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何も説明しなかったNHK〜5chが災害時の公共ポータル機関に


なぜ直前の報道でも東北は無視された? 薄っぺらすぎる災害報道
台風19号の猛威と人災

今回、福島や宮城で一人暮らしの高齢者が逃げ遅れて犠牲になったケースが多い。

どういう事故死だったのか、中身を厳密に検証する必要があるだろう。
本宮市の自宅内での溺死など、報道されている幾つかの例を見ると、1つの共通したパターンというか、仮説のようなものが浮かび上がる。

中間項を飛ばして結論をから先に言うと、これは政府の防災・危機管理当局の過失であり、テレビ報道の不作為の責任が問われる問題だ。

具体的に言えば、危険を正しく知らせる任務と立場の者に正しい危機感と緊張感がなく、正確な情報が適切な地域と時刻に伝わらなかったために引き起こされた人災である。
もっと直截に言えば、政府(国交省・内閣府・内閣官房)とマスコミの人間が、12日夜にかけて、首都圏の被害にばかり気を取られ、北関東・東北の差し迫った重大危機への監視と対処ができず、その方面で深夜未明に同時多発する水害の事態を軽視し放置していた不覚が大きい。

東北への警戒と警告が甘すぎた

この問題を証拠づけるため、私は11日に気象庁が発表した資料を取り上げ、東北の雨量予測が低すぎた点を指摘した。

気象庁の担当者も、国交省河川部の担当者も、内閣官房も、テレビ局(NHK)の人間も、東京周辺で特に深刻な被害が起きなかったから、この後に台風が北上する地域でも大した被害にはならないだろうと、そう観念してしまい、注意が杜撰になり、真剣に雨量と河川状況をチェックして警告を発する態勢を解いたのだ。
それは、ちょうど人が睡眠する時間帯と同期した進行だった。
東北に最も深刻な人命被害が集中したことが判明したのは、13日午後を過ぎてからであり、この災害を2日間テレビで見ていた者の感覚からすれば、いわば意外な展開と結果だった。

本宮市のある一人暮らしの高齢者被害女性のケースで、娘が、母はいつも夕食後は8時頃までテレビを見て、早めに寝る生活をしていたという証言があった。彼女はどうして、12日夜、いつものように早く就寝したのだろう。

 

直前の報道でも東北にフォーカスされなかった

それは、12日の昼から夜のテレビ放送が、まるで警戒した雰囲気がなく、NHKの報道も首都圏の話題ばかりで、ありきたりのマンネリトークとルーティンフレーズばかりで埋められていたからだ。
「早めの避難を心がけて下さい」「ネット上に情報サイトがありますから確認して下さい」「スマホでも簡単に見れますから」。北関東・東北に住む高齢者にとって、自分に関わるメッセージはシンプルにそれだけだった。

テレビに流れるのは、城山ダムの緊急放流とか、多摩川の奔流の絵とか、横浜港の現在の様子とか、関東整備局(さいたま新都心)からの中継とかだった。中身は空っぽで、独自に取材した価値ある報道は皆無だった。
福島と宮城に迫った破局を伝える情報は何もなかった。

緊急番組のスタジオの専門家は、国交省の河川情報サイトを画面でいじくって、紫色に変わった河川の氾濫危険情報を軽く見せていたが、東北はフォーカスされなかった。丸森町の雨量が600ミリを超えるという予報もなかった。


首都圏を過ぎれば平常運転

12日夜の民放テレビの番組編成を再確認してみると、どこも普通の土曜夜の番組を流している。

これを見たら、本宮市で犠牲になった高齢被害者でなくても、今回は難なく過ぎて夜が明けるだろうと思うのは無理はない。北関東で犠牲になった例で、深夜に車で避難を始め、洪水で車ごと流されて溺死という報告が少なくない。

普通にテレビを見ていたら、民放はいつものお笑いタレントが出て漫談しているし、NHKは「早めに避難して下さい」とアリバイトーク(政府からの義務履行の)だけだから、視聴者は、今回は大丈夫だろうと思うだろう。

池田伸子も、中山果奈も、政府(内閣官房・国交省)が用意した簡単なメモを読み上げていただけだ。

メモは菅義偉が差配したもので、要するに、国民に対しては何も知らせず、「早めの避難を」と「サイトの情報をスマホで確認しろ」と、それだけ言っとけということだ。
あとは自衛隊がヘリで行くから、救助現場をきっちり上から撮って流せよと、そういう命令だったのだろう。

