屋から出ていないようなので、実際には、感染リスクは限りなく低かったのですが…)。
理事長は、感染者は病院に入院したんだから、もうこれ以上の感染リスクはない。コロナ感染者が出たことを住民に知らせていたずらに心配させることはない。
もし、感染者が特定され、何か差別的な言動があったら、その方が、問題が大きい…と。
事例の2件目は、行政の感染者情報や個人的な情報網で、マンション内で感染者が出たことが、かなりの確率で特定できたケースです。
一部の理事の中で情報は共有したが、家族にも確認しなかったし、住人にも知らせなかった…と。
一般的なコロナ対策の注意事項は、しっかり広報しているので、それで十分だと言うことと、やはり、感染者の特定や差別があった場合のことが心配だったためです。
事例の3件目は、個人的な知り合いからの話です。
知人の住戸の隣には、マスコミで名前が知られている人が住んでいて、お隣同士なので面識があったところ、テレビで、感染が疑われ自宅に籠もっていることを知った…と(後日、陽性が判明)。
でも、特に本人からも、管理組合からもそれに関しては何の情報もなかった。まだ、入居して日が浅いマンションだったので、同じ階の人も、ほとんどそのことを知らないようだった。
でも、自分は知っているので、エレベーターのボタン等触らないように、かなり気をつけた…と。
でも、直接会わなければ、あとは接触感染に気をつければいいだけなので、それでよかったんじゃないか…と。
この3つの事例から思うのは、コロナは本人に自覚が無い陽性者もいるのですから、感染者が出ても出なくても、気をつけることは同じ。
共用部分でのマスク着用や入館時の手指消毒を守るようにし、
不特定多数の人がふれる箇所の消毒をまめにし、
人の集まる集会室等の利用制限、又は感染対策を徹底する。
管理組合として行うことは、それで十分ではないかと思います。
マンション内に感染者が出たと聞けば、どの部屋の誰かを知りたくなるのが人情です。
同じマンションといっても、同じ階の住戸なのか、隣の棟なのかではまったく受け止め方が変わりますから。
噂が先行してしまう場合もあります。現に、防御服を着た救急隊が来たというだけで、コロナだったと噂になってしまったケースもありました。
「夜のまち」での感染が広がっているなどと言われれば、感染した人が、言われなき偏見にさらされることも考えられます。感染したことを届け出ることを求めたり、感染者が出たことを住民に知らせるということは、いい方向に機能しないと、私には思えます。

廣田信子『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』


参考記事

まず、感染が判明した段階で当人は病院に入院したり宿泊療養施設に移ったりしてマンションにはいないことや、管理組合や管理会社への報告義務もないので、状況を把握することは難しい。

その後の保健所からの指導に従うことになるという。

消毒を指示されたら、保健所の助言を得て消毒事業者を手配するといったことが考えられる。

この際に最も注意したいのは、プライバシーの保護だという。

マンション内で感染者探しが始まったり、バッシングが起きたりといったことにならないように、個人情報を保護することが大切。

理事がうっかり部屋番号を言ってしまう、ということはあってはならない。

うちのマンションも、理事会で心構えだけでもしておきたいものだ。


マンション管理業協会では「マンション管理会社の感染症等流行時対応ガイドライン」を出している。

それによると、管理会社は業務をするうえで法令順守が求められるが、「マンション居住者の安全を確保することを最優先として業務を行う」ことが望まれる、としている。

管理組合に対する業務については、緊急時には定められた業務を行えない場合もあること、管理員の安全を確保する必要もあるので、マンションのライフラインを維持するための必要最小限の業務に絞る(勤務時間を短縮する)場合もあることなども、管理組合に対して事前に協議しておくようにといった方針を打ち出している。

また、政府の「緊急事態宣言」により交通の遮断が発令された場合は、管理会社の社員なども動けなくなるので、マンションのライフライン維持の対応について事前に管理組合と協議しておくように促している。

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いくつかのマンションでは、エントランスなどに消毒液を用意したり、感染予防に関する情報を掲示版などに掲示したりしていた。掲示する情報は、日々状況が変わるので頻繁にアップデートしたり、「新型コロナウイルス詐欺への注意喚起」「テイクアウトをしているご近所のショップ」などの情報まで提供しているマンションもあった。このようにスピーディに予防対策に動けているマンションは、平時から防災委員会などが活発に稼働している傾向があるように感じた。なかには、大型台風で被災した経験から、備蓄した消毒液が今回活用できたという事例もあった。日ごろから緊急時の体制が整っているかどうかが、大きなカギになるのだろう。

▼ 出典:全戸に配布された「コロナ対策のしおり」(パークシティ溝の口)

「数戸数1000戸超の大規模マンションで、管理組合と自治会が並行して活動していること」、「築年数が経過しているため、高齢者が多いこと」といった特殊性を前提に見てほしい。

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このマンションでは、緊急事態宣言の発令を受けて、

・対策本部の立ち上げ
・注意事項等の掲示
・手指洗浄液、消毒液設置 などを行った。
さらに、感染者が発生した場合、
・本人または家族に感染したことの連絡を要請
・感染者が発生したことを居住者に通知
・共用部の消毒のための事業者の手配
・感染者・濃厚接触家族への生活支援
などの準備をしており、担当表(管理組合・自治会・管理会社)の作成などもしているところだ。感染したことを管理組合に知らせる義務はないが、単身や夫婦のみの高齢者も多いことから、自宅待機の場合に食料品や日用品を各戸の玄関まで届けたいと考えており、そのために本人や家族から連絡をもらって、居住者による支援体制を整えようしている。

