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ソフトバンクが死ぬ日


ソフトバンクが死ぬ日~孫正義氏、投資で大失敗。次のリーマン級危機が起きたら崩壊へ

鈴木傾城
2019年10月28日

ソフトバンク・グループの孫正義が、米企業ウィーワークへの投資の失敗で追い込まれている。「次のリーマンショック級の経済ショックが起きたらソフトバンクは死ぬ」とまで言われている。どういうことか?

株式公開という出口を見据えた壮大なババ抜き、負けたのは…

孫正義、投資で大失敗

最近、ソフトバンク・グループの孫正義が、オフィスシェアの企業「ウィーワーク(WeWork)」での投資の失敗で追い込まれている。
孫正義は今、ビジョン・ファンドという投資ファンドを立ち上げて、世界中のあちこちの企業に投資しているのだが、ウィーワークもその一環として1.1兆円も投資した企業だった。
孫正義はこのウィーワークを5兆円と評価していたのだが、本当にそう思っていたのか、市場へのポジショントークだったのかは分からない。

いずれにせよ、孫正義の今までのやり方は、「まだ未上場の企業に出資して上場したら売り逃げする」というものなので、ウィーワークもそのつもりで1.1兆円を投資してIPOに向けて準備していた。
ところが、ウィーワークはIPO前に「見てくれだけは立派」だが、中身は借金転がしのただの不動産屋で、借金まみれで潰れかけの企業であることが判明した。ただの不動産屋に5兆円の価値はない。またシェアオフィスには将来性もない。それが上場前にすべてバレてウィーワークは経営危機に陥り、孫正義の売り逃げの目論みはものの見事に失敗してしまった。それが今の状況だ。


ウィーワークが潰れたらソフトバンクも潰れる?

ひとまず、口先だけで経営能力のないアダム・ニューマン(※編注:WeWorkの共同創立者)をそのままにしておくわけにはいかないので、孫正義は約1,800億円もの退職金を払って創業者とその仲間を経営から放逐したのはいいが、1.1兆円も投資した孫正義はババをつかんだような状況になってしまった。
問題は、いくらウィーワークが無価値な会社であるとしても、孫正義は絶対にこの会社を潰すわけにはいかないということである。ウィーワークを潰したら、ビジョンファンドそのものが崩壊してしまうからだ。

ウィーワークはすでに資金がショートしているので、孫正義は追加で1兆円を再び出資せざるを得ない状況に陥ってしまった。


投資家たちはアダム・ニューマンの夢に賭けた?

ウィーワークというのは、カリスマ的な雰囲気を持つアダム・ニューマンという創業者が立ち上げた会社だ。
アダム・ニューマンは、「世界の意識を引き上げる」「我々が世界を変える」みたいなビジョンを大袈裟に語り、大風呂敷を広げながら投資家を引き込んで、借金の規模を膨らませながら会社の規模を大きくしていった。

その調達金は凄まじいものがあった。2014年には300億円、2015年には1,000億円、2016年には430億円、2017年には760億円と、次々と投資家からカネを引き出していたのである。
投資家は本当にウィーワークがそんなに価値があると思っていたのか。いや、彼らは財務諸表を見てウィーワークの簿価を算出したのではなく、アダム・ニューマンの勢いを見てカネを出資していただけだ。
アダム・ニューマンと一緒になって「ウィーワークはすごい価値がある」と世間を煽り、最終的には「IPOで売り逃げ」するつもりでそれを行っていた。つまり、IPO(株式公開)という出口を見据えた壮大なババ抜きゲームだったのである。そこに最後にやってきたのが、孫正義だった。


ウィーワークの目論見書はボロボロ

孫正義は、ヤフーやアリババでこの手法を成功させた経営者でもある。
そこでこの手法をより大規模にするために、ビジョン・ファンドという投資ファンドを立ち上げて、どんどん新しい会社を買っていった。ウィーワークもまたそうした企業のひとつとして孫正義は目を付けたのだった。
孫正義もまたウィーワークのIPOでがっぽりと儲けられると皮算用して出資しているので、ウィーワークの「実際」の企業価値など目もくれなかった。
しかし、ナスダックに上場するためには、ごまかしのない目論見書や決算書を提出しなければならない。
ウィーワークの目論見書はボロボロだった。


