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5G普及の邪魔する総務省「格安スマホも5G」のお門違い


2019.11.04

スマホに対する大幅な割引き規制を決定したことも記憶に新しい、総務省の有識者会議。

その会議で出た「MVNO(格安SIM)が5Gサービス提供するためには5Gが普及しなければ意味がない」との発言に「お門違いだ」と怒りをあらわにするのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。石川さんは、総務省や有識者による発言と施策の「矛盾」について疑問を投げかけています。

☞ 自前の携帯電話網をもたず、他社の回線を借りて携帯電話サービスを提供する事業者のことをMVNO(仮想移動体通信事業者)といいます。Mobile Virtual Network Operatorの略称です。

事実上の3社寡占状態になっている携帯電話市場を活性化するため、総務省が参入促進を強力に後押しする姿勢を鮮明にしたことや、13年ぶりに携帯電話市場に新規参入したイー・モバイルがMVNOとの連携重視の戦略を打ち出したことで、流れは加速される方向にあります。

 

MVNOの参入を促進することは、地域特性にあった多様な携帯電話サービスを可能にすることにもなります。

各地に「おらがまち」のMVNOが誕生し、固有のコンテンツを提供できれば、きめ細かな住民サービスや災害・観光情報などの提供が可能になるかもしれません。地方分権や地域再生の流れにも沿ったものといえます。
 ただ参入促進はそう容易ではなさそうです。MVNOへの新規参入が活発化すると、回線の逼迫状態が強まり、サービスの品質に問題が生じかねないからです。このため回線を保有する携帯電話事業者からは、回線の貸与に慎重な声も聞かれます。


「5Gが普及するかどうか」を心配するのはお門違い

10月21日、総務省で「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第19回会合が開催された。
日曜日と即位礼正殿の儀の行われる日の間の月曜日、夕方5時からの開催となって、有識者の欠席が目立った会合であった。

議論が行われた時間も1時間弱と短く、「わざわざ、こんな日、時刻にやらなくてもいいのでは」と思わせる内容であった。
携帯電話料金の値下げに向けた施策が一段落したこともあって、5G時代におけるMVNOへの接続料のあり方について議論があった。

そのなかで有識者からは、接続料の考え方について、「(MVNOが)5Gのサービスを提供する上では、5Gが普及していかなければ意味がない」という発言が印象的であった。MVNOが5Gのサービスを提供しようと思えば、当然のことながら5Gに対応したスマホなどのデバイスが必要になってくる。

しかし、昨今の有識者会議による議論によって、スマホに対する割引に大幅な規制が入った。

これにより、比較的、高価になりそうな5Gスマホに対しても、ほとんど割引がない状態で提供されることになりそうだ。いまさら「5Gが普及しなくては意味がない」と心配するのは、お門違いではないか。
有識者が「5Gが普及するかどうか」という心配をしているが、そもそも、5Gの普及に向けて足を引っ張る施策を作ったのは総務省と有識者ではないのか。
日本で本格的に5Gを普及させたいのであれば、いますぐに、これまで展開してきた施策を辞め、5Gの普及を促進するようなガイドラインに改定すべきだ。

このままで、日本の5Gは世界に比べてさらに遅れることになるのではないか。
5G時代にもMVNOという存在を残し、MNOとの競争関係を作りたいのであれば、5Gスマホの普及を後押しする割引施策が必要なはずだ。有識者会議は、自らの過ちに気が付き、方針を展開する考えはあるのか。本当にこの人達に日本の通信行政の未来を語らせていいのか。改めて、有識者会議の行く末に頭が痛くなるのであった。

 

有識者会議ではキャリアにeSIM開放を迫る流れ━━グーグル・Project FiはプラスチックSIMカードにも書き込み可能

有識者会議では、MVNOにおけるeSIMの活用についても議論された。

現在、eSIMを提供するにはHLRやHSSといった加入者管理設備を持っていなくてはならず、日本ではIIJなど一部のMVNOがeSIMを提供できている。

遠隔でSIM情報を書き込む、リモートSIMプロビジョニング(RSP)という仕組みが必要だからだ。
有識者会議での雰囲気としては、eSIMによって気軽にSIMカードが発行できるようになるため犯罪防止のために本人確認はしっかりとすべきだが、キャリアには積極的にMVNOにeSIMの発行機能を提供すべきという結論になっていきそうな感があった。
確かにeSIMは便利だ。eSIMといえば、予めスマホやタブレットに埋め込まれたチップにSIMカード情報を埋め込み書き換えるイメージがある。確かにiPhoneやiPadのeSIMはそうした使い勝手となっている。

ここ1年で「さらに便利だ」と感じたのが、グーグルのMVNOである「Google Fi」のeSIMだ。

Pixelシリーズでは、プラスティックのカードなしにeSIMにGoogle Fiの情報が書き込める。

この際、「あ、やっぱり別のスマホで使いたい」というときには、一度、eSIMに書き込んでしまったので、Google Fiのカスタマーセンターに連絡してプラスティックのSIMカードを再発行してもらうものだと思っていた。しかし、サイトにはそうした記載は一切ない。試しに、eSIMを発行する前に使っていたプラスティックのSIMカードを端末に挿入し、Project Fiアプリから番号発行のメニューを選ぶと、なんとeSIMに書き込んだはずの電話番号情報はプラスティックのSIMカードに再度、書き込まれたのだった。つまり、eSIMは、物理的に埋め込まれたチップだけでなく、プラスティックのカードでも書き込みが可能だということだ。
確かに、IIJのeSIMを説明するサイトにはeSIMとは埋込み型のSIMカードもあれば、書き換え可能なSIMカードとして、プラスティックのカードでもいいという記載がある。
埋込み型とプラスティックのカード、それぞれを渡り歩いて使えるというのは確かに便利だ。

eSIM対応機種やサービスが増えてくると、MVNO市場もまた面白くなってきそうだ。


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