そのために、本人の同意を得て自宅待機者を把握しておくという考え方だ。

また、消毒事業者がオーバーフローして、保健所から紹介された事業者がすぐには消毒作業を行えない場合も多い。

そのため事前に、依頼できる消毒事業者を管理会社と一緒に探しているという。ここで課題になるのは、分譲マンションに賃貸で住んでいる居住者だ。管理組合は、区分所有者で組織し運営するものなの

で、賃借人には及ばない。このマンションでは、管理組合(組合員=区分所有者を対象)と自治会(自治会員=居住者を対象)が連携しているので、賃借人も対象として一律の対応ができるのだ。

 

ここまでできるマンションはまれだと思うが、どういったことが起きるのか、事前に準備できることはないか、などを感染者が発生する前に考えておくことは大切なことだ。


 5月7日付けの朝日新聞に、「コロナ拡大、マンション管理の定期総会どう開く?」という記事が掲載されていました。

 本記事の要約は、以下の通りです。 

■ 新型コロナウイルスの感染が広がる中、多くの分譲マンションの管理組合が、年に1度の通常総会の時期を迎えている。総会は、新年度の予算などを決める大切な場。どんな開催方法が考えられるか。 

■ 神奈川県内の団地(250戸)の管理組合の総会では、扉や窓を開けっ放しにした集会室にマスクをつけた理事ら約20人が集まり、間隔をあけて着席。出席者数や所要時間は、いずれも例年の4分の1程度 

■ 事前準備の段階で、そもそもこの時期に開催するかどうかが議論になった。総会開催にあたっては、法務省が3月、「本年中に集会を招集し、集会(総会)において必要な報告をすれば足りるものと考えられる」との見解を公表したため、延期の「お墨付き」が与えられていた。 

■ しかし、その 一方で損害保険の契約など必要な手続きを決議したい、あるいは総会延期によって役員の任期が延びてしまうなどの事情から総会の開催を求める声も出た。 

■ 結局、なるべく出席者を控えるよう求めるとともに、所要時間も短縮して総会を開く方向で調整に入った。また議案に関する質問があれば事前に書面で提出してもらうこととした。 

■ 定期総会は、区分所有法で年に1回開催することが義務づけられている。総会の成立要件として「議決権総数の半数以上を有する組合員の出席」が必要だが、委任状や議決権行使書を提出すれば出席とみなされるため、会場に足を運ぶ必要は必ずしもない。 

■ それを踏まえた専門コンサルタントからの提案は以下の3点。

(1)総会の開催通知で「感染防止のため、できるだけ少人数で開催したい」ことを伝え、委任状や議決権行使書の提出を求める。

(2)上程する議案は、管理組合が加入する損害保険や、管理会社の業務委託の契約更改に関するものや、新年度の予算案など必要最低限の項目に絞る。(住民の意見が大きく分かれる可能性がある議案の上程は避ける)

(3)新型コロナの感染拡大を踏まえ、共用部分の消毒などに使う感染予防対策費入れておく

 

■ 昨今、急激に普及しているウェブ会議システムを使って、総会を開くことは可能なかについては、法務省の見解は「現行の区分所有法では規定がなく、その可否は判然としない」とのこと。
■ 従来通り会場に集って総会を開く場合に委任状や議決権行使書を本人確認できる電磁的システムメールなど)で提出することは可能だが、こうした仕組みを新たに導入するには、管理規約などの改正必要なため注意が必要。
■ 住民の安全を守るためにも、弾力的な組合運営が求められることから、今後電磁的システムのニーズが高まる可能性がある。

今後のマンション管理の核となる「人x IT化」

  マンション管理適正化推進法の改正に伴い、「急速なIT化」に対応・サービス向上化

 不動産業界では2019年から「重要事項説明書のデジタル化」の取り組みが始まっています。

マンション管理業界でも2020年6月16日にマンション管理適正化推進法の改正案が可決され、ITを活用した重要事項説明が今後普及していくと思われます。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、一定の条件下においては、ITによる重要事項説明を行うこともでき、ITの活用を推進することで、対面による説明や書面を介しての接触を回避することができます。

また、重要事項説明の記録を分析することで、お客さま対応の品質向上に繋げるためのチェックツールとして活用することができます。

 

 「非対面」と「コミュニケーション」を実現する「一人ひとりの要望に応じたサービス提供」

 宅内インターホンの液晶画面から専用ボタンを押すと、マンションとは別の場所に位置するコンシェルジュデスクへダイレクトに繋がり、通話ができるサービスで、すでに一部の分譲マンションに導入しています。

従来の有人コンシェルジュで対応していたお問い合わせや要望にも対応でき、コールセンター型コンシェルジュサービスのような煩わしさもありません。

非対面と対人のコミュニケーションを組み合わせることで、マンションへの新たな付加価値を与えることができます。

 

警備員への安全確保と、入居者同士、管理会社との繋がりの重要性

 入居者の安全・安心を守るため管理員や警備員による人手だけでは限りがあると同時に、従業員の安全確保を両立することはマンション管理において大きな課題です。

また、24時間警備員を常駐させる場合には多額の費用が必要です。

画像遠隔監視システムは、従来の録画型防犯カメラから進化し、防犯カメラの画像を警備会社に送信し、別の場所でマンション内を見守ることのできるシステムです。

有事には警備員が出動するため、従来の安全・安心を提供することができます。 

 

このような監視システムにより非対面でも防犯性を高めることができますが、最も有効な手段は入居者同士の挨拶やコミュニケーション、管理会社との関係構築であることは言うまでもありません。


居住者のライフスタイルやワークスタイルが多様化している中で、マンション管理を取り巻く環境も大きく変化しつつあります。

さらに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、IT化は加速すると考えています。 

当社ではIT化を推進するにあたり、新しい技術を取り入れるだけでなく、今までに蓄積されたデータや知見を活かした「新技術と経験が融合するマンション管理」を目指します。

by マンションみらい価値研究所 


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