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PCR1日2万件、可能?

朝日新聞デジタル

2020年4月15日


 新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べる、PCR検査の拡充が、急務となっている。感染が急増する東京や大阪では追いついていないという指摘が相次ぐ。

国は1日に2万件を目標に掲げるが、検査を受けられる医療機関は限られる。検査を担う人材の不足が背景にある。

 



  埼玉県に住む女性(74)は今月初旬、38度の熱が出てのどが腫れた。2日後に帰国者・接触者相談センターに電話したがつながらず、近くの診療所を受診。紹介状をもらって翌日、都内の大学病院の発熱外来を訪れた。

だが肺のエックス線写真に異常はなく、検査の対象ではないとされ、自宅に戻った。

新型コロナではないか、検査を受けることができたら――。療養中の女性は不安な日々を過ごす。

 PCR検査は、たんや鼻の奥のぬぐい液を採取。検査試薬を加えて新型ウイルス特有の遺伝子配列を装置で増幅させて検出する。かぜのような症状が出た直後はウイルス量が少ないため、判定が難しい医師が必要と判断した場合に検査をするのが原則だ。

 感染者が少ないころは、感染者集団の追跡に重点が置かれ、濃厚接触者を中心に検査を行っていた

元々、国は陽性者は全員入院させる方針だった。だが病院のベッド数には限りがあり、現場で検査件数を増やしづらい要因となった。3月の検査数は1日平均約1700件にとどまる。他国に比べて件数が少ないと批判が出ていた。
 国内の感染者は急増し、東京都だけで2300人を超えた。PCR検査を受けた人に占める陽性者の割合も上がっている。
 国立国際医療研究センター(東京都)の忽那(くつな)賢志医師によると、同センターの帰国者・接触者外来でPCR検査を受けて陽性だった人の割合は、3月末は5%前後だったが4月上旬には約20%になった。

流行している地域はもっと検査する必要がある。検査する施設を増やし、感染者を確定しなければならない」と訴える。
 だが、検査できる医療機関が限られ、検査が集中する問題が起きている。

また、検査数が少ないため、受診した患者の感染がわからず院内感染が広がる要因になっているとの指摘がある。
 感染者が800人を超えた大阪府。りんくう総合医療センター(泉佐野市)の倭(やまと)正也感染症センター長も、「見逃されている人がいる」と検査拡充が必要だと訴えたうえで、感染が疑われる人がいても、検査するかを判断する医療機関が少ないのが、件数が増えない原因と話す。

 

 ■ 専門人材足りず

 緊急事態宣言を出す前日の6日、安倍晋三首相は、PCR検査を1日2万件実施できるように態勢を拡充する方針を示した。
 厚生労働省によると、国内でできる検査数は、10日現在、最大1日1万2千件ほど。内訳は保健所・地方衛生研究所約4900件、民間約3600件、検疫所約1800件、大学約800件など。これに対し、全体の実施数1日最大約7800件にとどまる。
 件数が増えないのは別の理由もある。「専門的な技術が必要で、検査できる人が限られる」と関東の大学病院の関係者は話す。
 医療機関で採取された検体は運ばれ、特別な感染防護策をとった所で、臨床検査技師らが試薬を入れ、ウイルスから遺伝子を取り出す。欧米ではより簡単な検査キットや機器が承認されているが、日本の衛生研究所などには古い機器が多く、手作業が多いという。
 日本臨床衛生検査技師会によると、会員は技師の約7割にあたる約6万6千人いるが、検査ができるのは1割未満という。

人材養成が急がれるが、「外出自粛の中、研修会を開くのも難しい」と同会の担当者は語る。

 

 ■ 民間委託で迅速化、ドライブスルーも 厚労省、導入に期待

 2万件の達成に向けて厚労省は民間企業や大学の参入に期待を寄せる。

車に乗ったまま検査を受ける「ドライブスルー」方式は、地方自治体の判断で実施可能とする。
 東京都港区は13日から、民間の検査機関に検査を委託し始めた。これまでは都健康安全研究センターに頼んでいたが、感染者の急増で結果が出るまで2~3日かかるようになり、待つ間に病状が悪化する人がいたという。

民間機関の活用で、おおむね検査翌日には結果が得られるという。
 東京都医師会は、PCR検査を行うPCRセンターを6カ所に設置する。

かかりつけ医が診察して、感染が疑われる人をセンターに紹介する。医師が必要と判断した場合に、速やかに検査を受けられるのが狙いだ。約2週間後に運用を始められるという。角田徹副会長(感染症担当)は「本当に検査が必要な人を医師がきちんとトリアージ(優先度を選別)する仕組みにしたい」と話す。

 新型コロナは、感染しても8割の人が軽症か無症状とされるが、症状のない人全てに検査するのは不可能だ。

政府の専門家会議のメンバーで、日本医師会の釜萢(かまやち)敏常任理事は「医師が必要と判断すれば、帰国者・接触者外来などを経由せずに検査を受けられる態勢を全国で整える必要がある」と話す。

 




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