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安倍首相、昭恵夫人をコントロール不能なわけ


コロナ下の花見と布マスク配布で大炎上

泉 宏 : 政治ジャーナリスト
2020年04月04日

日本の最高権力者も奔放な夫人に振り回されている。写真は2019年11月にタイへ出発する安倍首相夫妻

新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言も秒読みとされる中、安倍晋三首相の場当たり的な対応と昭恵夫人の無自覚な振る舞いが炎上している。

奔放な言動で知られる昭恵氏は、東京で行動自粛が叫ばれる中、3月下旬に都内のレストランで「花見宴会」に参加したことが発覚。

安倍首相も4月1日に「布マスク1億枚配布」を突然表明し、「エイプリルフールだと思った」などと集中砲火を浴びている。



*ファーストレディとして適切な行動なのか

後半戦に入った国会は、コロナ対策最優先で「挙国一致ムード」(自民党国対)も漂い始めており、与党内では首相夫妻に対する批判・炎上は一過性に終わるとの見方が多い。ただ、国民の不信が拡大すると、今後の安倍首相の政権運営への足かせとなることは避けられそうもない。

昭恵氏のお花見騒ぎは、親しい有名芸能人ら10人以上の仲間との集合写真が3月26日にインターネット上で公開されたのが発端。

2020年度予算の締めくくり質疑となった3月27日の参院予算委員会では、立憲民主党の杉尾秀哉氏が「昭恵夫人がグループで花見をしている写真が出回っている」と質した。これに対し、安倍首相は「都内のプライベートなスペース、レストランで会合を持った際に記念撮影を行ったものだ」と昭恵氏の会食参加は認めたうえで、「都が自粛を求めている公園での花見というような宴会という事実はない」と不快そうな表情で反論した。
収まらない杉尾氏はさらに「レストランなら問題ないのか。ファーストレディの行動として適切なのか」と追及したが、安倍首相は「レストランに行ってはいけないのか。(シチュエーションなどを踏まえ)正確に発言してほしい」などと口をとがらせて言い返し、委員会室も騒然となった。ただ、追及劇自体は時間切れの尻切れトンボで終わった。
3月28日の記者会見で、安倍首相は緊急事態宣言を出す「ぎりぎりの事態」と危機感を示しつつ、国民の行動自粛を訴えた。

しかし、それを無視したかのような昭恵夫人の行動に、「夫の足を引っ張る夫人は、首相のアキレス腱だ」(自民党の閣僚経験者)などと非難する声が相次いだ。
国会での口論シーンはテレビ中継されていなかったものの、ネット上に動画が公開されると一気に炎上。

ツイッターでは「首相夫人がレストランで13人の『桜』宴会は駄目」「史上最悪な“ワーストレディ”では」との書き込みが相次いだ。


*5000万世帯にマスク配布を表明

4月1日に安倍首相も出席した参院決算委員会や、2日、3日の衆参本会議質疑はコロナを優先させて野党側の追及もなく、「騒ぎは一過性で終わり」(自民国対)との声も出た。
しかも、安倍首相を追及した杉尾氏がフェイスブック上で、選挙区の長野県千曲市の「あんずの里」について「今がちょうど見頃です」「これまで見た中では最高でした」などと投稿していたことを夕刊紙が報じ、騒ぎの鎮静化につながった。
そんな中、4月1日に開かれた政府のコロナウイルス対策本部で、「全国5000万余りの全世帯を対象に、1つの住所につき2枚ずつ、布マスクを配布する」との考えを表明した。

約200億円とされる経費は2020年度の補正予算案に盛り込む方針だが、これも直ちに大炎上した。
ネット上では、アベノミクスを揶揄した「アベノマスク」なるハッシュタグがトレンド1位となり、「使う税金をもっと重要な対策に回せ!」「国民をバカにするのもいい加減にしろ!」などという書き込みがあふれた。
安倍首相は1日以降、自ら布マスクを着用しており、「布マスクは洗えば再利用できる」として自身の決断に自信をにじませた。
布マスク配布案首相側近の発案とされ、「国民の皆様の不安解消に少しでも資するため」(安倍首相)という狙いだったが、世界保健機関(WHO)は「(布マスクは)いかなる状況でもお勧めできない」との見解を示している。
野党は「思いつきも甚だしい」(国民民主党幹部)などと噛みつき、自民党内からも「ポピュリズムの権化のような政策で、医療の整備に充てるほうがよっぽど有益だ」(石破派幹部)との指摘が相次いでいる。 