化けの皮が剥がれたアダム・ニューマン

さらに、アダム・ニューマンは自分個人の不動産をウィーワークに買わせて自分だけに利益を得たりするような背信行為を裏で行っていたり、スピリチュアルみたいなものにハマっている妻に経営や人事に口出しさせたり、自家用ジェット機で世界中を飛び回って酒とパーティーに明け暮れたりして遊び回っていた。
そうしたものがすべて発覚して、IPOは失敗し、ウィーワークは一気に経営危機に陥り、こんな会社に1.1兆円も払った孫正義が窮地に陥った。そして、ウィーワークを支えるためにさらに1兆円も突っ込んで、今度はソフトバンクの経営は大丈夫なのかと、投資家に疑念を抱かせる状態になっている。

 

ソフトバンクはまだ地獄の一丁目

孫正義は今まで数々の窮地をくぐり抜けてきた経営者なのだが、ここ最近はスプリントの買収の失敗や、ウーバーやスラックやアームの不振、さらにウィーワークでの泥沼の救済劇、その上に膨れ上がっていくソフトバンク・グループの有利子負債などでアラが目立つようになっている。
おまけに、懸念材料が他にも次々と沸いて出てきている。

「純利益1兆円のソフトバンクが法人税ゼロ」というからくりが不正なものであることを財務省が指摘していることだ。ソフトバンクは、グループ内で赤字を振り分けて「巨額の赤字が出ている」ことにして法人税を払ってこなかった。法の抜け穴をついて税金を払わないソフトバンクを見る目が世間的にも厳しくなってきている。
国民はみんな消費税を10%に引き上げられて無理やり政府に毟り取られているのに、ソフトバンクは巧みに法人税を逃れて税金を払わない。孫正義を見る世間の目は冷たいものになっていく。
アメリカでは、トランプ大統領が「中国企業はアメリカで上場させないようにしろ」「アメリカに上場している中国企業は上場廃止にしろ」「アメリカの投資家は中国に投資するな」と言い出しているのだが、そうなるとアリババなどは一気に時価総額を喪失する。

このアリババの実質的な支配者はソフトバンクなので、そうした話が進めば進むほどアリババと共にソフトバンクもまた窮地に落ちる。
ソフトバンクを取り巻く環境は「悪化」している。
ソフトバンクの環境が悪化して実際に投資先の企業の赤字や株価下落などによる含み損がソフトバンクの決算に反映されていくようになると、ソフトバンクの受難はここからが本格化していくことになる。
言って見れば、ソフトバンクはまだ地獄の一丁目に辿り着いたばかりである。


今の株式市場は割高に評価されている

ところで、現在の世界は米中新冷戦の真っ只中にある。
巨大な経済大国であるアメリカと中国が激しく互いに報復関税をかけ合って対立している。

中国の経済成長は鈍化し、状況は想像以上に悪化している。
グローバル経済は、「成長」に向かっているのではなく、「後退」に向かっているのである。
そうであれば、世界の株式の総本山であるアメリカの株式市場はそれを織り込んで「下がっていなければならない」のだが、下がるどころか上がっている。つまり、今の株式市場は実体経済と乖離して割高に評価されている
株式市場が割高かどうかを評価する指標で最も分かりやすいのはバフェット指数である。

バフェット指数というのは、稀代の投資家であるウォーレン・バフェットが指し示した指数なのだが、

「株式時価総額 ÷ 名目GDP × 100」で算出される数字だ。
バフェット指数は「株式時価総額と名目GDPは、本来であればだいたい一致する」という点を利用した指数である。

