おがわの音♪ 第1001版の配信★


「電機の試練」大手8社襲うリーマン以来の難局

長期戦も予想される中、耐え抜く力はあるのか

冨岡 耕 : 東洋経済 記者
2020年06月15日


新型コロナ禍で多くの企業の業績が悪化している。電機業界も例外ではない。

前年度(2020年3月期)決算では、大手8社(ソニー、パナソニック、シャープ、日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通)のうち、NEC、富士通を除く6社の当期純利益が減少した。 

しかし、これは序の口である。コロナ禍の影響で本当に苦しむのは今年度(2021年3月期)だ。業績予想を出せない企業が上場企業のうち約6割に上っている。
電機でも対応が分かれ、業績予想を出した企業も達成に確信があるわけではない。
その多くが足元の2020年4~6月期をボトムとみているが、第2波、第3波がいつ来るかは読めず、さらに「車載市場は厳しい状況が続きそうだ」(日立製作所幹部)との声もある。

 *過去10年の累計純利益1兆円超えは大手8社中3社のみ

過去の巨額赤字で深い傷がようやく癒えてきたところに、再びやってきた危機。
新型コロナウイルスがやっかいなのは感ックを上回るという見方も少なくない。
電機各社はこれまでの構造改革でコロナ禍に耐え抜く力ができているのか、そしてアフターコロナを見据えた将来戦略をどう立てようとしているのか。
ヘルスケアや半導体製造装置、電子部品など日本企業が強さを発揮できそうな分野も少なくない。
特集では待ったなしの各社の現状や課題について、経営者インタビューも交えながら徹底検証した。
過去20年の歴史を振り返ると、ITバブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災と、3つの大きな危機を経験した電機業界。
人員削減や事業構造の見直しなどを進めて乗り越えたが、収益力には明らかな差も出てきている。
2000~2020年の累計純利益で、1兆円以上を稼いだのは大手電機ではソニー、日立製作所、三菱電機のみだ。
特にソニーと日立は、リーマンショック後に大きく変わった。それは営業利益率などに如実に表れている。
ソニーはゲームに代表される、継続的な取引で収益を上げる「リカーリングモデル」に移行して復活。
半導体の主力となるCMOSイメージセンサーもスマホカメラ向けに躍進しており、2020年3月期の営業利益率は10%を超えている。
リーマンショックで2009年3月期に国内製造業で過去最悪となる7873億円の最終赤字を出した日立製作所も復活が顕著だ。
リーマンショック前に22社あった上場子会社や事業を次々に売却して選択と集中を進めた結果、残る上場子会社は2社のみとなった。安定的に稼げる社会インフラなどの企業間ビジネスへと大きく舵を切っており、営業利益率はソニーに続く8%近い高水準に達してる。
また三菱電機は大手電機8社の中で唯一、リーマンショック以降に赤字を計上していない優等生とされてきた
携帯電話などの不採算事業から早期に撤退。大手の中でもっともバランスの取れた安定経営を続けてきた。
一方、パナソニックは車載電池と住宅の強化が不発に終わり、低収益体質になっている。
台湾・鴻海精密工業傘下のシャープも液晶パネルに頼るビジネスから抜け出せず、コロナ禍のマイナス影響を大きく受けている。
また経営再建中の東芝は、市況が乱高下しやすいLNG(液化天然ガス)事業や家電など消費者向け事業を売却し、取引が安定している社会インフラ中心に再構築したことで復活の兆しが出ているが、まだ病み上がりで問題を多く抱えている。
*
*韓国サムスンは10年間で30兆円の純利益を稼いだ
ただしソニーや日立製作所、三菱電機も「勝ち組」とはいえない。
8社の中で20年間の累計利益が最も大きい三菱電機ですら、その額は約2.4兆円。
韓国サムスン電子は同期間に約30兆円を稼ぎ出している。
さらにソニーや日立製作所、三菱電機も2021年3月期は大幅減益が避けられない。
ソニーはエレクトロニクス関連、日立製作所は車載や産業機器関連、三菱電機は産業メカトロニクスへのコロナ影響が特に大きいからだ
再び大きな試練の時を迎えた電機業界はどう戦っていくのか。
コロナ禍は各社に例外なく襲っており、企業それぞれが抱える課題も浮き彫りにしている。
構造改革のスピードが弱まれば、どの企業も転落していくだろう。
さらにコロナが終息しても密集を避け、人との接触を減らすという流れは続く可能性が高い。
以前とは異なるニューノーマル(新常態)でどう収益を伸ばしていくか。
アフターコロナではこれまで以上に勝ち組と負け組がはっきりとする世界が待っている。
Copyright©Toyo Keizai Inc.All Rights Reserved.

20年の世界経済:コロナ第2波来るなら7.6%縮小も、中国は成長継続か         

2020年6月12日
経済協力開発機構(OECD)は10日付のリポートで、新型コロナウイルスの第2波の感染が発生した場合、2020年の世界経済が7.6%縮小すると予測。第2波が発生しなかった場合、6%の縮小になると予測した。
日本については20年、21年の成長率は、それぞれマイナス6%、プラス2.1%になるとの見方は示された。
これより先、世界銀行は8日付のリポートで、20年の主要国の国内総生産(GDP)が7.0%縮小し、新興国が2.5%の縮小になると予想。一方、中国経済はプラス成長を継続するとの見方を示した。
ただ、世銀は20年の中国経済の成長予想を今年1月に予想した5.9%から1%に下方修正した。
世銀は、新型コロナの感染状況が予想以上に悪化し、世界の経済活動の停滞が予想以上に延びた場合、一段の下方修正を示唆した。
米連邦準備制度理事会(FRB)は9-10日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)では、20年の米GDPが6.5%縮小し、年末の失業率が9.3%まで上昇するとの見通しを示した。
中国のエコノミストは、中国も2カ月以上にわたってロックダウン(都市封鎖)を実施したと指摘。
ロックダウン期間内の経済活動がほぼ停止状態に陥ったが、新規感染者数がほぼゼロまで押さえ込んだ後の解除となった。そのため、経済活動の再開が順調に進めていると評価。また、解除後の新規感染者数が極めて少ないため、現時点では第2波の到来確率が低いとみられている。
これとは対照的に欧米では、新規感染者数が依然として多く報告されているにもかかわらず経済活動の再開に踏み切っている。
また、日本も自粛解除後の新規感染者数は一部で発生しており、経済活動の全面再開はできていない状態だと指摘されている。このため、20年の欧米日のGDPは大幅に縮小することがほぼ確実だとみられている。

 




メール・BLOG の転送厳禁です!!  よろしくお願いします。