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謎が多い最近の「Windows Update」

2020年03月18日 更新
[山市良,テクニカルライター]

Windows 10のWindows Updateは、ユーザーがコントロールできる部分が以前に比べて少なくなり、Homeエディションに至っては、半ば強制的と感じているユーザーも多いと思います。Microsoftはそのようなフィードバックに耳を傾けながら、Windows Updateを改良してきました。中には根本的な改良ではなく、突貫工事に見えるものも……。Windows Updateの謎は増えるばかりです。


*「更新プログラムのチェック」はクリックしても安心になった?

 「Windows 10」の「設定」アプリにある「更新とセキュリティ」→「Windows Update」には、「更新プログラムのチェック」というボタンがあります。
 以前のWindows 10では、このボタンを不用意にクリックしてしまい、意図せず「機能更新プログラム」(Windows 10の新バージョン/ビルド)や急いでインストールする必要がないオプションの更新プログラムのインストールが始まってしまい、アップグレードや再起動に長い時間を取られたり、更新プログラムのバグを踏んでしまったりすることがありました。

そのため、「更新プログラムのチェック」をクリックする人は、いつしか「Advanced User(上級者)」や「Seeker(探究者、探し求める人)」と呼ばれるようになりました。

画面1 Windows 10 バージョン1903からは「更新プログラムのチェック」をクリックしても、機能更新プログラムやオプションの累積更新プログラムがすぐにインストールされることはなくなった

 Windows 10 バージョン1903からは「更新プログラムのチェック」ボタンのクリックにより、オプションの累積更新プログラムやリリース後間もない機能更新プログラム(バージョン1903の場合はバージョン1909の機能更新プログラム)がすぐにインストールされることはなくなりました。
 新しい機能更新プログラムのリリース後しばらくして、また、オプションの累積更新プログラムが利用可能な場合は、「オプションの更新プログラムがあります」と案内され、「今すぐダウンロードしてインストールする」をクリックしない限りインストールされることはなくなりました(画面1)。

機能更新プログラムについては、Windows 10 バージョン1803とバージョン1809についても、同様の機能が提供されました(その後、これらのバージョンに対してはバージョン1903以降の機能更新プログラムの自動配布が開始されています)。


*突如出現した「ダウンロード」ボタンの謎

 Microsoftは、毎月第2火曜日日本は時差の関係でその翌日の曜日)に、Windowsと.NET Frameworkの新たなセキュリティ更新を含む「累積更新プログラム」をリリースします。毎月第2火曜日のこの日を「Patch Tuesday」、このリリースを「Bリリース」と呼ぶことがあります。
 Microsoftは、Bリリースの翌週のCリリース」または、さらに翌週の「Dリリースとして、オプションの累積更新プログラムをリリースします。C/Dリリースは新たなセキュリティ更新を含まず、翌月のBリリースで行われるセキュリティ以外の修正を先行的にプレビューできるように提供されるものです。

この他、緊急の更新プログラムが自動配布の対象として定例外でリリースされる場合があります。

例えば、緊急性の高いセキュリティ問題への対応や、Bリリースの不具合の修正などです。
 Windows 10では、BリリースとC/Dリリースは「リリースされた日」で識別されます。

更新プログラムの名前でオプションかどうかを識別できません。

一方、「Windows 7」や「Windows 8.1」では、Bリリースは「セキュリティマンスリー品質ロールアップ(マンスリーロールアップ)」、C/Dリリースは「マンスリーロールアップのプレビュー」のように識別することができます。
 BリリースとC/Dリリースによるプレビューは、Windows 10 バージョン1703で導入されたスケジュールであり、Windows 10 バージョン1703以降はBリリースとC/Dリリースを識別します。
 具体的には、自動更新ではBリリースのみが検出、インストールされますが、C/Dリリースは自動更新の対象外です。

そして、C/Dリリースが利用可能になっている時期に「更新プログラムのチェック」をクリックした場合にのみ、C/Dリリースの更新プログラムをインストールすることができます。
 「Windows Update for Business(WUfB)」のポリシーが有効になっている場合、または「設定」アプリの「詳細オプション」にある「更新プログラムをいつインストールするかを選択する」で、機能更新プログラムおよび品質更新プログラムの延期日数を「1日以上」に設定している場合は、「更新プログラムのチェック」をクリックしても、C/Dリリースの更新プログラムは検出されません。
 ここまではWindows 10のWindows Updateについてよく知っている人にとっては常識かもしれません。

