おがわの音♪ 第964版の配信★


新型コロナで京都・訪日客消滅――“人よりサルが多い”非常事態に迫る

2020年03月09日

[中井治郎,ITmedia]


新型コロナの影響で訪日客が消えた京都。これは「今こそおこしやす」と危機を逆手にとった『スイてます嵐山』キャンペーン(筆者提供)

新型コロナの影響で京都から訪日客が消えた。

過剰気味だった彼らの突然の消失は古都の経済に甚大な衝撃。

京都在住の社会学者が迫真のルポ。

「お客さん? 減ってる減ってる」
 本音が見えにくいといわれる京都人だが、本当に言いたいことがある時は大事なことを2度繰り返す。
 「これでも減ってるんですか?」「だって歩けますでしょ?」
 


*35年ぶりの「歩きやすい京都」

 割烹着にマスク姿の「錦のおばちゃん」は、そう言いながらちりめん山椒を包んでくれた。

京都の台所として有名な錦市場(京都市中京区)。

閑散とした…というほどでもなく、そぞろ歩く人の姿はあり、賑わっているようにも見える。しかし、確かに歩ける。
 近年はインスタ映えのする商品を並べる商店も増え、普段ならば狭い通りを観光客が埋めつくし、ゆっくり買い物をするどころか「歩くのも大変」な錦市場。それが、いまは「すいすい歩ける」のである。
 今や世界を襲う新型コロナウイルスの感染拡大の影響は観光都市・京都においても深刻である。

オーバーツーリズムが問題となるほどの混雑に悩まされてきた人気の観光スポットや世界遺産をはじめとした神社仏閣にも人はまばら。もちろん、慢性的な行列と車内混雑で「並んでも乗れない。乗ったら降りられない」と有名だった市バスや市営地下鉄にも影響は出ている。京都市交通局の発表などでは、2月の、市バス・市営地下鉄の1日あたりの平均乗客数はおよそ5万5千人の減少ということである。
 とにかく京都は、いまどこも空いているのだ。

「こんなに歩きやすい京都ははじめて」。多くの人ははじめて目にする京都の異様な光景に驚く。

しかし、昔を知っている人は口をそろえて、こう言う。
 「こんなん、古都税のとき以来やわ」
 古都税とは、かつて京都市の創設した地方税・古都保存協力税のことである。

観光客の拝観に対して課税し、その徴収を寺社に担わせるという、この古都税を巡って京都市と京都の寺社が激しく対立。

「古都税騒動」を巻き起こした。そして京都を代表する寺社の数々が抗議のために、1985年から86年にかけて3度にわたって拝観者に対して門戸を閉ざしたのである。
 海外では「テンプル・ストライキ」とも報道されたというこの運動により、修学旅行生をはじめ、京都を訪れる観光客数が激減。人々は観光客の姿が消えた京都の街を目の当たりにすることになった。
 それから35年。再び京都の街から観光客が消えた。

しかし、令和の京都から観光客の姿を奪ったのは古都に暮らす人々同士の争いではなく、海の向こうからやってきた「疫病」だった。いま、日本を代表する観光都市・京都で何が起こっているのだろうか?

 

*「人間よりサルの方が多いとか、久しぶり」

 新型コロナウイルスの感染拡大を理由に中国が海外への団体旅行とパック旅行の販売を中止したのは1月27日。

しかし、2月も中旬に入る頃には中国以外の国々においても渡航自粛や制限、そして「訪日忌避」の動きが広がる。

京都のホテルや旅館においても、中国に限らず各国の予約客からのキャンセルが相次ぐことになった。

そして、現れたのが数十年ぶりに人のいない京都である。
 しかし、このことが逆に「京都が空いている!」「今こそ良い写真が撮れる」「これこそ本来の京都の姿」とSNSなどで話題となった。さらにはこの苦境を逆手にとり嵐山の5つの商店街が合同で「スイてます嵐山」キャンペーンを展開。

「人間よりサルの方が多いとか、久しぶり」などのキャッチフレーズで、外国人観光客の急増に押されて近年は減少傾向にあった日本人観光客の呼び戻しを図った。

いつもなら観光客でごった返している嵐山・渡月橋も歩く人はまばら(筆者提供)

「今回ほど、ああ京都でよかった、と思ったことはないですね」
 普段であれば数カ月も前から外国人客の予約で部屋が埋まっていくという京都の人気旅館のマネジャーはそう語る。

今では、外国人客がキャンセルした分を当日や宿泊日直前に「ふらっと予約してくる」日本人客が埋めてくれているという状況だという。
 近年の日本人観光客が「京都ばなれ」の傾向にあったといっても、その理由は日本人が京都に関心をなくしたからというわけではなかった。

