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今さら聞けない「肺炎」と「風邪」の違い


そもそも「コロナウイルス」とはいったい何か

村松 容子 : ニッセイ基礎研究所保険研究部 准主任研究員
2020年02月09日

そもそも「コロナウイルス」とはいったいなんでしょうか(写真:AFP=時事、中国湖北省武漢市、2月5撮影)

新型コロナウイルス(2019-nCoV)の感染が拡大し続けています。
「コロナウイルス」と聞くと、2002年に中国広東省で発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)や2012年にサウジアラビアで発見されたMERS(中東呼吸器症候群)を思い出す人も多いでしょう。
これらは、日本での感染の拡大はありませんでしたが、動物から感染する重症肺炎を引き起こし、致死率が高いウイルスとして知られています。しかし、私たちが日常的にかかっている風邪の10~15%(流行期35%)もコロナウイルスが原因となっています(国立感染症研究所サイト『コロナウイルスとは』より)。



*肺炎の原因には、ウイルスと細菌

ところで、「肺炎」は「風邪」と何が違うのでしょうか。
今回は、「肺炎」の種類と感染症法上の取り扱いに注目してみたいと思います。
風邪は、主に鼻や喉といった上気道に起こる感染症で、肺炎病原体が肺胞に感染することで炎症を引き起こす病気肺炎を引き起こす病原体には、細菌、ウイルス、その他の微生物が知られています。
健康な人が社会で日常生活を送る中で発症する肺炎としては、肺炎球菌が最も多く、次いでインフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマなどが続くとされています(日本呼吸器学会サイトより)。
細菌とウイルスは混同されやすいのですが、細菌は生物として、自分で栄養を摂取し、細胞分裂を繰り返すことによって増殖するのに対し、ウイルス自分で栄養を摂取したり単体で増殖できない点で異なります。
その代わり、ウイルスほかの細胞に入り込むことによって生存し、増殖します。
細菌とウイルスは異なるものであるため、ウイルスには抗生剤や抗生物質といった細菌を退治するための薬は効きません。また、ウイルス変異を繰り返していることもあり、一般に抗ウイルス薬は少数しか開発されていません
今回の新型コロナウイルスによる肺炎ウイルス性肺炎に分類されます。
過去に報告されたコロナウイルスとは遺伝⼦構造が異なっていることから「新型」と呼ばれています。
病原微生物で分類した肺炎の種類
ウイルス性肺炎インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、水痘ウイルスなど
細菌性肺炎        :肺炎球菌インフルエンザ菌黄色ブドウ球菌など
非定型肺炎        :マイコプラズマ、クラミジアなど
                                                                                             (出所)各種資料より筆者作成

いずれも、感染の経路としては、発症している人の唾液などに含まれる病原微生物が、口や鼻から入り込んで感染する「飛沫感染」と、ドアノブなどに付着した病原微生物自分の手を経由して口や鼻から体の中に入り込んで感染する「接触感染」があります。なお、高齢者によく起こる肺炎の大部分は、「誤嚥(ごえん)性肺炎」と呼ばれるものです。
これは、本来食道を通って胃に入るはずの食べ物や、唾、たんなどが、誤って気管に入った結果、細菌が肺に入ってしまうことで起こります。2018年には、65歳以上の死亡者の死因の第5位が「肺炎」、第6位が「誤嚥性肺炎」となっています。

*SARS、MERSは「二類感染症」

国内では、感染症法(正式には「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」)に従って、感染症の拡大を防止措置がとられています。各感染症は、危険性が高い順に「一類」~「五類」に分類されます。
さらにこれらの分類以外に、新たな感染症に対しては、「新型インフルエンザ等感染症」「指定感染症」「新感染症」という分類があります。
分類ごとに保健所への届出内容や対策が異なります。指定感染症とは、これまで感染症法に指定されていない既知の感染症のうち、緊急で患者の行動を制限することが必要な場合に、最大2年間に限り措置を行えるようにするものです。
SARS、MERSは、発生当初は、一時的に指定感染症(一類相当)に指定されましたが、一定期間を経て、現在は二類感染症に分類されています。
一方、風邪の原因となっている4つのウイルスは、危険性が低いため、分類の指定はありません。
今回の新型コロナウイルスは、2月1日に「指定感染症(二類相当)」に指定されました。今回は二類相当とされているため、SARSやMERSと同様に、医師は、対象の感染症の診断を行った際には全数保健所に届け出ることになっています。また、疫学調査が行われ、感染経路や接触者が特定されることになっています。
*ヒトに感染するコロナウイルスの特徴
ただし、新型コロナウイルスについても、現在は暫定的に「指定感染症(二類相当)」とされていますが、SARS、MERS流行時のように一定期間経過後、感染症法上の正式な分類が決まる予定です。

今回のウイルスは、現在のところ、致死率はあまり高くないと見られていること、感染を予防する方法としては、インフルエンザなどの予防と同様に、人混みを避けることや、手洗い・うがいが有効であることが報じられています。 
その一方で、これまでに知られている肺炎と同様に、一般に、高齢者や糖尿病等の持病を持っている人、妊婦などは、重症化する恐れを否定できないことから、周囲の人を含めて十分に注意をすることが大切です。



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