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私がIT担当相になったら手掛ける3つの事


2019.09.20

 第4次安倍改造内閣でIT担当大臣として初入閣を果たした竹中直一衆院議員ですが、78歳という年齢もさることながら、ITとは無縁ともいえるその経歴も不安視される一因となっています。

今回は世界的エンジニアでもある中島聡さんが、国の未来よりも自民党内の事情を優先したこの人事を批判するとともに、仮に自分がIT担当相となった場合に手掛ける3つの政策を記しています。

日本のIT戦略

 先週、安倍政権の組閣が発表されましたが、経済の要であるIT担当大臣に78歳の竹本直一氏が選ばれたことを問題視する声が上がっています(「78歳竹本氏初入閣、IT分野に不安の声も実績強調」)。

年齢も問題ですが、京大法学部から建設省に入所というITと程遠い経歴を持つ人物をIT担当大臣に選んでいる点で、国の未来よりも自民党内の事情の方が優先させたことが明確な人事です。
Marc Andreessenが2011年に「Why Software Is Eating The World」が指摘した通りの世の中になっている今、IT担当大臣には、ITベンチャーを経営したことのある民間人を採用すべきなのは当然のことです。
そこで「もし私がIT担当大臣だったら何をするか」を考えてみたいと思います。大枠で言えば、以下の3点に尽きます。

  1. 「国家vs.グローバルIT企業」戦争の戦い方
  2. 企業の新陳代謝の加速
  3. STEM教育

まず第一に、GAFAに代表される外資系グローバル企業が、その大きさを利用して中小ベンチャー企業のチャンスを奪っていないかという、独禁法的な観点からの規制および監視を厳しくします。
現在、グローバル企業がM&A(買収や合併)をする際には、米国・EU・中国政府が独禁法の観点から厳しく審査し、場合によってはM&A阻止に走りますが、世界第3位のGNPを持つ日本政府もそのプロセスに絡むべきです。
さらに、実際のビジネスにおいても、独占的・寡占的な立場を利用した不当な行為を行なっていないかをしっかりと監視し、不当な行為には厳罰を与える強い態度が必要です。
グローバル企業対策としてもう一つ大切なことは、それら外資系グローバル企業からの税金の徴収です。

これに関しては、EUが先行しているので、彼らと協力し、「グローバル企業と言えども、日本で稼いだ分は日本で税金を支払ってもら」仕組み(税制)をしっかりと作ることが大切です。
また、忘れていけないのは、プライバシーの問題です。

特にFacebookとGoogleは、大量に集めた個人情報をベースに商売をしている会社であり、これに関して、国家は「国民のプライバシーを守る」という観点と「健全なメディア環境を維持する」という両面から、彼らの行動をしっかりと監視する必要があります。
一方、国内に目を向けると、国際競争力を失ったゾンビ企業に優秀な人材がしがみついていることが大きな問題だと考えています。

そのためには、「競争力を失った企業にはさっさと市場から消えてもらう」「人材の流通を促し、ベンチャー企業が優秀な人を採用しやすくする」ことが大切だと考えます。
また、小泉改革以来生じてしまった「大学を卒業した時に正社員の職を得ることが出来た人(正社員)とそうでない人(派遣社員・フリーター)」という社会の二重構造にもメスを入れる必要があります。その意味でも、雇用規制の撤廃は必須だと私は考えます。

つまり、「正社員であろうと、会社の都合でいつでも誰でも解雇できる」ように法律を改正することにより、正規雇用と非正規雇用の壁を撤廃するのです。

この改革に関しては、(正社員で構成されている)労働組合が猛反対をするでしょうから、簡単ではないと思いますが、これをしない限りは、日本企業の競争力は落ちるばかりです。

もう一つ大切なことは、官民の癒着を断ち切るために、天下りの禁止を徹底する上に、監督官庁の元官僚を役員や顧問として抱える企業が、国の事業の競争入札には参加できないような仕組みを作ることが必要です。

しかし、現在は法律を書いているのが官僚なので、どんな法律も中抜きにされてしまいます。

そこで、今後の法律に関しては、全て国会議員が民間の法律の専門家を雇って法律を書かせる「議員立法」に切り替える必要があると思います。
国の将来に関して言えば、もっとも大切なことは教育なので、ここでも大きな改革が必要だと思います。

プログラミング教育は悪くないと思いますが、算数・数学の授業を減らしてプログラミング教育をしても意味がないので、まずは全体のバランスとして「理数系の授業を増やす」ところから始めなければならないし、高校に入ってから「文系・理系」に別れるという悪い慣習も(何らかの方法で)撤廃すべきだと思います。
特にこれから単純な頭脳労働までもが機械に置き換えられる世界では、全ての学科で優秀な成績を収めることが出来る優等生よりも、一つのことに熱い情熱を持っていたり、優れたクリエイティビティを持つ人が重要なので、そんな才能を持つ子供達が、これまでのような受験勉強に押しつぶされるに伸び伸びと好きなことに時間を費やすことが出来る教育環境を作ることが大切だし、そんな子供達たちの価値を正しく評価し、大学でさらに伸ばすようなシステムを作ることが大切です。

また、米国と比べて「ぬるま湯」としか言いようのない大学の形も大きく変え、今のように「入学するのは難しいけれども卒業するのは簡単」な体制から、「思いっきり勉強しないと卒業できない」体制に変えるべきだと思います。


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