しかし、Windows 10 バージョン1809から少し変わりました。

 1月のBリリースを更新済みのWindows 10 バージョン1903または Windows 10 バージョン1803までの.NET Framework 3.5および4.7.2の更新は、「Windows 10の累積更新プログラム」に同梱されていましたが、Windows 10 バージョン1809からは「.NET Frameworkの累積的な更新プログラム」として分離されました。

そして、C/Dリリースとして提供された.NET Frameworkの更新プログラムが、度々意図しないタイミングでインストールが始まってしまうことがあったのです。
 この問題に対する改良は、筆者が知る限り、特にアナウンスされることもなくWindows 10 バージョン1903に実装されました。しかしそれは、取って付けたような、場当たり的な対応に思えてなりません。

画面2 2020年1月末に「更新プログラムのチェック」をクリックすると、Dリリースの.NET Frameworkの累積的な更新プログラムのインストールが始まってしまった

画面3 自動更新の場合、DリリースのWindows 10の累積更新プログラムはオプションの更新プログラムとして扱われ、Dリリースの.NET Frameworkの累積的な更新プログラムには「ダウンロード」ボタンが表示された

 実は、2020年1月15日のWindows UpdateでWindows 10 バージョン1909のPCをビルド18363.592に更新後、1月のDリリース(日本時間1月29日)のWindows 10の累積更新プログラム(ビルド18363.628)が利用可能になった画面1の状態にするために、オプションの累積更新プログラムを1つインストールする必要がありました。そのオプションの更新プログラムとは、同じ日にDリリースとして提供された.NET Frameworkの累積的な更新プログラムです。1909で、1月29日から2月11日までの間に「更新プログラムのチェック」をクリックすると、Dリリースである.NET Frameworkの累積的な更新プログラムが検出され、そのままダウンロードとインストールが始まります(画面2)。

 そして、更新を完了するために再起動が要求されました(要求されない場合もありました)。DリリースのWindows 10の累積更新プログラムの案内は、再起動後のWindows Updateの画面でようやく対面できました。

 自動更新に任せている場合は、Dリリースである.NET Frameworkの累積的な更新プログラムがダウンロード待ちの状態で案内され、「ダウンロード」ボタンが表示されました(画面3)。

 この謎の「ダウンロード」ボタンは、Windows 10 バージョン1903になって突如現れました。このPCのWindows Updateは既定の構成のまま、つまり自動更新で動いています。Windows Updateの「自動更新を構成する」ポリシーを有効化して、「2. ダウンロードと自動インストールを通知」に設定しているわけではありません。


 あまり出会うことがないのは、Windowsとは異なり、C/Dリリースの.NET Frameworkの累積的な更新プログラムが毎月リリースされているわけではないからだと思います。例えば、Windows 10 バージョン1903向けには2019年に4回(6月-D、8月-D、9月-D、10月-D)しかありませんでした(10月からはバージョン1909と共通)。

        Windows 10 Version 1903用.NET Frameworkの累積的な更新プログラムの履歴(Microsoft サポート)
 「ダウンロード」ボタンをクリックすれば、.NET Frameworkの累積的な更新プログラムだけをインストールできます。

では、オプションの更新プログラムの方の「今すぐダウンロードしてインストールする」をクリックするとどうなると思いますか?
 答えは、.NET FrameworkとWindows 10両方の更新プログラムのインストールが始まります(画面4)。

画面4 「ダウンロード」をクリックすると.NET Frameworkの更新だけがインストールされるが、「今すぐダウンロードしてインストールする」をクリックすると.NET FrameworkとWindows 10の両方の更新がインストールされる

