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日本はこのまま「コロナ不況」に突入するのか

増税、台風に続く3つ目の経済停滞要因

The New York Times
2020年02月19日


中国でのコロナウイルス拡大は、日本経済にどれほどの影響を与えるのか(写真:ロイター/Kim Kyung-Hoon)

壊滅的な台風と増税により、日本経済はすでに苦境に立たされていた。

が、ここへきて、隣国・中国でビジネスを事実上停止させているコロナウイルスが、日本を本格的な景気後退に陥れるおそれが出てきた。

内閣府は17日、12月までの3カ月間で経済が年率6.3%縮小し、2014年半ば以来最悪の水準であると発表した。

日本の輸出に対する中国の数カ月にわたる需要不振に影響された一方、ウイルスの影響は含まれていない。


*中国に次ぐコロナウイルス感染者数

日本政府は、台風19号の影響が緩和され、消費税が増税されれば、年始には国の経済が成長軌道に戻るだろうと楽観していた。

しかしその後、コロナウイルスが中国で致命的なほどに感染拡大を始め、中国人の「動き」が止まったことにより、日本の輸出はさらに危うくなってきている。
2020年の1〜3月期に、アメリカと中国に次ぐ世界第3位の日本経済が再び縮小した場合、2015年にあった短期間の低迷以来、日本は公式に景気後退に入る。

景気後退とは、連続した2四半期でGDPの成長率に縮小が見られた場合と定義されている。
ウイルス流行がどのくらい続くかは明らかでない。

が、世界経済全体が長期化による打撃の影響を受ける可能性があり、一部の経済学者は今年の経済低迷をすでに予測している。

ウイルスの連鎖反応は、とくに日本に大きな打撃を与えている。中国は最大の貿易相手国であり、大量の観光客が買い物のために来日するからだ。
日本国内でのコロナウイルス拡散についても、先が見えていない。

日本は、中国以外では最も多くの症例が確認されており、横浜で検疫を受けたクルーズ船の症例を入れて500人以上にのぼる。

日本でウイルスによる最初の死亡者も出ている。とはいえ、さらなる感染を食い止めるため中国人団体客の渡航を禁止したことは、日本にとってより差し迫った経済的脅威である。

この影響は、通常東京で最もにぎやかな観光地の1つ、浅草にあるスイーツ店でもすでに見られる。
旧正月は中国から日本への観光最盛期だが、シュン・ナトリ氏の店がある辺りの細い路地は、何週間も異常に静かなままだ。

赤い巨大提灯と自撮りスポットで観光客に有名な浅草寺も、閑散としている。
ナトリ氏によると、ここまでひどい状態になったのは、地震と津波が引き起こした原発事故におそれをなした観光客が何カ月もの間日本から遠ざかった2011年3月以来である。「また忙しくなれば最高なんだが」と同氏は語る。

 

*3月までに40万人が旅行をキャンセル

だが、それはすぐには実現しそうもない。日本旅行業協会のデータによると、3月までに少なくとも中国だけで40万人に上るキャンセルが出ると予想されている。

日本の航空会社は需要が急減したためフライトを一時欠航している。
日本政府は、自国の脆弱な経済に対するウイルス流行の影響について懸念を表明し始めた。

2019年10〜12月期では、海外における日本の商品やサービスの売り上げが減少し続けたにもかかわらず、悲観的な予測に反して何とか緩やかな成長を見せた。
観光産業地域の中小企業への大きな影響を感じ始めている」と、安倍晋三首相は最近発言している。
政府は2月13日、ウィルス流行のため悪戦苦闘している企業支援に日本政策金融公庫に5000億円の緊急貸し付け・保証枠を設ける対策を発表した。これは、昨年12月に発表した13兆円規模の経済対策に続くもので、日本は増税と台風の後、景気後退を食い止めようとしている。

政府関係者によれば、昨年10月に行われた増税は、人口の急速な高齢化における公共サービス拡大支援と、先進国の中で最高額となる国債返済のために必要な動きである。

しかし増税は消費減退とセットである。増税が実施された直後、台風19号が日本を襲い、莫大な被害をもたらし、経済活動をさらに停滞させた。それでも昨年12月の工業生産高はわずかに増加した。しかし現在、コロナウイルスは日本の工業製品の重要な市場にとって深刻な脅威となっている。

日本のメーカーは中国企業の主要な供給業者であり、精密工作機械からスマートフォン、自動車の部品に至るまであらゆるものを送り出している。ウイルス流行の前でさえ、日本企業は中国の経済減速の影響に対処するため奮闘していた。

原因の一部は、アメリカとの貿易戦争である。日本の中国への輸出は2019年時点で前年比7.6%減少している。

コロナウイルスの流行は、中国国内にある日本企業の事業にも影響している。

新型ウイルスに対応するため、中国当局は旧正月休みを延長し、多くの日本企業の製造業務を事実上停止させた。
NHKによると、玩具メーカーのトミーは中国での生産が減速したため、2020年3月期の収益予想を引き下げた。

ウイルス流行の結果、任天堂は日本市場向けの「ニンテンドースイッチ」の出荷を遅らせると発表した。
今月、ソニーの十時裕樹CFOは投資家に対し、コロナウイルス流行が「わが社のサプライチェーン、物流、販売に多大な影響を与える可能性がある」と警告し、収益成長の業績見通しを打ち消す可能性があると述べた。

 

*訪日客の3割は中国から来ている

とはいえ、近年日本の経済にとって重要性が著しく高まっている観光事業に依存する企業ほど、ウイルス流行の影響を受けている企業はおそらくないだろう。

政府の統計によると、日本への訪問者数は過去10年間で3倍以上に増え、2018年には3100万人に達した。
こうした訪問者の30%以上が中国から来ており、そのうち10分の9近くを休暇旅行が占め、日本への最大観光客源国となっている。日本の観光ランキングで2位と3位を占める韓国と台湾からの訪問者はほとんどのお金を観光に費やしているが、中国の旅行者は買い物をする傾向がある。

大挙して押し寄せる中国のバーゲンハンターは、高い税金とニセの家庭用品を避けたいがゆえに、東京の高級ショッピング地区に降り立ち、日本で「爆買い」として知られる大量購入で国内外産の商品を買いまくる。
日本の人口が減少する中、国内消費を支える中国からの観光客は国の経済に非常に大きく貢献している。
大和総研のシニアエコノミストである神田慶司氏は「来日する中国人訪問者の消費パターンを見ると、多くの人が化粧品などを買っている」と話す。百貨店ドラッグストアのような場所は、多大な影響を受けている」。

とはいえ、希望はすぐその先にあるのかもしれない。

浅草寺の近くでスイーツ店を経営しているナトリ氏は、通常観光が最盛期を迎える桜の季節を待ちわびている、と話す。

そしてそれを見越し、このダウンタイムを利用して「季節限定メニューを考え出す」計画を立てているという。

(執筆:Ben Dooley記者、Emi Yamamitsu記者)




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