機会さえあれば」と様子をうかがっていた潜在的な京都ファンが、「空いている京都」のうわさを聞きつけて京都へ帰ってきているのである。いつもなら予約の取れない人気の宿に泊まり、いつもなら撮れない静寂の景色を撮る。

そんな彼らが京都観光の苦境にあってぎりぎりの生命線となっているのだ。
 近年のインバウンドブームの中ですっかり外国人観光客向けに塗り替えられたと苦言を呈されることも多い京都だが、古都への憧れはまだまだ日本人の中にも生きていたということだろう。京都ブランドの底力である。


*購買力低めの若年層が中心……

 しかし、外国人観光客の多くを失ったダメージは大きいのも事実だ。

例えば京都の宿であるなら、桜や紅葉の時期などハイシーズンには宿泊料金が上がるのが通例である。

しかし、このままの状況が桜の季節まで続くのであれば、満室といわずとも日本人客で空室がそれなりに埋まったとしても、例年ほどには高い価格設定にできない。「やはり大幅な減収は免れないだろう」と、先述の旅館マネジャーは話す。
 さらに「日本人観光客が来てくれるので何とか助かりましたね」と水を向けた僕に対して、ある「錦のおばちゃん」が教えてくれた。
 でもねえ、若い人ばっかりでしょう?
 確かに、通りを歩いている人が若い。錦市場を歩いている人々の様子をよく見てみると、外国人観光客が減り日本人観光客の割合が増えたというだけではない。

いつもなら観光客でごった返している嵐山・渡月橋も歩く人はまばら(筆者提供)

日本人観光客のなかでも比較的若い人々が多く、中高年、とくに高齢者の日本人観光客の姿がいつもに比べて少ないのだ。

 今回の新型コロナウイルスの感染においては、特に高齢者に症状が重篤化するリスクが高いことが知られている。

さらに「不要不急の外出は控えて」と政府から要請されるような今の状況下では、観光地から高齢者の姿が消えるのも無理はない。 そして、おばちゃんは「若い人はお金使ってくれへんからねえ…」と付け加えた。

日本人客が京都に帰ってきているといっても、「爆買い」で知られた中国人客ほどにお金を使うことはない。
 例えば京都市が2019年7月に発表した観光総合調査によると、京都市を訪れる外国人客1人当たりの観光消費額は平均4万6294円だった。それに対して日本人客平均2万931円。実に倍以上の開きがあるのだ。

そして日本人客のなかでも「若い人」は輪をかけてお金を使わないのだという。

確かに昨今の日本の若者の苦しい金銭事情を思うと、さもありなん、である。
 たとえ同じように観光客がいたとしても、「誰が来ているのか」によって「どれだけお金を落とすか」には大きな差がある。閑散とした他の観光スポットよりはなんとか賑わいを保っているように見える錦市場も、実際には目に見える以上のダメージがあるようだ。


*「観光は水もの」という真実

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大と比較されることの多いSARS流行時の2003年。

中国のGDP世界シェアは約4%であり、その影響はまだ限定的であった。
 しかし、今やそのシェアは世界2位の約16%まで拡大し、03年には約44万8000人にすぎなかった中国人訪日客は19年には約959万4000人と、実に20倍以上となっている。

だからこそ、その中国から始まった今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、SARS流行とは比べものにならないほど大きな影響を世界に、そして日本社会に与えることが確実視されているのである。
 すっかり変わってしまった錦の様子を眺めながら鮎の塩焼きを炙(あぶ)ってくれたおばちゃんが、「中国っちゅうのは、ほんま大きい国やねんなあ」とため息をついていたのが印象的だった。
 今回の危機は、多くの人にとって日中関係や国際社会のあり様、そして観光産業のあり様がそれまでとは変わってしまったことを体感するきっかけとなったのではないだろうか。
 観光業はその不安定さや「ままならなさ」から、「水もの」といわれることも多い。

観光こそ、その時々の社会の風向きにもっとも敏感に、そして根こそぎに左右される営みなのである。

日本で最も息の長い観光都市であり、35年前の出来事のように、何度も「街から観光客が消える」という事態を経験してきた京都ほどそのことを痛感している街もないだろう。

 

*中国人ら訪日客は戻らないのか?