つまり、Windows UpdateでC/DリリースのWindows 10の累積更新プログラムをインストールするには、同じ日にリリースされた.NET Frameworkの累積的な更新プログラムのインストールをスキップすることはできないということです。
 WUfBクライアントの場合、自動更新ではDリリースのどちらの更新プログラムも検出されることはありませんが、「更新プログラムのチェック」をクリックすると、Dリリースの.NET Frameworkの累積的な更新プログラムのインストールが始まりました。Windows 10のオプションの累積更新プログラムは、以前と同様、WUfBクライアントでは「更新プログラムのチェック」をクリックしても検出されません。
 ちなみに、以前は問題があったWindows 10 バージョン1809ではどうかというと、「更新プログラムのチェック」をクリックしない限り、今回のDリリースの.NET Frameworkの累積的な更新プログラムが検出され、インストールされることはありませんでした。
 筆者にとっては、Windows 10 バージョン1903で行われた改良よりも、Windows 10 バージョン1809の現在の挙動が分かりやすいような気がします。良かれと思って追加した機能が、Windows Updateの謎をさらに深めてしまっているような気がします。
 1ついえることがあるとすれば、面倒に巻き込まれたくなければ、「更新プログラムのチェック」はクリックしないこと、「ダウンロード」や「今すぐダウンロードしてインストールする」をクリックしないことです。そして、Bリリースの水曜日から翌週の月曜日(日本時間)までなら、余計なオプションの更新プログラムを取り込むことはないでしょう。


*.NET FrameworkとWindowsでオプションの扱いに違いがある理由

 C/DリリースのWindows 10の累積更新プログラムと.NET Frameworkの累積的な更新プログラムが同じように扱われれば、非常にすっきりすると思うのですが、なぜそうなっていないのでしょうか。その理由は、恐らく、Windows 10 バージョン1903の新機能である「オプションの更新プログラムがあります」が、1つの更新プログラムにしか対応できないからだと思います。

画面5 次の機能更新プログラムがオプションとして利用可能な場合、現在のバージョン向けのC/Dリリースの累積更新プログラムをWindows Updateで検出させる方法がない

 次の画面5は、オプションの更新プログラムとして、Windows 10 バージョン1909の機能更新プログラムを検出したWindows 10 バージョン1903のものです。
 2020年1月のBリリースまで更新されたものを、その後、Dリリースの.NET Frameworkの累積的な更新プログラムもインストールしました。

しかし、DリリースのWindows 10 バージョン1903の累積更新プログラムは案内されません。

どうしてもDリリースのWindows 10 バージョン1903の累積更新プログラムをインストールしたい場合は、Microsoft Updateカタログからダウンロードして、手動でインストールするしかないのです。


*C/Dリリースの.NET Frameworkがオプションから必要な更新に格上げ?

画面6 Windows 10の2020年3月11日(Bリリース)のWindows Updateでは、Windows 10のBリリースだけでなく、オプションだった前月C/Dリリースの.NET Frameworkの累積更新プログラムのインストールも始まる(別々にインストールされ、2度再起動が要求されることも)

 2020年3月のBリリースでは、Windows 10の累積更新プログラムと同時に、前月のC/Dリリースの.NET Frameworkの累積的な更新プログラムが検出されてインストールされたことに違和感を覚えた人もいるでしょう(画面6)。
 同じ日にBリリースのWindows 10の累積更新プログラムとC/Dリリースの.NET Frameworkの累積的な更新プログラムが別々にインストールされ、再起動が2度要求された人もいるかもしれません。
 新たなセキュリティ更新がない場合、Bリリースの.NET Frameworkの累積的な更新プログラムはリリースされないことはよくあります。

その場合、C/Dリリースがオプションから自動配布対象に格上げされたような動きをします。


 Windows 8.1以前であれば、オプションの更新プログラムから「.NET Frameworkの品質ロールアップのプレビュー」明示的に選択しない限りインストールされることはありませんが、Windows 10のWindows Updateでは特定の更新プログラムのインストールを回避することはできません。
 良かれと思って追加した機能は、いろいろと考慮が足りていないようです。

また、「ダウンロード」ボタンは、毎月のBリリースのときにも表示されることがあったり、定例外のセキュリティ更新(例えば、Windows 10 バージョン1903/1909に2020年3月13日に配布されたKB4551762)で表示されたりするので、まだ何か謎を隠しているようです。




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