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なぜ、ナイアガラの滝はあんなに大きい?カナダに隠された4つの謎

坂本 正敬
2020/02/05


カナダは、日本人からするとけた違いの大自然がある一方で、大きな都市も発達し、都市のなかにも多様性があり、さまざまな価値観や暮らしが混ざり合っている。
今回は、そんなカナダのミステリーと称して、カナダの謎やびっくり文化を紹介。


CNタワーから見たトロントの様子

トロントの街i

トロントにあるホテルの入り口と国旗

*その1.大都市でクラクションがうるさいのはなぜ?

西海岸のバンクーバーにせよ、大陸の東側にあるトロントにせよ、カナダは都市に出るとクラクションが頻繁に聞こえてきます。

さすがにインドやネパールなど南アジアの国々ほど激しいクラクションではありませんが、穏やかで安全な印象のあるイメージとは違っていて、少しびっくりします。

その理由を現地の人たち、あるいはタクシードライバーたちに聞いてみると、ほぼ決まって返ってくる答えは、「昔はこんなんじゃなかった」という言葉。
カナダは移民に優しい国として、移民を積極的に受け入れています。
公共の図書館に移民者向けの生活情報コーナーが充実していたり、2017年には、このようなメッセージを、カナダのトルドー首相発信しています。

迫害やテロ、戦争から逃れてきた人々へ、カナダ国民はあなたを歓迎します。あなたの信条や信仰にかかわらず。多様性は私たちの強みです。

 

その結果、いまでは国民の5人に1人が移民となっているのだとか。
しかし、移民が増えれば、当然いままで通じていた暗黙のルールが破られます。交通マナーも同じで、予期せぬ運転をする相手が増え、思わずクラクションを鳴らすような瞬間が増えたと、多くの人が教えてくれました。
Ipsosが2019年に発表した意識調査でも、カナダ国民の44%が「カナダは移民を受け入れすぎている」と感じているといいます。
この数が前回の調査より上昇している点を見ても、先にカナダに移った人たちと後から移った人たちとの間で、精神的な分断が生まれつつあるのかも。そのいら立ちの表れが、クラクションなのかもしれませんね。



*その2.国旗が何度か変わったのはなぜ?

カナダの国旗といえば、どのような図柄を思い浮かべますか?

公式色である赤と白の縦じまの中央に、赤いカエデの葉っぱが描かれたデザインだと思います。英語では「The maple leaf flag」といわれます。冬季オリンピックで盛んに見かけるため、きっと日本人にもなじみ深い国旗ですよね。

国旗の通り、カナダといえばサトウカエデの木で、メープルシロップや紅葉は日本人にも有名です。

 

NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)に所属するトロントのアイスホッケーチームもThe Tront Maple Leafs(トロント・メープルリーフス)と名付けられているくらい。

その意味で、建国以来ずっと変わらない国旗なのかと思ってしまいますが、実はこれ、1965年に採用された新しい国旗だとご存じでしたか?
現在、54~55歳より年上の人であれば、カナダが異なる国旗を掲げていた時期に生まれていたはず。

一体昔はどういった国旗だったのでしょうか。
以前は赤地に、オーストラリアやニュージーランドと同じくイギリスのThe Royal Union Flag(ユニオン・ジャック)が組み込まれた国旗でした。さらに1800年代までさかのぼると完全にイギリスの国旗が国土に翻っていましたし、1600年代よりも前になるとフランス王国の国旗を使っていました。まさにカナダの歴史を代弁する流れですね。

ファースト・ネーションズという先住民の暮らす土地にヨーロッパから人が来て、最初はフランスが主導を握るものの、後にイギリスが巻き返し、植民地支配を進めていった歴史が国旗からわかります。
しかし、いまでは独自の旗を国のシンボルとして掲げるカナダ。
葉っぱの先のとげは、当初の州と準州の数(国旗が定められた後、準州がひとつ国土に追加される)を表しています。
National Flag of Canada Actでは、国家統一のシンボルであり、自由、民主主義、勇気、正義の象徴とされています。
カナダに訪れる場合、eTA(電子渡航認証)を申請する段階から国旗を目にする機会が増えます。一度まじまじとチェックしてみてくださいね。



ケベック

ケベックの信号とフランス語表記の表札

ケベックの街並み

*その3.公用語が英語だけではないのはなぜ?