 とはいえ、今回の危機が終息する頃にはもう中国人をはじめ外国人客は日本や京都に興味を失ってしまっているのではないだろうか。「今は仕事が無さすぎて週3勤務ですよ」と言う、旅行会社に勤める中国人の友人に話を聞いてみた。
 「いや、たぶん逆ですね。今回、日本に来れなかった人たちも含めて、いま中国にいる人たちの『日本に行きたい!』という気持ちを逆にすごく感じています。ずっと家にいるので、もうみんな我慢できないくらい」。
 「今回のことが終わったら、めっちゃ来ますよ」そう言って彼女は笑った。
 京都の夏の風物詩、祇園祭。千年以上の歴史を持つ祭事であるが、これはそもそも疫病退散を祈願するものであった。

祇園祭の頃には、現代の「疫病」がもたらした危機は終息しているだろうか。

いずれにせよ、「いけず」も言えなくなった京都なんて、どうにもつまらない。
 「コロナ?ああ、そうどしたか。なんや、道が歩きやすいなあ思てましたわ」
 そんな強がりが聞こえてくる「いつもの京都」が早く戻ってくることを願うばかりである。


なぜWHOはパンデミック宣言しない?マスク不要まで言い出した裏にある歪んた事情

 

2020年3月2日
今市太郎

WHOはようやく新型肺炎の危険性評価を「非常に高い」という最高水準に引き上げました。それでも、一貫して「パンデミックの宣言ではない」と強調します。

今市太郎:  外資系コンサルティングファーム、外資系生命保険会社を経て独立ビジネスコンサルタントとしてビジネスプロセスコンサルティング、クラウドコンピューティングのリプレイスメントや海外のファンドのM&A投資コンサルティングなどに従事。

*パンデミック宣言を拒むWHO

世界保健機関・WHOは2月28日、新型コロナウイルスによる肺炎の危険性評価をようやく「非常に高い」という最高水準に引き上げることを発表しました。すでに感染者が中国以外で世界全体に波及していることを重視して、こうした発表を行ったわけです。

それでも、この組織は一貫して「パンデミックの宣言ではない」ことを何度となく強調しています。
中国における発症が大幅に拡大し、武漢が危機的な状況に陥った時も、WHOは常に中国政府の対応を評価するといった妙な忖度の働く発言を繰り返し、なんとも如何わしい雰囲気を漂わせていました。

彼らが頑なにパンデミック宣言を拒む理由は、実はまったく別のところに存在するようです。

 

*世界銀行が発行した「CATボンド」に関連した動きという見方

米国の金融暴露サイトである『Zero Hedge』が2月後半に、極めて興味深い内容を掲載して注目を集めています。
それによると、各国の中央政府または同政府から債務保証を受けた機関に対し融資を行う国際機関である「世界銀行」が、2017年に緊急の疫病の流行に対する資金調達・通称PEFPandemic Emergency Financing Facility)のために、2017年に日本とドイツからの拠出金で保険料をまかなうかたちでおよそ4.25億ドル規模の「CATボンド(いわゆるカタストロフ債)」を発行しています。

今年の7月に、この債券の満期が到来することになっているそうです。

しかし、パンデミックの大惨事が起こらなければ購入投資家は莫大な利益を獲得することができることから、(投資家からのなんらかの圧力があるのか、金融当局からの強い要請があるのかはまったくわかりませんが、)今パンデミックを宣言してしまうとこの債券はデフォルトに陥ることになり、当該債券を持つ投資家が大損害を被るだけではなく、それが引き金になってデリバティブ市場に多大な影響が及ぶことをあえて食い止めているのではないか?という見方も広がりつつあります。

 

*WHOが「CATボンド」のデフォルトを食い止めている?

実はこの債券には、2つのトランチ(つまり条件区分)が設定されています。
クラスAは、特定国で死者2,500人以上に達した場合など細かな条件設定をクリアしたときをカタストロフィ状態と定義し、金6.9%で2.25億ドルが発行されています。

またクラスBは、9,500万ドルの発行額で金利は11.5%に設定されているものの死亡者数はさらに低く設定されていることから、WHOがパンデミック宣言すればすぐにデフォルトになることが予想されます。
なんだ、こんなところまで債券市場の複雑な事情がまかり通っているのか…と、驚かざるをえません。
リーマン・ショック時には種類は違うものの、このCATボンドでいえば「CDSオプション」の空売りが出てリーマンブラザーズが破綻しているだけに、色々な見えざる力がWHOに働いていると考えるのは決して間違いではなさそうです。

 

*7月までパンデミック宣言はしない?

この調子でいけば、7月の当該債券の満期がクリアされるまでは、恐らくWHOはパンデミックを宣言しないものと思われます。

しかし、実態はもうパンデミックそのものになる可能性が高くなっています。
こうしたきわめてバイアスのかかった大人の事情から東京オリンピックが強硬開催された場合、どれだけの人的被害が及ぶかを考えますと、金融市場と両天秤にかけて判断するようなものではないと思います。
しかし、リアルな金融世界はそんなに甘いものではなさそうです。
この手の話は文章を書いている私自身がもっともめげるものですが、WHOの裏でこんなことが回っているということだけは、理解しておいていただきたいところです。



メール・BLOG の転送厳禁です!!  よろしくお願いします。