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景気回復はフェイクニュース。飲食店の倒産「過去最多」目前で日本は戦後最悪の恐慌状態


児島康孝
2019年12月19日

日経平均は2万4000円台に到達しました。

しかし浮かれていると突然、何かが起きそうな気がしてなりません。

実体経済は明らかに恐慌で、激しい乖離があります。

著者プロフィール
1988年神戸大学卒。独立UHF局、TBS系、FNN系などで報道記者、カメラマン。ニューヨーク金融情報、FRB・ECBなど中央銀行の動きをウォツチ。



人手不足は大嘘? 政府と日銀がデフレを促進してしまっている…

 

*日本は恐慌状態
日経平均は2万4,000円台に到達したものの、いまの日本の実体経済は、戦後最悪の恐慌状態に陥っています。
1980年から1990年頃、ランチ代は1,000円ぐらいが普通で、みんなファミリーレストランにもよく行っていました。年収は、400万円から500万円が普通でした。
六本木で1万円札をヒラヒラさせてタクシーをつかまえたのは行き過ぎだとしても、日本経済は、内需・海外競争力ともに強くて順調だったのです。
当時は、アメリカの貧困層の食事が1ドルと聞いて、驚いたものです。

ところが今の日本は、およそ30年間のデフレで、貧困化・低所得化が進み、内需はガタガタ、海外競争力もボロボロです。
従来のファミリーレストランに行けない層が増え、サイゼリアやガストなどの低価格店が受け皿となっています。

 

*1〜2ドルの食事が日本でも普通になっている
昼食は、ワンコイン500円どころか、200円から300円台へ…。
これはもちろん、日本政府の経済政策と、日銀の金融政策の失敗によるもので、トランプ政権の経済政策とはまったく逆のことをしているためです。
コンビニのイートインでは、カップ麺だけで食事を済ませる人が、男女ともに見受けられます。または、パンとコーヒー。
つまり、1ドルとか2ドルの食事が、日本でも普通になっているわけです。
また、立ち食いソバ屋さんや牛丼店にも、最近は女性客が普通に入っています。良いか悪いかは別として、昔は、女性客は安い店には入りにくかったのです。
年収100万円台、200万円台、いつ切られるかわからない非正規雇用という状況では、景気が悪いのも当たり前です。
景気が良い人手不足だという「フェイクニュース」が流れ、これを信じた人も多かったようです。

しかし、さすがに、人手不足のはずのコンビニ業界がリストラを始めたのを見ると、唖然としたことでしょう。

 

*飲食店の倒産は過去最多に
街を観察していると、閉店が目につき、景気の実態がわかります。帝国データバンクは、こうした現状をわかりやすく示すデータを提供しています。

 ☞ 参考:飲食店の倒産動向調査(2019年) – 帝国データバンク
帝国データバンクの発表資料によると、2019年(1月~11月)の飲食店事業者の倒産は668件。通年で過去最多となった2017年(707件)を上回る勢いです。

このデータは、景気の実態を非常によく反映しています。
例えば、リーマン・ショックが起きた2008年(通年)は634件、翌2009年は646件。

東日本大震災があった2011年は688件、翌2012年は685件と、やはり倒産が高水準なのです。
そのあと、2015年は573件、2016年は557件と、景気は改善傾向であったのですが、2017年に一挙に707件に急増。2018年も653件で、リーマン・ショックの頃と似た水準です。そして、今年の2019年は、1月から11月までだけで、すでに668件となっているわけです。

11月分までだけでリーマン・ショックの頃をすでに超えていて、このまま12月分が加わると、2019年の通年の飲食店の倒産件数は「過去最多」になる可能性が非常に高いわけです。このような状況で実体経済の景気が良いわけはなく、むしろ「戦後最悪」というレベルなわけです。

*激しい乖離のあとに何が?

このように、日経平均と実体経済には「激しい乖離」が生じています。
乖離が生じると、やがて、どちらかが一挙に動きます。
急に景気が良くなれば良いわけですが、とても、そのような状況にはありません。むしろ、今年夏から秋にかけて、一段と景気が悪化した可能性があります。

これまで安価な食事だったはずのコンビニや牛丼店でも、感覚的に高くなってしまった。日本は、このような有様です。

 

*政府がデフレを促進してしまっている
これも、日銀が「金融緩和」を装って金融緩和をしていない「デフレ推進政策」を続けているからで、また日本政府の国民負担増・消費増税も重なって、デフレを強化する方向になってしまっています。
日銀の金融政策には「フェイク」があって、インフレ率との比較では、金融緩和でも何でもないのです。

現在の政策金利で金融緩和になるには、インフレ率2%レベルでないといけません。
しかし、米国と英国うまくやっていますが、日本ずっと2%を下回っており、インフレ率はゼロ近辺であって、低いインフレ率というのは金融政策の失敗を示しています。
つまり、人手不足も景気回復も「フェイクニュース」であって、もし本当にそうであれば、徐々にインフレ率は上昇してきます。国民の財布が温かくなれば自ずと使われるお金も増えてくるわけですが、とてもそれどころではなく、ゼロ近辺のインフレ率というのは、まさに財布が凍りついた状態です。

ですから、先に紹介した帝国データバンクのデータは、これを反映している正確な資料です。

 

*デフレ最終局面に悪夢が訪れる?
あまりに日経平均と実体経済が乖離すると、良いことは起きません。北朝鮮がまた動き始めていますが、戦争リスクとか、大災害のリスクが考えられるのです。
アメリカは、減税や雇用の増加で、実際に景気が良くなっているので良いわけです。
日本では、デフレ最終局面を象徴する何かが起きそうな気がしてなりません。
たぶん、数年後までにはデフレは転換していると思いますが、これは戦時中の1944年の人に「あと少しで良くなる」と言うような話ですから…。実際、1945年に大空襲や原爆投下があって転換しているわけで、長期の話は別として、短期的にはかなり強い警戒が必要でしょう。

 


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