太陽系の外側に未知の境界層


ボイジャー2号からのデータで発見 … 太陽系の外側に未知の境界層

 

Morgan McFall-Johnsen

2019/11/09

アメリカ航空宇宙局(NASA)の探査機ボイジャー2号は、1年近く前に恒星間宇宙に到達した際、前例のないデータを送信してきた。科学者たちがその研究結果を発表した。

このデータは、太陽系の端を過ぎたところに、これまで知られていなかった境界が存在することを示唆している。
科学者たちは、恒星間宇宙探査に新たなミッションを立ち上げ、この謎やボイジャー計画がもたらした他の謎を解明したいと考えている。米航空宇宙局 (NASA) の探査機ボイジャー2号は、1年近く前に太陽系を脱出し、恒星間宇宙に入った2機目の探査機となった。
2012年に太陽系の端に到達した姉妹機のボイジャー1号から6年間遅れたが、ボイジャー1号では、プラズマ測定器が損傷し、太陽系から恒星間宇宙への飛行に関する重要なデータを収集できなかった。
ボイジャー2号は、機器が正常な状態で太陽系を離れ、一連のデータを完成させた。

科学者たちは、Nature Astronomy誌に掲載された5つの論文を通じて、今回の発見を初めて発表した。
データ解析の結果、太陽圏と恒星間空間の間には不可解な層があることが分かった。

ボイジャー2号は、太陽からの荷電ガス粒子の流れである太陽風が太陽系から漏れ出ているのを検知した。

太陽系の端を過ぎたところでは、太陽風が何百万年も前の超新星爆発によって宇宙を流れるガスや塵、荷電粒子からなる星間風と相互作用している。
「太陽圏の物質は、何十億kmも離れた距離まで、銀河に漏れていた」と、論文の1つを執筆した物理学者のトム・クリミギス(Tom Krimigis)氏は記者との電話インタビューで述べた。
新しい境界層の発見は、太陽圏から外宇宙への移行に、科学者が以前は理解していなかった新しい段階があることを示唆している。

© NASA NASAの探査機ボイジャー2号のイラスト。

© NASA/JPL 1986年1月14日、ボイジャー2号がおよそ1200万kmの距離から撮影した天王星の画像。


太陽風と星間風が相互作用する場所

2018年11月5日、ボイジャー2号は、「太陽圏」と呼ばれる、太陽から流れ出る荷電粒子の巨大な泡から離れた。

探査機は「ヘリオポーズ」と呼ばれる太陽系と外宇宙の境界面を横切ったことになる。 太陽系の端であるその領域では、太陽風は星間風の流れにぶつかって戻ってくる。
ボイジャー1号と2号は、ともにヘリオポーズを通過するのに1日もかからなかった。双子の探査機は現在、「バウショック」と呼ばれる、星間宇宙のプラズマが、移動中の船の船首の周りを流れる水のように、太陽圏の周りを流れている領域を高速で進んでいる。

どちらのボイジャーも、ヘリオポーズを通過する際の宇宙線の強度の変化と、泡の内側と外側の磁場の遷移を測定した。しかし、太陽系からその先の宇宙への変化は、プラズマによって特徴付けられるため、ボイジャー1号の損傷した計器では測定が困難であった。
さて、ボイジャー2号による新たな測定結果によると、太陽系と恒星間空間の境界は、かつて科学者が考えていたほど単純ではないかもしれない。データはヘリオポーズの先に未知の境界層があることを示している。この領域では、太陽風が宇宙空間に漏れ、星間風と相互作用する。宇宙線の強度は外宇宙の90%にすぎなかった。
「ヘリオポーズのすぐ外側にまだ太陽圏とつながっている領域があるように見える。太陽系とのつながりはまだ残っている」と、1972年からボイジャー計画に参加している物理学者のエドワード・ストーン(Edward Stone)氏は電話で述べた。

新しい分析からの他の結果も、星間空間と太陽系との間の複雑な関係を示している。
科学者たちは、新たに発見された謎の層の向こうに、星間プラズマがもっと厚い別の境界層があることを発見した。

そこでは、プラズマの密度が、数十億kmにわたる領域で通常の20倍以上に跳ね上がる。これは、何かが太陽圏の外側からプラズマを圧縮していることを示唆しているが、科学者たちはそれが何かを知らない。
「これはパズルだ」と、五つの論文のうちの一つを書いた天体物理学者のドン・ガーネット(Don Gurnett)氏は電話で述べた。
さらに、今回の測定結果は、ボイジャー1号と比較して、ボイジャー2号が太陽系からヘリオポーズ、そして強力な新しい磁場へとはるかにスムーズに移行したことも示している。
「それはなぜかは謎のままだ」とクリミギス氏は言う。
科学者たちは、ボイジャーが燃料切れになるまでの5年間、この境界線の研究を続けたいと考えている。
「ヘリオポーズは星間風の障害となっている」とストーン氏は付け加えた。
「我々はできるだけ大きなスケールでこの複雑な相互作用を理解したい」

© NASA/JPL-Caltech この図は、太陽によって作られた太陽圏のバブルとNASAのボイジャー1号と2号の位置と示している。

 © NASA/ESA/G. Bacon (STScI) 太陽系を離れていくボイジャーのイラスト。


ボイジャーのデータはあと5年

ボイジャー2号は1997年、ボイジャー1号より2週間早く、天王星と海王星を探査するルート上に打ち上げられた。

現在でも、、この2つの惑星を訪れた唯一の宇宙船だ。
ボイジャー2号がボイジャー1号の6年後に恒星間宇宙に到達したことで、このルートが大きく迂回していることがわかる。これはNASAの最長ミッションとなっている。
「2つのボイジャーが打ち上げられたとき、宇宙探査が始まってまだ20年しか経っていなかったので、40年以上保つのかどうかを知るのは難しかった」とクリミギス氏は言う。
現在、科学者たちは、探査機が恒星間宇宙に向けて進む間に、さらに約5年分のデータが得られることに期待しているという。研究チームは、ボイジャーが燃料を使い果たす前に、太陽圏が影響しない宇宙空間の遠い地点に到達することを望んでいる。
その機能を失っても、探査機は宇宙を漂流し続けるだろう。宇宙人がそれを発見した場合に備えて、ボイジャーには、音や画像など地球上の生命に関する情報が記された金色のレコードが収められている。
将来的には、これらの境界層をより詳細に研究するために、太陽系の果てに向かって多くの探査機を送りたいと研究者たちは考えている。
「我々は多くのデータを必要としている。2つの例だけでは十分ではない」とクリミギス氏は言う。


[原文:NASA’s Voyager 2 spacecraft beamed back unprecedented data from interstellar space. It indicates a mysterious extra layer outside our solar system.


(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

© NASA/JPL ボイジャー2号は1977年8月20日、フロリダ州ケープカナベラルにあるNASAケネディ宇宙センターから打ち上げられた。



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