· 

50歳以降に活躍したシニアが持つ大事なもの


自分が積み上げてきたキャリアや、描いてきたキャリアの将来像が、予期せぬ環境変化により崩壊してしまう「キャリアショック」──。
テクノロジーの進化により、誰もがそのリスクに晒される今、我々はどのように働き、どのように学び、どのようにキャリアを設計すればよいのか?


「今さら新しいことなんて無理だ。失敗したら恥ずかしい」と最初は感じるかもしれないが、人生100年時代、50歳は通過点だ。とにかくやってみればよい。分からなければ若手に習ってもよいのだ。

ここでは、「50歳以降、さらに活躍した人」を紹介。

その中から、江戸時代に測量に基づく精密な地図を作成したことで知られる伊能忠敬と、絵本「アンパンマン」シリーズの作者やなせたかし氏を簡単に紹介したい。

 伊能忠敬は、日本地図作りのプロジェクトに参画したとき、50歳を過ぎていた。

彼は、若いころから天文学や数学などに興味があったが、学問に携われず、婿入りした伊能家の家長として家の商売を再興している。40代後半で隠居が認められてから、ようやく大好きな学問に取り組むが、30代の高橋至時(よしとき)という若き学者に弟子入りするのである。

暦作り、さらには、日本地図作りに没頭し、70代で亡くなる直前まで日本地図作りに心血を注いだ。

 

 やなせたかし氏は若い頃から大変器用で、漫画家、テレビ・ラジオの構成、舞台の美術監督、作詞などで幅広く成果を残している。そのやなせ氏が世に知られるのは、50歳から描き始めた「アンパンマン」シリーズの絵本を原作とするアニメがテレビで放映され、幼児層の人気を集めてからだ。

さらにやなせ氏自身もメディアにひっぱりだこになるのだが、それはなんと70代以降である。


 この二人は長年の努力家であるとともに、若いころから好きだったこと・やりたかったことが、シニアになってから実現したことが似ている。

こういう話をすると、「私は凡人だ。そもそも人間の出来が違う、時代も違う」という人がいるだろう。

 でも、考えてみてほしい。

江戸時代に50歳を過ぎて隠居してから20歳も若い人に弟子入り・勉強をした上で、新しい仕事を始める、50代で絵本のシリーズ化に取り組み、70代からテレビなどに出演して人気を博す――といったことは、やはり、年齢を考えると凄いことである。
 だから、この二人についても自分と違う部分に目を向けるのではなく、「シニアが新しいことに取り組んだ」例と捉えてみてはどうだろう?

そうすると、こういう著名な人物から、50歳を過ぎて活躍するために大切なことが見えてくる。
 もちろん、才能や運もあるだろうが、何より「新しいことをやろう!」という「想い」が素敵だ。

若いころから好きだったこと・やりたかったことがあった、という点はあるにせよ、「想い」を持って何かをするとシニアになってからでも新しい道が開けることをこの二人の例は教えてくれる。
 私自身も定年を数年後に控える年齢になってわかってきたことがある。

知識やスキルといった「知力」以上に、「気力」(何かをしたいという気持ちのパワー)と「体力」(気力を維持できる程度の身体のパワー)を持つことが「想い」の実現を支えてくれるような気がする。
 何歳まで働くにしても、「想い」を持ち、新しい知識やスキルを学んで知力をつけつつ、気力と体力を機動力にして自分のキャリアを深めていく。
 子どものころから好きだったこと、余裕ができたらやりたいこと、中年以降に急に関心を持つようになったことなど、誰にも一つくらいあるのではないか。それをまずは思い出してみる。
 そして「いつかやろう」ではなく、「やるなら今」だ。

必要であれば、二つ三つのわらじを履いてでも、100年人生を、ワクワクした気分で、楽しく過ごしていきたいものである。

出典 :トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子   日経BizGate


メール・BLOG の転送厳禁です!!  よろしくお願いします。