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コロナ後の世界、「スペインかぜ」後に酷似する予感

  恐慌によるブロック経済、国内では二・二六事件、そして大戦

2020.5.21(木)
青沼 陽一郎

「われわれには多くの措置を講じることが可能だ。関係を完全に断ち切ることもできる」

 中国との関係について、米国のトランプ大統領がそう断言したのは、今月14日のことだった。米国メディアのインタビューに答えたものだ。
「中国には非常に失望した。中国は新型コロナウイルスの流行をなすがままに任せるべきではなかった」
 感染者が150万人超、死者も9万人超の世界最大となった米国。経済活動の再開を急ぐトランプ大統領に、反発の声も大きい。このままではこの秋の大統領選挙にも影響する。思うようにいかない苛立ちは、発生源の中国に向かう。国内の批判も、共通の敵を意識させることで目先を変えようという意図も見え隠れする。

 

☞ 1世紀前の出来事と恐ろしいほど符合

「習近平と非常に良い関係にあるが、今は話したいとは思わない」
 インタビューでそう語った翌日の15日、トランプ政権は、中国の通信機器最大手「華為技術」(ファーウェイ)に対する禁輸措置を強化すると発表した。

携帯電話の中の半導体でもアメリカが関わったものは、外国製品であれ、輸出を禁止する、したければアメリカ政府の許可をとれ、というものだ。
 これを受けて、すぐさま半導体受託生産の世界最大手、世界シェアの5割を占める台湾積体電路製造(TSMC)が、ファーウェイからの新規受注を停止した。

世界のサプライチェーン(供給網)の分断がはじまっている。

 一方の中国も、新型コロナウイルスの発生源でありながら、世界に先駆けて克服した国として、諸外国への支援を積極的に打ち出している。

ところが、その一方で海洋進出を強化。4月中旬には、かねてから埋め立て、軍事拠点化を進めてきた南シナ海に新たな行政区「西沙区」と「南沙区」を設置すると発表。

5月8日には、4隻の中国公船が尖閣諸島周辺の領海に侵入し、このうち2隻が日本の漁船を追いかけ回した“事件”も発生している。

 12日には、新型コロナウイルスの発生源について独自の調査が必要と表明した豪州に対して、食肉の輸入禁止措置をとった。

さらに19日からは、豪州産の大麦に80%超の関税を上乗せしている。FTAを結ぶ中国は豪州にとって最大の輸出相手先である。
 もはや、ここへきての米中両国の強硬姿勢と囲い込みは、“ポスト・コロナ”を見据えた動きとも見てとれる。
 だとすると、もっと深刻に考えなければならないことは、およそ1世紀前に起きた出来事と、現在とが恐ろしいほどにリンクしていることだ。


自国優先でブロック経済化

 100年前にも「スペインかぜ」と呼ばれた新型インフルエンザのパンデミックが起きた。

最初は米国からはじまり、第1次世界大戦に派兵された米軍のテントから世界中に拡散されていった。

当時、中立国だったスペインだけが実態を公表したことから「スペインかぜ」という名が付けられた。

この新型感染症が、第1次世界大戦を終わらせたとも言われる。1919年にはパリで講和条約が結ばれている。
 このパリ講和会議では、米国のウィルソン大統領が国際協調と、国際連盟の設立を説いた。

ところが、いざ設立となったところで、言いだしたはずの米国が参加していない。

もともと他国には干渉しないモンロー主義(孤立主義)を外交の柱としていた米国では、議会が参加を否決した。
 現在の米国でも、自国第一主義を唱えるトランプ大統領が、新型コロナウイルスの世界保健機関(WHO)の対応は中国寄りだとして、拠出金を停止してしまった。

脱退すら示唆している。国際協調の足並みからはずれかけている。

 大戦終結から10年後の1929年には、世界恐慌が襲った。いまの世界の状況は、その10年の間の出来事がひと塊になってやって来ているようなものだ。

 当時の世界恐慌に主要国はブロック経済で立ち向かった。

自国優先主義、保護主義に走って、植民地との貿易関係を強化。列強が独自の貿易圏を作り、それ以外の国や地域とは、高額の関税をかけて貿易を著しく阻害する。
 習近平国家主席が打ち出した広域経済圏構想「一帯一路」は、「債務のわな」にはまった支援先の国々を実質的に植民地にしているようなものだ。
 いまでは、経済ブロックが米中対立の二極化となりつつある。

当時のブロック経済による世界の囲い込みと分断が、やがて第2次世界大戦を招いたことは言を俟たない。

 

寒村の窮状を憂う声が二・二六事件へと

 米国の株価の大暴落からはじまった世界恐慌は、日本にも影響した。

それも農村部の困窮は著しく、農家の娘が女郎として売られていくという惨状もあった。
 そういえば、お笑いコンビ・ナインティナインの岡村隆史が、ラジオ番組でこう発言したことが、女性蔑視として厳しい批判に曝されている。
「コロナが終息したら絶対面白いことあるんですよ。美人さんがお嬢(風俗嬢)やります。短時間でお金を稼がないと苦しいですから」
 これも当時を彷彿とさせ、ポスト・コロナを予言するものとも言える。ある意味で経済を理解している。

だが、それは当時からして、そうした窮状に追い込まれる悲劇であって、それを「面白いこと」と言ってしまうところに、大きな間違いがある。
 そんな悲惨な当時の農村から陸軍に入った部下の話を聞いた青年将校たちが「昭和維新」を掲げて決起する。それが二・二六事件だった。
 いまの時代にクーデターということは考え難いが、日本政府はコロナ対策に「新しい生活様式」を打ち出している。

他者との距離を保ち、食事も対面を避ける。感染拡大には第二波、第三波も予測される。そんな事態がいつまで続くのか。

それで延期された東京オリンピックが迎えられるのか。二・二六事件の4年後に予定されていた1940年の東京オリンピックも幻に終わっていることを付け加えておく。




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