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寒暖差に負けない


頭痛や鼻水、不眠の原因に

2019年11月16日
朝日新聞デジタル

 秋が深まってくると、鼻水やくしゃみがとまらなくなったり、頭が痛くなったりする。風邪をひいているわけでもないのに、どうしてだろう? それは寒暖差のせいかもしれません。
 大阪市立大学病院(大阪市阿倍野区)には10月末ごろから、中高年を中心にくしゃみや鼻水が止まらないといった症状を訴える患者が増えた。

同大の阪本浩一病院教授(耳鼻咽喉〈いんこう〉科)は「血管運動性鼻炎、いわゆる『寒暖差アレルギー』です」と話す。アレルギーが原因ではないが、アレルギー性鼻炎と似た症状が出ることから、こう呼ばれるのだという。「自律神経のバランスが崩れていることが原因だと考えられています」
 自律神経は、体が興奮、緊張すると優位になる交感神経と、リラックス状態になると優位になる副交感神経がバランスを取っている。

例えば運動するときは交感神経が優位に、就寝するときは副交感神経が優位に働くが、このバランスが崩れると体に変調が表れる。
 過去の研究でも、血管運動性鼻炎の人は体が冷えると、鼻水が出ることが確かめられている。

健康な人と血管運動性鼻炎の人の脚部を冷やす実験では、健康な人は交感神経の働きで鼻の粘膜が縮まって鼻水がほとんど出なかったのに対し、血管運動性鼻炎の人は粘膜の縮まりが抑えられ、鼻水がより多く出た。阪本さんは「自律神経に狂いが生じている体が気温差に反応し、症状が出てしまうと考えられます」と話す。
 昨年11月の東京と大阪の気温をみると、最高・最低気温の差は平均で7~8度

10度以上の開きがあった日もあった。前日から最高・最低気温が3~4度変動する日もあり、日ごとの寒暖差も大きい。急に寒さが増すこの時期に、寒暖差アレルギーの症状を訴える人が増えるようだ。「高齢者は自律神経を整える力が落ちていることが多い。若くても、もともと疲れやストレスがあると、寒暖差に自律神経が追いつけず症状が出てしまうのではないか」と、阪本さんは見ている。
 気象病に詳しい愛知医科大学の佐藤純客員教授も「寒暖差が大きいと、自律神経が忙しく働かないといけない。体がついていけず、頭痛やめまい、体の痛み、うつなど様々な症状が出ることがある」と指摘する。

症状が出るのは女性の方が多いという。「寒暖差に対応するには体を冷やさず、日頃から自律神経を整えておくことが重要です」と話す。 

自律神経を整えるには、どうしたら良いだろう。

 「寒暖差疲労外来」があるせたがや内科・神経内科クリニック(東京都世田谷区)の久手堅(くでけん)司院長は「基本は冷えを防ぐこと。四肢末端を冷やさず、血行を良くすることが大切です」と話す。

久手堅さんが勧めるのが、首の後部に蒸しタオルや温熱シートをあてることだ。首には太い血管が通っているため血行が良くなる。また、38~40度のぬるめのお湯に10~20分つかるのも良いという。
 自宅や職場で手軽にできるのが、タオルを使った首のストレッチだ。

斜め上を向いて首の後ろにタオルを通し、首を支えるようにする。そのタオルを30秒ほど引っ張る。次に、下を向いてタオルを30秒引っ張る。「だんだん首がぽかぽかしてリラックス効果があります」
 長時間、同じ姿勢でスマートフォンやパソコンを見るのも自律神経を乱す原因になる

真冬になればエアコンで暖められた室内と屋外の寒暖差もある。

久手堅さんは「現代は自律神経が乱れる環境要因が多くあり、ジェットコースターに乗っているようなもの。睡眠や食事など、生活習慣にも気をつけてほしい」と話す。(小川裕介)


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