日本人の9割がわかっていない「資本」の本質


「バランス」ではなく「ループ」で一気に改善


冨田 和成 : ZUU代表取締役
2019年10月05日

格差の増大や、労働者の搾取、いつバブルが弾けるかわからない不確実性など、多くの問題を指摘されている「資本主義経済」というシステム。しかし、その本質を見極めさえすれば、途端に個人が生きていくうえでの希望が生まれると説くのが、元・野村證券のトップセールスであり、マザーズ上場のフィンテック企業を経営する冨田和成氏。近著「資本主義ハック 新しい経済の力を生き方に取り入れる30の視点」から、先の見えない経済世界を生き抜くためのヒントを紹介する。

 

「資本」が何かを知らないと、資本主義社会は生き抜けない

あなたは、「資本主義社会で生きることは、楽しい」と思えたことはあるだろうか?

・会社や仕事に縛られながら、このまま働いていてもいい展望が見えない
・仕事のタスクはあるのに、自分の目標がない
・まさに「忙殺」という言葉のごとく、忙しさに殺されている気がする

現代の日本で生きるうえで、こうした感覚を抱いている人も多いと思う。自分の人生であるはずなのに、何かに支配されているような気がして、自分の人生を生きられている気がしない。そんな気持ちのまま生活をしていくのは、とても大変なことだ。
だが、ひとたびコツさえ知ってしまえば、自分の人生のコントロールを取り戻すことができる。

そのカギとなるのが「資本」という存在である。
私たちが生きている社会は「“資本”主義社会」、つまり“資本”が第一主義な社会だということは学校で習うのに、「それでは“資本”とはなんですか?」と聞くと答えに詰まるビジネスマンが意外と多い。
資本によって世の中が、あるいは自分さえその一部として動かされているのに、その正体がわからないのであれば、不安になるのも当然だ。
逆にいえば、資本の性質と扱い方を知ってしまえば、自分がいま何をすべきか、そしてどこに向かっていくべきかがわかる。この現実世界の見え方さえ一変するだろう。

それではいったい、「資本」とはなんだろうか。
教科書的にいえば、資本とは「生産手段、あるいはその元手となるもの」である。

別の言い方をすれば、「価値を生む仕組み」のことだ。
今の世界は、日々新たなサービスや商品が溢れ出ているが、これらを生み出すものはすべて資本だ。
町にある「工場」は資本である。

物理的に新しい商品を作り出しているだろう。そしてそれを会社という存在を通して所有するための「株」もまた、資本の1つだ。株を持っているということは、その会社の資本の一部をそっくりそのまま持っているということに等しい。

例えば、ある「工場」の1000分の1を、「株」というもので代替的に所有することができる。
何より、あなた自身もまた資本の1つだ。

荷物を運ぶ、書類を作る、誰かに知識を教えるといった仕事を通して、他の人や社会に対して価値を「生産」している。この資本が主軸となってお互いに自由に組み合わさり、さまざまな新しい商品が生み出され続けることに重きを置いた社会を、資本主義社会という。

「自分も資本」であることがわかると戦略が見えてくる

 この社会で最も自由に、生き生きとして生活できるのは「成長する人」である。

というのも、それぞれの人に割り振られた「資本」という役割は、価値を生み続け、成長をし続けることを前提としているからだ。その役割を果たすほどに、社会の恩恵を受けることができる。

わかりやすくいえば、お金と時間を手に入れ、人生における選択肢や行動範囲が格段に広がるということだ。

そして何より面白いところが、自分自身という「人的資本」だけではなく、株や債券といった「金融資本」、不動産や車などの「固定資本」、会社組織やビジネスアイデアといった「事業資本」まで、ありとあらゆる資本をあなたのアイデアで組み合わせ、一人では到底なしえないような金銭や幸福を実現できるという点なのだ。
こう考えてみると、「この先一生働き続けないといけないのか」という不安や「何をすればいいのかわからない」といった迷いも消えるのではないだろうか。

