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水の中で動く「ドローン」が潜かにキテる理由

水中調査にドローンを活用する機運が高まる

中野 大樹 : 東洋経済 記者 

2019年10月08日

小型無人飛行物体「ドローン」。ホビー用から空撮、インフラ点検など少しずつ社会に広がりつつある。

配送に活用する取り組みも始まっており、2022年には世界で200億ドル超えの巨大市場となるとの予測もある。

さらに、空だけでなく、水上や水中、地上などを無人で移動するさまざまなドローンも登場。その中でも、水中調査にドローンを活用する機運が高まっている。


高額すぎる無人探査機の水中調査

もともと水中調査は、ダイバーが実際に潜って行うか、遠隔操作型無人探査機(ROV)や自律型無人潜水機(AUV)と呼ばれる大型で高価な無人探査機で行われてきた。

しかし、ダイバーは高齢化などから人材確保が難しく、安全上の制約が多い。潜れる深さや時間にも制限がある。
一方、大型の無人探査機は本体が高額なのに加え、運用する大型船や管理する人材が必要で、1回の調査に数百万円から数千万円の費用がかかることも少なくない。
こうした不自由が多い水中調査に、利便性向上と価格破壊をもたらしているのが水中ドローンだ。

水中ドローンの明確な定義はないが、人力で運べる大きさ・重さで、遠隔操作が可能な水中探査機を指すことが多い。
2017年、中国企業のPower Visionがコンシューマー向けの水中ドローン「Power Ray」を投入。

その後、Chasing-Innovation Technology(潜行科技)の「GLADIUS」など、中国勢を中心に製品ラインナップが充実してきた。
空のドローンと同様、まずはコンシューマー向け水中ドローンが発展。それらを業務用の水中調査に使用する動きが出ている。

コンシューマー向け水中ドローンは20万円程度と、ROVなどに比べれば本体価格は圧倒的に安く、操縦も容易。本格的な水中調査は難しいにしても、事前調査や簡易的な点検ならば十分に対応できる。
実際、GLADIUSは日本において海上保安庁で船底の点検や、養殖用のいけすの点検に導入された。

GLADIUSの国内代理店スペースワンは、ダムの点検や配管内部の点検に売り込みをかけているほか、洞窟内の調査の実験も行うなど、用途拡大に余念がない。

こうした安価で手軽な手段が登場したことで、これまでなかった水中ドローンの需要が掘り起こされてきている。
だが、コンシューマー向け水中ドローンでは安定性や潜れる深さ、動きの制約が大きく、本格的な商業利用のハードルはまだまだ高い。
現在、コンシューマー向け水中ドローンが潜れるのは水深数十メートル以内で、横の動きにも対応していないモデルが大半。

本格的な水中調査ニーズに対応するためには、より深く潜れる水中ドローンが必要だ。

もともと水中ロボットの業界では、小型の探査機で深く潜るのは難しいとされてきた。操作のためのケーブルが長くなると軽い機体では流されてしまうからだ。


産業用水中ドローンに勝機

2014年に設立したFullDepth(東京都台東区)は、十分な強度と流されにくい細さを両立したケーブルを採用することで水深300メートルまで潜行可能なモデルを開発した。今年4月にVCなどから3.4億円の資金調達をし、年内に量産体制を整える。現状はレンタルのみだが、販売にも乗り出す。
さらに水深1000メートルまで潜れるモデルも開発中。

FullDepthの伊藤昌平社長は「コンシューマー向けドローンとROVの中間、 産業用の水中ドローンの市場を作っていきたい」と語る。

ほかにもアメリカのBlue Roboticsがすでにコンシューマー向けよりも大型の製品を投入しており、産業用向け水中ドローンの競争も激しくなっている。
水中は空に比べて環境が厳しい。バッテリーに水が触れないようにしつつ、長時間作業のためには簡単に交換できるようにしなければならない。

バッテリーのムダ使いを避けるために、水の中で浮かないが沈まない絶妙な重さに調整することも必要だ。

こうした難しさがあるからこそ、産業向け技術で先行すれば日本メーカーにも勝機はある。


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