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オリエンタルランド、2カ月休園でも磐石なわけ

手元現預金は3000億円超、株価も高く評価

森田 宗一郎 : 東洋経済 記者
2020年04月06日

新型コロナウイルスの影響で臨時休園を2度延長し、再開は4月20日とされている(記者撮影)

4月1日夕方。普段は東京ディズニーリゾートへ訪れた家族連れやつけ耳姿の学生たちでにぎやかなはずのJR京葉線・舞浜駅は人の気配がほとんどなく、異様なまでの静けさに包まれていた。
新型コロナウイルスの影響で、2月29日から東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを臨時休園してから1カ月が経過した。両テーマパークを運営するオリエンタルランドは当初、3月16日からの再開を見込んでいた。

しかし、官邸からのイベント自粛要請が解除されず、臨時休園を2度延長。

4月3日現在、再開予定日は4月20日までずれ込んでいる。



*隣接ホテルも休業に追い込まれる

約750億円を投じて開発し、4月15日にお披露目を予定していた「美女と野獣」などの新アトラクションも、開業を5月中旬以降へ延期。隣接する商業施設「イクスピアリ」や「東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ」など直営4ホテルも休業に追い込まれている。

オリエンタルランドは、テーマパーク休園による2020年3月期の業績への影響額を明らかにしていない。ただ、2020年1〜3月期のテーマパーク事業の売上高見込みは約933億円(91日間)。休園の日数(32日間)から推測すると、約330億円の売り上げが消えてなくなった計算だ。
野村證券の山村淳子アナリストは2月20日付のレポートで、「アトラクションの待ち時間などを確認すると、2月頃から東京ディズニーシーを中心に、新型肺炎の影響がみられる」と、2月末の臨時休業の前から来園者数が弱含んでいたと指摘している。
学生の春休みシーズンと重なる3月は本来、かき入れ時だったことを踏まえると、2020年3月期の売上高は5038億円とする会社予想に届かず、4700億円程度となる可能性が高い。
売上高に下押し圧力がかかる一方、固定費負担も重石になっている。

休園で食材費などの変動費が抑制されるが、人件費や巨大なアトラクションの減価償却費などの固定費負担が重くのしかかる。
今回のコロナショックと類似する時期としては、2011年に東日本大震災が発生し、期末にかけてテーマパークを20日間休園した2011年3月期が挙げられる。

当時は休園期間の人件費や減価償却費など53億円の固定費が「災害による特別損失」として計上された。つまり、1日当たり2億6000万円程度の固定費が発生していたことになる。
2019年3月期の人件費と減価償却費の合計は当時と比べて9.3%増加しており、これを加味すると、1日当たり2億8000万円程度の固定費が発生し、損失となっているとみられる。会社が予想している2020年3月期の当期純利益762億円は、収入減の影響のほか、32日間分の休園期間の固定費90億円程度が加わり、下方修正要因となりそうだ。

 

*特筆すべきキャッシュの充実ぶり

安倍晋三首相が3月28日の会見で、「(新型コロナウイルスが)いつ急拡大してもおかしくない。長期戦を覚悟する必要がある」と発言したように、4月中にイベント自粛要請が解除される見通しは立っていない。

では、ドル箱であるテーマパークの売り上げを欠いたまま、オリエンタルランドはどこまで事業を継続できるのだろうか。

そんなオリエンタルランドの「対コロナ持久力」を見定めるうえで重要なのが、短期的な債務の支払い能力だ。

1年以内に現金化できる流動資産がどの程度確保されているかを見る流動比率(流動資産/流動負債×100)は、2019年12月末時点で302.9%。理想とされる200%を大きく上回っており、良好だ。

「富士急ハイランド」などを運営する同業の富士急行が同162.0%、よみうりランドが90.8%であることと比べても、圧倒的に盤石な手元流動性を誇っている。
オリエンタルランドの財務で特筆すべき点は、キャッシュの充実ぶりだ。

2019年12月末時点の現金及び預金残高は3291億円。月当たり売上高(約433億円)の7.5カ月分に相当する。同じく富士急行は3.4カ月分、よみうりランドは2.2カ月分にとどまる。
オリエンタルランドの事業は、テーマパークやホテル、商業施設、モノレールなどがある千葉県浦安市に集中している。同社は1995年の阪神・淡路大震災を機に、リスク発生時のファイナンス体制を強化。

現在設定しているコミットメント期間付タームローンでは、メガバンクや地銀など4行から計1500億円を上限に必要な金額を借り入れることができる。
オリエンタルランドは「これにより約半年分の運転資金(人件費、取引先への債務支払、税金)と着手済の設備投資資金の調達が可能である」(同社広報)と想定している。この借り入れと2019年12月末時点の現預金3291億円を合わせると、仮にあと1年半程度休園が続いても資金繰り上は大丈夫という計算だ。


*株価はオリエンタルランドの実力を高評価

オリエンタルランドの財務体質や営業再開時の実力値への評価が揺るがないことは、株価にも表れている。

2月中に急落したオリエンタルランドの株価は、3月12日終値で1万2070円をつけたが、3月25日には同1万4835円をつけ、中国人の団体旅行が禁止される直前だった1月24日の1万5725円に迫る勢いとなった。
SBI証券の田中俊アナリストは「近年は有利子負債が減ってきていることもあり、新型コロナウイルスの影響が長引いても財務的にはまったく問題ない。集客力やオペレーションへの評価も高く、営業が再開すればぴかぴかの長期保有銘柄に戻るイメージがある。個人・機関投資家を問わず、これまで株価が上がりすぎて買えなかった人たちに絶好の買い場という感覚が強く、下げ渋って堅調に推移している」と分析する。

東京ディズニーリゾートでは保守・修繕などの工事が続いている(記者撮影)

3月19日には期間限定イベント「ベリー・ベリー・ミニー!」のショー動画を公式YouTubeチャンネル上で公開。

再生回数は4月2日16時時点で170万回超えと、休園中にもかかわらず存在感を発揮した。

休園中のファンのつなぎ止めのため、その後も随時動画の更新をしているだけでなく、ゲート付近の保守・修繕など各種工事を実施している。
終わりの見えない中、オリエンタルランドは「休園後」に向けて着々と準備を進めている。

 





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