今、この日本で、この世界で自由に生きたいのであれば、働き続けたり、お金を貯め続けたりするのではなく、「資本」を増やすことこそ重要なのだ。

あなたには「やりたいけれど、なかなか手をつけられていない」ということはないだろうか。

例えば、次のようなことだ。

・資格の勉強をしたい、英語の勉強をしに海外留学したい
・学生時代にやっていた楽器をまた練習・演奏したい
・子どもを連れて世界一周旅行をしてみたい

しかし大抵その障害になっているのは、お金と時間の問題である。

この2つはつねに連動している。まず時間の問題について考えてみたい。
経団連の調査によれば、現代日本での給与所得者の1日の平均労働時間は8.3時間であるらしい。

一方で転職情報サイトのオープンワークの調査によると、サラリーマンの平均残業時間は月28時間であるようだ。
こう見ると一時期より労働時間は短くなったようだが、それは平均の話であり、もしかするとあなたも「稼いだお金を使う時間が少ない」という悩みすら持っているかもしれない。
近年では、ワークライフバランスという言葉がある。分解すれば、ワークとは仕事であり、お金を稼ぐこと。

ライフとは、生きることであり、時間を使うことである。

この2つを天秤にかけたとき、「つい働きすぎてしまいがちだから、プライベートの時間も増やせるようにしよう」というのが世間一般でのワークライフバランスの議論だ。
しかしこの言葉が提唱されてからしばらく経つが、いまだ実現できる気配がない。

なぜなら、「ワークとライフ」「お金と時間」をトレードオフの関係で見ている人がほとんどだからだ。
まさしく天秤のように、あちらを立てればこちらが立たず。働かなければお金が稼げず、ライフのほうも成り立たなくなる。結局、残業しなければならない状態に戻る。実はここで重要なのが、やはり資本である。

お金・時間・資本をループさせると一気に改善されていく

例えば、「食洗機」は資本の1つだ。汚れた皿を入れると、きれいな皿にしてくれるという価値を生み出し続ける。

パートに出ている主婦(主夫)がいるとしよう。毎日の皿洗いに30分かかっていたところ、奮発して10万円の食洗機という資本に投資をした。すると、30分長くパートに出ることができ、3カ月もすればその10万円分を多く稼ぐことができる。それ以降、食洗機が壊れるまでの数年間は、それまで食器洗いに費やしていた時間を完全に空き時間にできる。

食洗機を買うまでは、この30分はどこにも存在しなかった時間である。
資本とは、価値を生み出し続ける存在だと言った。

お金や時間を資本という形に変えて増やしていくと、それによってさらに多くのお金が手に入る。

そしてそのお金を使って時間を買うことができる。
お金と時間の2者の「バランス」で考えるとカツカツだったところが、そこに資本を組み合わせて、3者の「ループ」で考えることで一気に状況が改善されていく。これが資本主義社会における基本的な思考である。
サラリーマンとして働くにせよ、起業して会社を大きくするにせよ、やることは資本の蓄積である。

そうして知恵を絞り、加速度的に資本を増やした先に、ようやく夢の達成ができるようになる。
資本主義社会において実現できる目標は、ほぼ思いつく限りすべてだ。

何を人生のゴールとするか見極めること

「生活にゆとりがある状態でネットフリックス三昧の毎日を実現する」のでもいい。

「もっと子どもの成長に寄り添える生活にしたい」というのでもいい。あるいはとくに思いつくものがなければ、「10年で1億円稼ぐ」というのでもまったく問題ない。

資本主義社会で生きるうえで大切なのは、何を人生のゴールとするか見極めることだ。

これが明確になれば、どのくらいのスピードでお金と時間を資本に投資すればいいか見えてくる。
自分はどれくらいの稼ぎができる資本があればいいのか? 株はどれくらいのリターンがあれば生活に余裕ができるか? 車や空き部屋などを有効利用する術はないか?……などなど。
そして小さな目標を立てコツコツとクリアしていくことで、どんどんその「やり込み」にハマっていく。
その人生のやりこみ度を測るもっともシンプルな指標が「資本」であり、「お金」という存在なのだ。


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