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東芝が“真にオープン”なIoT団体設立、「誰でも作れるIoT」に向け100社加入へ

2019年11月06日 更新
[三島一孝,MONOist]

 東芝と東芝デジタルソリューションズは2019年11月5日、同社が開発したIoT(モノのインターネット)技術「ifLink」をベースとしてIoTサービスのオープンな共創を目指す「ifLinkオープンコミュニティ」を2019年度(2020年3月期)中に設立。2020年3月までに100社の加入を目指すと発表した。 


IoT普及の課題をクリアする

 IoTの普及は広がっているものの、産業領域など一部での利用に留まっており、第4次産業革命で描かれているようなデータをベースとした新たなビジネス基盤の構築にははるかに遠い道のりがある状況だ。
 これらの課題として、IoTのニーズはユーザーやビジネスの現場などで生まれる一方で、現場ではIoTを機能させるITスキルがなく「ニーズ」と「手段」が乖離していた状況があった。

これらを結び付けるIoT推進団体なども数多く存在しているものの「特定企業のビジネス色が強くプラットフォームで利益を上げようとするのが見え、真の意味での企業間のつながりが生まれにくい状況があった」と東芝 執行役常務 サイバーフィジカルシステム推進部長 島田太郎氏は従来の課題について述べる。
 東芝が今回設立した「ifLinkオープンコミュニティ」はこれらの課題解決を目指すものである。

コミュニティーの基幹となる「ifLink」は、東芝デジタルソリューションズが独自開発したIoTプラットフォームで「ドアが開いたら(IF)、ライトが光る(THEN)」のように、IF-THEN型の設定でスマートフォン端末につながる機器同士を結び、動作させることが可能である。プログラミングが不要で接続できればスマートフォン端末で設定できる。

ITの専門知識を持たないユーザーでも活用できるため、さまざまな企業のビジネス創出の機会拡大に貢献する。

 ifLinkは基本的にはスマートフォンアプリとクラウドでのルール作成機能で構成

クラウド側で作成したルールを、ifLinkアプリをダウンロードしたスマートフォン端末で適用するという仕組みであるため、一度ルール設定ができればクラウドとの通信なくエッジ側(スマートフォン端末側)だけでも各種データの処理や動作の処理などを行える点が特徴である。
 スマートフォン端末とセンサーなどの接続については、SDK(Software Development Kit)を提供することで、ifLinkアプリ内にマイクロサービスとしてデータ連携の仕組みを作り、さまざまなデバイスからのデータを取得できるという。

ifLinkで実現する「IF」と「THEN」による簡単IoTの実例(出典:東芝

ifLinkの仕組み(出典:東芝


ピッチコンテストから全社プロジェクトへ昇格

 ifLinkはもともと約2年前に東芝デジタルソリューションズ ICTソリューション事業部 参事の吉本武弘氏がスマートフォン端末版のゲートウェイとしてβ版を開発。しかし、接続端末数が増えないと効果を生まないことから、グループ内でも生かし方に迷いが生まれていたところだったという。

ところが、東芝が経営体制を刷新し「CPSテクノロジーカンパニー」へと舵を切る流れで、社内でのピッチコンテストなどを実施。そこで「もともとのコンセプトにあるオープン性が素晴らしいと考えた。

そこで、全社プロジェクトに持ちあげてさまざまな企業との連携を進めることにした」と島田氏は経緯について語る。

 ifLinkではセンサーやビーコン、GPSなどのデバイスとの連携に加え、メールはHTML表示、音声合成などのアプリケーションソフトとの連携なども実現可能である。

また、組み合わせてQRコードを撮影すれば簡単にルール作成ができる「IF-THENカード」なども用意。

徹底して分かりやすさを追求している。ただし、「IF-THEN」により簡単にIoTを作れるといっても東芝の中だけで生まれるアイデアは限定的である。そこで、より広くIoT活用を普及させるということをコンセプトとしオープンなコミュニティーを構築することにした。

そこで構築したのが今回の「ifLinkオープンコミュニティ」である。 

「IF-THENカード」とその使い方出典:東芝


徹底してオープン化を実現するifLinkオープンコミュニティ

 ifLinkオープンコミュニティはユーザーを中心につながるオープンなエコシステム構築を目指し、ユーザーとはIoTレシピの拡大を進め、企業とは連携するモジュールの拡大を進めていく。

具体的には、ifLinkを活用し、ユーザーと会員が便利な使い方やアイデアの創出をユーザー起点で発想する「共創コミュニティ」と、会員同士がさまざまなIoT機器、デバイスやWebサービス、アプリケーションなどを相互連携して、つながるモジュールを増やす開発コミュニティ」の2方向での活動を進める方針だという。

 東芝だけの利益を目指すものではないため、2020年3月までに一般社団法人化し、中立的な立場で活動を本格化できるようにするという。加えて、ガバナンス面でも東芝および東芝デジタルソリューションズは1幹事会社という立場となり、他の幹事会社との合議制で運営を進めていく方針を示している。
 「とにかく本当の意味でのオープン化を目指すことがIoTには必要だ。より多くの企業に賛同を得て業界や企業の枠を超えて、今までになかったものを作るということが目指す姿である。東芝としての立場だけで収益一辺倒に取り組むわけではない」と島田氏は強調する。
 中立性を保つために活動については、会費制を考えているという。組織運営にもかかわる年間360万円の「プレミアム会員」、大企業を想定した年間60万円の「レギュラー会員」、スタートアップ企業などを想定した年間12万円の「ベンチャー会員」、大学や研究機関などを想定した年間3万円の「アカデミック会員」の4種類を用意する計画である。
 既に、アルプスアルパイン、京セラ、クレスコ、Global Mobility Service、KDDI、ソフトバンク、ソラコム、デンソー、東京ガスの9社がifLinkオープンコミュニティに賛同を示しており、参加の意思を表明している。島田氏は「この他にも既に多くの企業から関心を得られており2020年3月までには100社の加盟が実現できると考えている」と自信を見せた。 

オープンコミュニティーを実現するコンソーシアム企画案出典:東芝

会員モデルの現状の案出典:東芝

ifLinkオープンコミュニティの参加予定企業(出典:東芝


世の中に欠けている部分を埋める
 「オープンさ」や「会費制」などでは、東芝そのもののビジネスへの貢献が見えない状況も生まれるが、その点について島田氏は「ifLinkオープンコミュニティ内でニーズの把握や早期の製品化などを実現した後、さらに高度なシステム構築などが必要になったり、量産などで品質などを高度化する必要があったり、ビジネスが生まれればそれに伴うさまざまなニーズが生まれてくると考えている。ただ、そこへつなげることを強く意識してはいない。

まずはIoTを展開する上で、世の中に欠けている部分があり、そこを埋めるということを考えてこのコミュニティーを作った」と、まずは企業間連携によるIoT市場の拡大を強力に推し進める考えを示している。



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