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政府の遅いコロナ対応に「IT化」が不可欠な理由

「緊急事態宣言」が出てから混乱を極めている

植田 統 : 弁護士、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授
2020年04月11日

4月7日に対象地域に緊急事態宣言を発令した安倍晋三首相

4月7日、7都府県を対象に緊急事態宣言が政府から発令され、緊急経済対策も閣議決定された。
これで感染防止と経済対策が一気に進むかと思いきや、現状は混乱の極みである。

国は東京都が計画していた休業要請をする施設に待ったをかけた。

緊急経済対策に至っては、補正予算が国会で成立するのは4月24日の見込みであるという。

この国の政府関係者の辞書の中に「スピード」という言葉はないのだろうか。



*理美容店などへの休業要請で揉めた揚げ句…

特別措置法によれば、緊急事態宣言後は各都道府県の知事が区域内での対策を推進できるはずだった。

しかし、政府は、基本的対処方針の中に施設の使用制限の要請、指示は国と協議との文言を追加し、東京都の休業要請をする業種の範囲について介入できる道を開いた。

そして、6日に東京都が公表した案に対して、政府が休業要請の解除を求めたのが、理美容店・ホームセンター・ゴルフ練習場・質屋などであるという。

さらに、居酒屋の営業時間の短縮をめぐっても、政府の意見と東京都の意見は対立した。
筆者が疑問を感じるのは、都内の感染状況について最も詳しい情報を持っている東京都の方針に、なぜ政府が待ったをかけたのかというところである。

各都道府県によって置かれた状況が違うのだから、休業要請をする対象業種の選定は、都道府県に任せるのが筋であろう。それでこそ、スピード対応が可能となる。
8日、政府は対象地域への休業要請を2週間程度見送るように打診していたが、東京都は小池百合子都知事が10日午後の定例会見において、休業の要請を行い、独自の休業補償金協力金)を支払うことを話した。その対象施設は公表され、11日から実施される補正予算の国会成立は4月24日の見込みだが、これではいかにも遅い。
例えば、アメリカ

どの程度のスピード感で予算措置を実現させたかといえば、トランプ大統領が非常事態宣言を出したのが3月13日

その2週間後の3月27日に2兆2000億ドル(240兆円)の予算案が議会を通り、大統領署名に至っている。
一方、我が国の政府はどうか。政府が新型コロナ対策の補正予算案の検討を始めたのは、3月11日の自公会談以降である。

それまで新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正に集中していたため、この日が初動となったようであるが、それからほぼ1カ月が経過して、ようやく緊急経済対策の閣議決定、国会成立が4月24日では遅すぎるという批判は免れまい。

これでは平時の対応である。

 

*中小企業への一刻も早い支援を

雇用の場を守るためには、中小企業の資金繰りを支援することが最重要であると筆者は考えている。
政府の中小企業への資金繰り支援策は、日本政策金融公庫の無利子融資と信用保証協会の100%保証などだ。

しかし、3月以降に申請が殺到し、申し込まれた21万件のうち、融資を承諾したのは12万件にとどまっているという(4月10日付の日本経済新聞より)。

申込書の記入、確定申告書の提出、登記簿謄本の提出、面談などの数々の手続きが必要となるため、窓口が混雑し、融資を受けられるのは連休明けになることも見込まれている。
海外の支援策はどうか。

スイスでは、簡単な書類に必要事項を記入しメールで銀行に送れば原則数時間以内に振り込みが行われるという。

アメリカでは、中小企業向けに3500億ドル(38兆円)の枠で従業員らの給与を肩代わりする仕組みが作られ、3日に受け付けを始めている
各国が簡易でスピーディーな緊急対応を取っているにもかかわらず、我が国政府の対応は日本政策金融公庫信用保証協会を経由した平時の融資実行と変わらない印象を受ける
このままでは、コロナショックの影響を受けた中小企業が資金繰り破たんする恐れがある。
緊急事態宣言で指定された対象地域の複数の知事から、休業要請をする際について休業補償を行うべきだという意見が出ている。対して、政府は、売り上げの補償はできないとの回答をした。これについては筆者もまったくその通りだと思う。

売り上げの補償となれば、コスト部分まで政府がお金を払うことになり、中小企業、自営業者にとっては、濡れ手で粟となる。

新型コロナ拡大の緊急時に必要とされているのは、雇用の保証であるのだから、補償の範囲は、中小企業、自営業者に勤める従業員の雇用を守るための給与相当額の補償が妥当ではないか。
それでは、中小企業、自営業のオーナーの所得が補償されないと反論する人もいるものと思うが、彼らは自らリスクを取って事業に乗り出しているのであり、そこまで政府が面倒をみるのは行きすぎである。
こうした従業員の雇用を守るための制度として、我が国には雇用調整助成金という制度がある。

企業が従業員を企業都合で休職させる場合、その一部を国が助成するという制度で、現在は特例により、中小企業で10分の9大企業で4分の3まで助成するようになっている。
しかし、ここでもスピードの問題が立ちはだかる。政府は、ハローワークに提出する申請書への記載項目を半減させることで、これまで2カ月かかっていた支給までの期間を1カ月にしようとしている。だが、もう少し抜本的にスピードを上げる方法が求められる。

 

*コロナ危機でIT化を加速させる必要がある

金融機関の窓口、ハローワークの窓口で申請をするときに時間がかかるのは、申請書類を紙で提出し、添付書類もすべて紙で取得して添付しなければならないからである。
申請書類の提出をすべて電子メールで可としてしまえば、申請者は窓口へ行く必要がなくなる

会社ごとに法人番号を与え、税務署のデータも、法務局のデータも紐づくようにしてしまえば、金融機関もハローワークも申請書に書き込まれた法人番号からデータを取得して、すぐに審査ができる。
面談が必要なら、それもテレビ会議などで可としてしまえば、あっという間に終わるだろう。そして、電子審査で済ませれば、スピーディーな融資や助成金の支払いの実行が可能となるはずである。
これは、所得急減世帯に給付するという30万円についても同じである。

すべての国民がマイナンバーを持ち、それに住民票のデータ、前年度の所得のデータが紐づいていれば、一定の所得以下の世帯を抽出することが瞬時に可能となる。つまり、緊急時のスピード対応を可能とするためには、政府のIT化が必須ということである。
プライバシーの問題、IT弱者の問題などから反対する人も多いが、そこは国民への説明、例外措置の整備を設けることで、対応できるのではないか。コロナ危機を契機に、政府がIT化に大胆に踏み切る必要がある。


医療センターに従事する医師からのLINE  * ネット情報として複数掲載アリ

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