カナダの公用語といえば、何語を思い浮かべますか?

日本からの語学留学も盛んなことから英語だと思ってしまいますが、公用語がフランス語のエリアもあります。

それが、カナダの東部にあるケベック州ですね。
もともと国旗の部分でも触れたように、カナダにはフランス系の人たちが入植してきた歴史があります。そのフランス系の人たちが多く暮らし、いまでも文化を守っているエリアが、ケベック州。
ケベック州の道路を歩けば「Aret(止まれ)」というフランス語表記の交通標識を見かけますし、聞けば高齢の方になるとフランス語しか話せない人も多いのだとか。

フランスのマルセイユからケベック州のモントリオールに移住した友人に聞くと、ケベックの人たち(ケベコワ)のフランス語は、フランス人の話すフランス語とちょっと異なるものの、100%問題なくコミュニケーションは行えるといいます。
またケベックは、カナダのなかで独立問題も提起されるような土地です。セリーヌ・ディオンが米国から地元ケベックに帰ってきて、ケベック公演でフランス語の曲をフランス語で歌ったところ、翌朝の地元新聞には「彼女を許してあげようじゃないか」という見出しが躍ったと、地元ガイドの人からも聞いています。
それだけフランス系の出自に誇りを持つケベック州の人たち。

アフリカのフランス語系の人たちも移住しやすい場所として、ケベック州ではアフリカ系移民のタクシードライバーにもたくさん会いました。

 



上から見たナイアガラの滝

正面から見たナイアガラの滝

間近で見ると迫力満点

*その4.ナイアガラの滝があんなに大きいのはなぜ?

カナダの観光名所といえば、イエローナイフのオーロラだとか、秋の紅葉だとか、トロントのCNタワーだとか。

さらにはケベック・シティの砦やロッキー山脈などが、真っ先に出てくるかもしれません。

マイルズ・キャニオン、オーユイタック国立公園、ガスペ半島、人間が定住している最北の地アラートなどを真っ先に思い浮かべる、筋金入りのカナダファンもいるかもしれませんが、一般的にはナイアガラの滝を思い浮かべることもあるのではないでしょうか。
あのナイアガラの滝、どうしてあれほど大きいのでしょうか。
アメリカとカナダの国境になっているオンタリオ湖とエリー湖の間にある巨大な滝で、特にゴート島で二分されたうちのカナダ瀑布(ばくふ)は、幅約700m、高さ54mに達します。

単純に高さだけでいえば、例えば日本の富山にある称名滝は約350mなので、それほど驚きはしません。しかし幅が700mにわたって落下する迫力は、やはり世界一の印象がありますよね。
この落差と幅が生まれた経緯は、氷河時代までさかのぼります。
世界地図を広げると、あるいは飛行機の上からカナダを見ると、カナダの国土の北半分はツンドラ(凍土帯)だとわかります。

ツンドラとは以下のような場所をさします。
<1年の大部分が氷雪に閉ざされている荒原>(広辞苑より引用)
国土の大部分に氷河期の痕跡が残っていて(周氷河地形やフィヨルド)、先の氷期(寒さが厳しい時期)には、氷の南限がナイアガラのある五大湖まで達していたといわれています。
言い換えれば、カナダはほとんどすべての土地が氷に閉ざされていたのです。その間、氷河が生まれ、氷床といわれる厚さ数kmの氷の大地が発達します。その重みで大陸地殻は大きく沈みました

氷期が終わり、一気に気温が上昇すると、今度は氷が溶けて激流が生まれ、大地を削ります。その結果、ナイアガラの滝が生まれました。
氷河の影響は、カナダの地形を考える上で欠かせないポイント。

その最もわかりやすい例が、世界的な観光名所であるナイアガラの滝なのです。
こういった歴史やトリビアを覚えてその土地を見たり訪れると、新たな一面に気づくことがあります。



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