要するに実体経済(名目GDP)に対して株価は高いのか安いのかを評価しているものだ。
そのため、100%を超えてくるようであれば「株価は実体経済よりも高く評価されているので下落しても不思議ではない」という考え方ができるし、実体経済よりも株価が低いと「売られすぎ」という考え方もできる。
今はどうなのか。今のバフェット指数は140%台にある。つまり、株価は実体経済よりも高いということが分かる。
さらにシラーPEレシオ(CAPEレシオ)というものもある。通常のPERは現在の株価を1株あたりの純利益で割って計算するのだが、シラーPERは現在の株価を「過去10年間の1株あたり純利益の平均値」で割る。

それによって「長期的に見て現在の株価が割高か割安か」が分かる。

それを見ても、現在のアメリカの株式(S&P500)はシラーPEレシオで「ほぼ30ポイント」になっているので、やはり「割高」であると判断できる。15ポイントあたりがシラーPEレシオの心地良い数字ではあるが、30ポイントと言えば「ほぼ2倍」である。

 

大暴落で追い込まれるのは「借金をして株を買っている人」

もちろん、株価が高いからと言って「ただちに暴落する」とは誰にも言えない。
実体経済が停滞しており、株価が割高に評価されているのであれば、いずれは株価の下落が来るのは間違いないのだが、それは「いつ来るのか」「どれくらいの規模でくるのか」は誰にも分からないところである。

しかし、それは必ずやってくる。
実は、ソフトバンクを破産寸前にまで追い込むかもしれない最も大きな懸念がここにある。いつの時代にも「経済的ショック」によって追い込まれるのは、「借金をして株を買っている人間」である。
借金をして株を買うと株が下落して評価損が出た時、追証を求められることになる。追証が払えないと、損失覚悟で次々と株は売り払われる上に、足りない分を補填しなければならない。
借金をして株を買っている投資家は、株をじっと保有するということが許されない。そして、一番カネに困っている時にもっとカネが必要になる。さらに「安い時に仕込む」ということすらもできなくなるのである。

 

次の経済ショックでソフトバンクは死ぬ?

ソフトバンクはいまや投資企業である」とよく言われている。
そのソフトバンクの有利子負債を見て欲しい。約17兆円である。
孫正義は「ソフトバンクグループが保有する株式だけで26兆円の価値を持つ」と言うのだが、そうであれば保有する株価が35%以上の下落を見ると、保有する株式以上の有利子負債を抱える会社になるということでもある。
株式市場全体が暴落すると、ソフトバンクグループは一気に資金にショートをきたす危うい経営に追い込まれているのが今の状況だ。
「次のリーマンショック級の経済ショックが起きたらソフトバンクは死ぬ」と言われているのはそういうことでもある。


☞ 孫正義氏、WeWork問題で「ボロボロ、真っ赤っ赤の大赤字」

2019年11月07日
佐野正弘

 ソフトバンクグループは11月6日、2020年度3月期第2四半期の決算を発表した。売上高は前年同期と横ばいの4兆6517億円、営業損益は1555億円と、前期から一転して15年ぶりの営業赤字へと転落している。

 その理由は、前期まで利益拡大に貢献していたソフトバンク・ビジョン・ファンドによる、出資企業の企業価値が大きく落ち込んだため。

出資先であるUberなど上場した企業の評価損に加え、WeWorkが上場を目前にして問題が多発し、経営危機にまで陥ったことが大きく影響している。

 実際、WeWorkに関する損失は、ソフトバンクグループが47億ドル(約5100億円)、ソフトバンク・ビジョン・ファンド投資分が34億ドル(約4000億円)に達している。

そのため同社の代表取締役会長 兼 社長である孫正義氏は、同日に実施された決算会見の冒頭で、「ボロボロ、真っ赤っ赤の大赤字。まさに大嵐といった状況だ」と業績について語る。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先企業のうち37社が評価を高めた一方、22社が評価を落としており、結果1.2兆円の利益を出しているとのこと

 その一方で、孫氏は「2つの事実がある」とも説明。

1つ目は、アリババ・グループ・ホールディングの株価増などにより、株主価値が1.4兆円増えていること。

孫氏はソフトバンクグループが投資会社となって以降、株主価値を重要な指標としていることから、株主価値という視点で見ればソフトバンク・ビジョン・ファンドの損失が与える影響は「株主価値全体の1%程度」(孫氏)だとしている。