 

*自殺した財務省職員夫人が訴訟を提起

2月以来、マスク不足対策の司令塔を務める菅義偉官房長官は「店頭にマスクがないという声が多い」と強調。4月中旬の週以降に発送するとして「このシステムは北海道で実施済みで、その経験を生かして速やかに配布できる」とスピード感を訴えたが、口調や表情は精彩を欠いていた。
昭恵氏絡みでは、森友学園をめぐる公文書改ざん問題で自殺した財務省近畿財務局職員の手記公表も改めて政権の火種となっている。

同職員夫人が「改ざんに至る真相の解明と損害賠償」を求める訴訟を起こし、野党側も「第三者による再調査」を繰り返し強く要求している。
財務省の調査報告書では、当時の佐川宣寿理財局長(国税庁長官を経て退職)が改ざんを主導したとされているが、改ざんに至った動機などは解明されていない。

野党側は「首相の『私や妻が関わっていたら、総理も議員も辞める』との答弁が改ざんのきっかけなのは明らか」として安倍首相の責任を追及している。
しかし、安倍首相は「答弁が改ざんのターニングポイントとは手記に書いていない」と繰り返し、昭恵夫人の関与についても否定する姿勢を堅持している。
そもそも、安倍首相と昭恵夫人については「歴代首相と夫人の関係とはまったく異なる夫婦」(首相経験者)との評がついて回る。その原因は昭恵氏のファーストレディとして型破りな立ち居振る舞いだ。
第1次安倍政権発足時からネットなどで「アッキー」の愛称で呼ばれ、「神出鬼没ぶりも際立っていた」(官邸筋)。
居酒屋経営し、深夜まで友人と飲み歩く昭恵氏の自由奔放な行動に、政界では眉をひそめる向きが多かったが、「反原発」「反TPP」などを公然と口にする家庭内野党ぶりが、好感度にもつながっていた。安倍首相公式の席家庭の幸福は妻への降伏」と駄洒落を飛ばし、昭恵氏の言動を黙認してきた。

 

*保守系野党加わり「大連立政権」の噂も

今回の花見騒ぎでも、「首相はその延長線上で妻を擁護するしかなかった」(自民幹部)とみられている。ただ、度重なる昭恵スキャンダルに苛立つ与党内からは「今回ばかりは『申し訳ない。妻には無思慮な行動を叱っておいた』と答弁すればそれで済んだのに」(自民長老)との声も出る。
そうした中で野党側は、安倍首相の恩師でもある小泉純一郎元首相が最近の週刊誌のインタビューで、「(森友学園問題で)首相は責任を取って辞めざるを得ない」と発言したことを取り上げた。これに対して安倍首相は「新型コロナウイルスの対策を全力でやっている。(職を)放り投げることは毛頭考えていない」と辞任を否定した。
たしかに、「戦争に並ぶ国難の中で、スキャンダルなどで政権が揺れることは国民も望まない」(首相経験者)との指摘は多い。

政界の一部では自公政権に維新、国民など保守系野党が加わっての「大連立政権」なども噂されている。このため、首相サイドは「しっかりコロナに対応していれば、ネットでの炎上などは一過性に終わる」(政府筋)との強気の声が少なくない。
ただ、多くの世論調査では内閣不支持の理由が「首相の人柄が信用できない」トップであることも事実だ。

安倍首相は東京五輪招致の際、福島原発について「アンダーコントロール」と世界に胸を張った。しかし、身内中の身内でもある昭恵氏については「現状をみる限りコントロール不能」(自民長老)と言われても仕方がない。
小泉元首相の警告も含め、今回の炎上騒ぎは「時間とともにじわじわとボディブローとして効いてくる」(閣僚経験者)ことも否定できない。


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コメント: 1
  • #1

    島本上海 (木曜日, 23 4月 2020 12:09)

    安倍昭恵の行動はファーストレデーどころか一般人 国民としても首を傾げる行動である。頭がおかしいかもし自分がコロナウイルス陽性になれば総理はどうするのだろうか そして総理も隔離されるとどうなってしまうだろうか 世界から大笑い[
    日本のファーストレディー自由奔放コロナウイルスにかかり総理も後悔先に立たず]と見出しになり安倍総理は後悔しても本当に悔やむだけだ。我々国民もこれが日本人レベルの考えだと思われたくない。安倍総理よ昭恵を鎖に繋げて少し家で大人しくさせてください。国民はみな我慢しているのです。