菅義偉らしい。


薄っぺらすぎる災害報道

今回だけではないけれど、安倍政権になって以降、最近の数年間、テレビ(NHK)の災害報道が本当に中身がない。薄っぺらというよりヌルで、小学生低学年向けの「災害報道」をだらだらと流して時間を潰し、災害報道しましたとアリバイを埋めている。
北関東・東北の人々にとって重要なのは、付近の河川の状況と今後の雨量とその影響だっただろう。

避難所開設状況を12日午後に流すことだっただろう。
首都圏に住む私にとっては、12日に知りたかったのは、荒川・利根川と多摩川の現状のアップデートだった。
実際は、これらの観測情報は、5ch(2ch)のスレが最も濃い内容を、フェイク含めて虚実織り交ぜ、5chらしく右翼に都合のよいプロパガンダに味付けながら、素早く興味深く発信していたのである。

国交省の河川情報をサイトを見ろと言っても、そこには解説はなく、網羅的概括的な観察はない。変動する生データが並んでいるだけだ。それらは複数の人間によって監視され、分析され、議論されなければ意味ある情報にならない。

 

マスコミが報道しない台風災害のキーワード

武蔵小杉のタワマンの下水問題や二子玉川の堤防未設の問題も、早くから5chで喋々されていた。

速報性と集合知があった。
荒川放水路、岩淵水門、彩湖、首都圏外郭放水路、八ッ場ダム、これらは、首都圏に住む者にとって、今回の台風災害のキーワードである。本当ならテレビで誰かが論じ、首都圏の水害対策の歴史と構造が説明されないといけないはずだが、それを5chの右翼が肩代わりしていた。

右翼系の官僚や学者が匿名で書き込んでいた可能性がある。

テレビでは、試験湛水を始めていた八ッ場ダムが、いきなり本番に投入されて一夜で満杯に水を溜め、下流の埼玉・東京を洪水から救った事実は紹介されない。

政府は隠している。これには理由があるが、ここでは書かず、稿を別にしよう。
5chの右翼はここぞばかり民主党政権を叩き、左翼は建設再開を決めたのは野田政権だと反論し、5chらしい不毛な喧嘩を続けていた。東北の被災者を尻目に。
大事なことは、そのような問題ではない。

台風災害の概況と防災で機能する土木ハードウェアがマスコミに出ないことだ。
NHKに登場した関東整備局河川部の担当者は、現状についても、対策についても、今後についても、何も具体的な言葉を発しなかった。黙っていた。

責任があるから迂闊なことは言えないという立場もあるのだろうが、官僚は重要なことは絶対に国民に教えないのである。
11日から13日にかけて、この国は国交省(気象庁と河川部)が権力操縦する非常環境になっていて、彼らはすべての情報を握っていた。すべてのデータは国交技官(気象庁と河川部)に入り、内閣官房(危機管理)に報告されていた。

安倍晋三が12日に平然と「終日公邸」のぐうたらができたのも、多摩川と荒川・利根川は決壊せず大丈夫だという情報(確信)が入っていたからだろう。
官僚と官邸は、大事な技術的情報を隠し、要らない無駄な情報をNHKに放送させていた。

安倍晋三が「終日公邸」でぐうたら三昧だから、テレビの連中も気楽になり、民放は通常編成で番組を流していたのである。5chの書き込みは圧倒的に東京の人間が多いため、関心と議論は多摩川と荒川が焦点となり、北関東や東北の河川には目も向けない。

 
『5ちゃんねる』が災害情報の公共ポータルに

『5ch』が災害情報の公共ポータルになっていた。その真実に気づかされて戦慄を覚えた。
実質的に、NHKと5chはすでに同格で、同価値で、2つが災害時の情報発信媒体として併用されている。
5chは、事実上、公的な情報機関なのだ。国民は5chを見るしかないのだ。NHKを見ても何も説明されない。

アリバイ目的の(責任逃れの既成事実作りの)マンネリトークが反復されるだけで、村の防災無線と同じ「避難して下さい」の無機質な音声が、プリエンプティブに一方的に連呼されるだけだ。

それに従っても従わなくても、住民は自己責任でしかないのだ。
今、現実の問題として、5chが災害情報の責任を負う(きわめて無責任で新自由主義的に酷薄でがさつな)公共機関の如くなっている。


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