 そしてもう1つは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの累計投資の成果として利益を出していることだ。投資した企業のうち37社が企業価値を向上させ1.8兆円の利益を生み出した一方、22社が評価を落として6000億円の損失を出しており、結果としては1.2兆円の投資利益を出しているとのことだ。

 そのため孫氏は、「金額でいえば3対1で、むしろ価値を増やしている会社の方が大きい」と話し、世界のベンチャーキャピタルの平均より高いIRR(内部収益率)を出していると説明。投資ファンドとしては大きな成果を出していると強調した。


*WeWorkの再建は「時間が経てば解決」

 では、ソフトバンクグループは大きな損失を出す要因となったWeWorkに対して、なぜ新たな投資を実施し、再建の手助けをしたのか。その理由について孫氏は、「救済ではなく、投資した株式の価値が高すぎたことを反省し、株価をもう少し安く仕入れた形に洗い替えしたかった」ためと説明する。

追加投資額の抑制や、信用枠の対価として株式を取得することにより、持ち株比率は41.2%に上昇しトータルでの取得額も下げることができたとのこと

 孫氏によると、WeWorkには2020年4月に新たに1株あたり110ドルで15億ドル(約1600億円)の追加出資をする契約になっていたという。そこで今回の騒動を受け、これを2019年10月に前倒し、なおかつ1株あたり11.6ドルと、10分の1近い水準に下げるよう交渉。さらに信用枠を与える対価として17%の株式を追加取得するなどの交渉をしたことで、実質的な取得単価を下げるとともに、ソフトバンクグループの持ち株比率も12.8%から41.2%に上昇したという。

 しかし、WeWorkに関する一連の問題は、創業者であるアダム・ニューマン氏の独善的な企業統治が大きく影響していた。そこでソフトバンクグループは、米通信子会社Sprintの再建にも貢献したマルセロ・クラウレ氏を同社の会長にするとともに、取締役10人のうち、5人をソフトバンクグループとソフトバンク・ビジョン・ファンドで押さえることによって、企業統治を改善するとともに再建を進めるとしている。


WeWorkの赤字要因となっていた新規のビル開発を止めることで、今後確実に利益が出せる体制ができるという

 その具体的な策は、オフィスビルの数を増やすのを一時的に止めることだという。

WeWorkはビル数を急速に増やしたことで、その4割が赤字となるなど先行投資がかさんでいた一方、ビル建設後13カ月以上経つと高い稼働率を実現し、利益が出ることが見えたという。

 そこで、ビルの新規開発を一時的に止め、既存のビル開発と運営に専念して経費を抑えることで、その後は時間が経てば利益が拡大し、業績を改善できると説明。

WeWorkに関して「プロダクトが悪いという批判はほとんど聞こえてこない」(孫氏)と評価しており、その再建にも自信を示した。


 ただし、一連の問題で投資会社としてのソフトバンクグループの信頼が揺らいだことは確かだ。

孫氏は、アダム・ニューマン氏に対する評価について「彼のいい部分を見過ぎてしまった。マイナス面もたくさんあったと思うが、多くは目をつぶってしまった」と反省の弁を述べるとともに、ソフトバンクグループとしての投資基準を改めて説明。「投資先はあくまで独立採算。彼らが赤字になったからといって休止するような投資はしない」と話し、WeWorkのような措置は今後実施しないとしている。
 さらに孫氏は、約20年前のインターネットバブルで大きな損失を出した過去を振り返り、「当時も現在と同じように『ビジネスモデルが成り立っていない会社を高値掴みしている』と言われたが、今や世界トップ10のうち7社がインターネット企業で、トラフィックも伸び続けている」と説明。
 それだけに、AI関連企業の価値も今後、インターネット企業と同様に大きく成長すると話し、「AI革命はまだ始まったばかり。体制に異常なし」と、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの2号ファンド設立や、さらなるAI関連企業への投資に一層の意欲を見せた。


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