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なぜGoogleは今になって「小売り」で天下を狙うのか

2020.01.22


Googleが小売店舗の商品をオンラインに掲載するためのサービスを展開しているPointyを約163億円で買収しました。その狙いとは、。。。


シバタナオキ

AppGrooves / SearchMan共同創業者。

2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。

2011年にシリコンバレーでAppGrooves / SearchManを創業。


*Googleが買収で目指すのは、小売店の在庫情報のオンライン化 

Q. Googleの小売戦略はAmazon Goと何が違うのか?
A. Amazon Goのように無人コンビニを目指すのではなく、現在オンライン上に無い店舗在庫の情報をオンライン上に吸い出し、オンラインから店舗への送客を実現すること。


先日発表になった「GoogleのPointy買収」について詳しく見ていきたいと思います。
※参考:Googleが実店舗のネット活用を支援するスタートアップPointyを買収へ(TechCrunch:2020年1月15日)
この記事にあるとおり、Googleが小売店舗の商品をオンラインに掲載するためのサービスを展開しているPointyを$163M(約163億円)で買収しました。

*Pointyとは? 

初めにPointyのサービスについて、簡単に紹介します。

この写真にあるようなデバイスを購入して既存のPOSシステムに差し込むか、メーカーによっては無料のアプリが提供されているPOSシステムもあります。

その後、自店で販売している商品をダッシュボードから登録することで、自分の店で売っている商品がオンラインにも掲載されるようになるという仕組みです。

TechCrunchの記事にもある通り、Pointyにという会社はアイルランドのダブリンに拠点を置くヨーロッパの会社です。しかしアメリカ国内でカテゴリーによっては10%以上の小売店舗で導入されていると言われている非常に市場シェアの大きいサービスです。

導入店舗数が実店舗の10%を超えているカテゴリーは、少なくとも「ペット」と「おもちゃ」の2つ以上あるといわれています。 


 *Googleはなぜ小売へ参入したいのか(ヒント: Amazon Goの事業規模)

Googleが小売に参入するというのは意外に思えるかもしれませんので、なぜGoogleが小売市場に参入したいのか?ということを簡単に書いてみたいと思います。
最大のヒントは、「Amazonの無人コンビニであるAmazon Goが想定していたより、とても大きくなりそうだから」というのが一番の理由だと言えるでしょう。

Amazon GOは1店舗あたり年間$1.5M(約1.5億円)もの売上が上がると言われています。
さらに、2021年までに3,000店舗まで拡大する可能性があるとも言われています。
単純に掛け算すると、Amazonの無人コンビニ事業は$4.5B(約4,500億円)のビジネスになる可能性があるわけで、Googleとしてはこれだけ巨大なビジネスが出来上がるのを脇で見ているだけではなく、何かしらアクションを取らざるを得ないというのが本音なのではないでしょうか。

 

*Amazon Goのユニットエコノミクス

少し脇道にそれますが、Amazon GOのユニットエコノミクスも押さえておきましょう。

  ・1日あたりの来客数: 550人
  ・1来客あたりの購買金額: $10(約千円)
  ・1店舗あたりの面積: 1,200~2,400sq=スクエアフィート(約111.5㎡=33.7坪~約223㎡=67.5坪)
     => 1sq(約0.09㎡=0.03坪)あたりの年間売上: $853(約8.5万円)/(店舗によって約6.4万円~12.8万円の間)
     1日当たり550人、一回あたり10ドルの購入が行われるとすると、1 sqft(約0.09㎡=0.03坪)当たりの年間売上が853ドル(約8.5万円)という計算になります。

    これは、「既存のコンビニなどと比べて圧倒的に面積当たりの売上が高い」ということで以前話題になりました。
  (余談ですが)Amazon Goは小型店舗の方が単位面積あたりの売上が大きい、というのがとても意外でした。
※参考:Amazon’s cashierless Go stores could be a $4 billion business by 2021, new research suggests(Vox:2019/1/4)

 

*PointyとGoogleの連携方法の詳細

さて話を本題に戻します。

GoogleがPointyを活用した、どのような小売戦略を立てているのかということを書いてきたいと思います。

登録された商品やお店の情報は、Googleの検索結果やGoogle Mapの検索にもヒットするようになります。


動画でPointyの利用者の声を見ると、今まで1店舗の店にしかなかった商品が、Googleというチャンネルを通じて多くの人の目に触れることになり、小規模店舗の集客問題が一気に解決するケースがあると言っています。

 


*Pointyを活用したGoogleの小売戦略とは?

勘が良い方であればすでにお分かりいただけたかもしれません。

Googleの狙いは、「今までオフラインにしかなかった小売店の在庫情報をオンラインに吸い上げる」というのが最大の目的ではないかと思います。 

このグラフを見れば分かるとおり、アメリカにおいても現在のEコマース化率は10%程度に過ぎません。

別の言い方をすれば、残りの90%はオフラインの店舗に在庫として眠っているわけです。

Googleとしては、そのオンライン上に情報が無い市場の90%の商品情報、在庫情報を全てオンライン上に吸い上げて、全てGoogleで検索可能にする。

そしてそこから店舗への送客を行い、最終的には広告でマネタイズする。

というモデルを狙っているのではないでしょうか。
Amazon GOとは全く異なる小売戦略ですが、いかにもGoogleらしい、そして目の前に明確な戦略がある素晴らしいM&Aだと個人的には思いました。
今後のAmazonとGoogleの小売市場での動きにも注目していきたいと思います。

 





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