コマツが取り組むスマートファクトリー


協力工場にも広げる「つながり」の輪
2020年05月01日 11時00分 更新
[長町基,MONOist]

 モノづくり関連の総合展示会「日本ものづくりワールド2020(2020年2月26日~28日、幕張メッセ)」の特別講演に、コマツ 生産技術開発センタ 所長の山中伸好氏が登壇し、「コマツ流IoTで『見える化』『生産性改善』を実現した取り組み」をテーマに、同社のシステムや導入方法について紹介した。


グローバルでの販売体制に対応した生産5箇条

photo
コマツ 生産技術開発センタ 所長の山中伸好氏

 建設機械や車両事業を展開するコマツの2019年3月期の連結売上高は、2兆7252億円で営業利益は3978億円となっている。

 地域別売上高は、国内は13%と少なく、北米が25%、アジア(中国除く)が14%、中南米13%となっており、海外市場が中心になっている。これに合わせて、生産体制はグローバルに広がっており、国の経済状況や資源価格などに応じた需要変動に対応できる体制を構築している。

例えば「需要が拡大した場合には、1つの工場の規模を大きくするのではなく、同じような製品を作っている他の工場に委託する形をとる。こうした仕組みを取り入れているために、生産比率でみると国内が40%を占める」と山中氏は語る。

 これらを推進するためにグローバル生産方針として以下の5箇条を定めている。

  • 需要のある所で生産(溶接、組み立て)を行う
  • 本体のクロスソースを推進し生産能力の有効活用を図る
  • キーコンポーネントは一極生産(技術革新を継続させる)
  • 最適調達を推進するため部品のクロスソースを行う
  • 開発と生産を一体化したマザー工場チャイルド工場を指導する

 これらをベースに、グローバルでの販売動向を見ながら適正な生産計画を立案することで無駄を抑えた生産を行えるようにしている。

モノづくりのつながる化を実現する「KOM-MICS」

 ただ、コマツが採用している部品の加工の88%は、協力企業によって行われているそのため「現在国内の生産技術における環境面での課題として、労働力不足や若者のモノづくり離れがある。特に協力会社には中小企業も多く心配な状況だ」と山中氏は述べる。

 国内マザー工場でキーコンポーネント生産が不可能になれば、技術革新が困難になり、差別化ができなくなる。最終的には競争力の低下を招くことになる。

  そこで、生産工程で最も必要となる機械加工や溶接については自動化を進めることを徹底したという。自動化により機械から作業記録を取得することで作業の見える化行い、改善に取り組んでいる。さらに鋳造・鍛造についても今後、機械化を図って全体的な見える化を進め、生産性を高める計画だ。

 コマツでは1975年に生産技術センタを設立し、建機特有の問題を解決する材料や生産技術に関する新技術開発や最先端技術の調査・評価を行ってきた。その中でITやデジタル技術を活用した独自技術の開発にも取り組んできている。

 コマツのデジタル化への取り組みでは、建機の稼働情報をインターネット経由で取得しその管理や分析を行えるシステム「KOMTRAX」が有名だが、一方で工場のデジタル化やスマート化を実現する「KOM-MICS」というシステムの構築にも取り組んでいる。「KOM-MICS」では、モノづくりのつながる化を目指し、加工情報の見える化、生産現場・生産設備のネットワーク化を行っている。

photo
コマツの生産革新への取り組み 出典:コマツ

工作機械700台以上、溶接ロボット約400台を接続して見える化

 KOM-MICS」の展開としては、まず既存機のデータを収集し、課題を抽出し生産性を高めることから開始した。これらのデータを生かし、品質保証(トレーサビリティー)やサプライチェーン最適化なども進めている。この生産現場改善の取り組みは社内だけではなく協力企業にも広げて、生産向上の支援を行っている。

 現在、同システムは工作機械が705台(社内348台、協力企業337台、海外20台)、溶接ロボット395台(100台、142台、147台)が接続済みだ。

 同システムを用いることで、見える化により課題を洗い出して改善を進める。これらの取り組みにより、生産性を2倍に高めることが目標だという。

 具体的には「溶接では清掃のために停止していた時間を自動化で短縮する。加えて、大電流化することで溶接時間そのものの短縮にも取り組む。また、機械加工は停止や非加工時間を自動計測し予知機能などを活用することで短縮する。さらに、最適な工具や条件により切削時間の短縮にも取り組んでいる」と山中氏は語る。

photo
KOM-MICSの構成 出典:コマツ

 「KOM-MICS」による改善技術の展開は、まず生産技術センタがある大阪工場で立案し、同センタでアプリケーション開発、基礎試験を実施する。次に大阪工場の実ワークで評価し、問題点をフィードバックする。その結果を受けて同センタでカスタマイズを行い、他工場にも導入していくという流れである。

 そこでは、工場のQCサークルや部門報告における多種類のデータ変化や関連性解析などの「現状把握」などを行う他、歯止め、水平展開での効果確認、他工場との比較など「効果の確認」などを行う。「これまでこれらのデータを収集することが大変だったが、このKOM-MICSが使えることもあり、効率的に改善のアクションが行えるようになった」と山中氏は語る。

 協力会社の導入については、大きな抵抗もあった。そこで、その中の1社を選定し、説明を繰り返して説得し、まず1台のトライアルから始めた。1カ月使用した結果、長年改善できなかった加工効率が改善できたことが確認されたことから6台に増設し、その後、導入を増やしながら効果を証明していった。さらに、その改善事例を他社にも紹介することで導入企業を増やすことができたという。

 また、最近では品質向上面でも成果を残しつつあるという。AI手法であるディープラーニング(深層学習)を用いて溶接品質における正常溶接との違いを(再現誤差)を異常度として出力し、それを判定するなどの異常検知に使用する。この他、溶接機やポジショナーにセンサーを設置し、電気信号を抽出することで見える化を実現するなど人作業の稼働率モニターとしても活用しようとしている。


メール・BLOG の転送厳禁です!!  よろしくお願いします。