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出世欲アジア最下位。日本から元気を奪った「かくれ富裕層」たち

2019.09.06
MicrosoftでWindows95の設計に携わり、現在は米シアトル等世界中で活躍する世界的エンジニアの中島聡さん。中島さんは、アジア14カ国中で出世意欲が最下位になった日本の現状について、格差を固定化する原因には日本人の国民性があるのでは、と指摘されています。さらに、日本政府の「AI戦略」には効果がないと、海外事例と比較しつつ述べられています。

 

日本は出世意欲が最低、断トツで自己研鑽していない国に

 日本が、「上昇志向」「自己研鑽」「起業・独立志向」において、アジア14カ国の中でもっとも低い、という調査結果です。この記事は、「なぜそんな状況にあるのか」にまでは踏み込んでいませんが、そこに関しては、成毛眞氏の Facebook でのコメントがとても鋭い指摘をしているので紹介します。

パーソル総合研究所「APACの就業実態・成長意識調査(2019年)」

 

成毛 眞    8月30日 8:44 ·
まあ、そりゃそうだわなあ。日本はアメリカ・ヨーロッパ・中国・アジア(日本以外全部だw)に比べて、会社や社会で大出世した人、株や事業で超リッチになった人、芸能系アーティスト系セレブ、先祖代々のスーパーお金持ち、医師弁護士などの高級士業など、あらゆる所得アッパーサイドの人たちは生活を絶対に晒さない。SNSで晒さないどころか、普通の会食や近所付き合いでも、日本に住む限り隠し通すはずだ。

下手に晒すと社内、取引先、同級生、友人、ご近所からとんでもない嫉妬を受けるし、有名人なら意味もなく週刊誌メディアなどに狙われる。

例にあげて申し訳ないが、桑田圭佑さんの印税を想像すると途方も無いセレブなのだが自宅どころか、どのレストランがご贔屓なのかも誰も知らない。それがアメリカのアーティストならばむしろ大邸宅を披露するだろう。

ジニ係数を見る限り日本には大成功者・大金持ちは最低でも人口の1割はいるのだ。

だが日本では彼らは実像を絶対に見せない。

それゆえに普通のサラリーマンも学生も成功者の実生活が見えないのだから、出世しても意味ないと考えても仕方がない。結果的に所得分断が継続する。

資産家家庭の子どもたちは、たとえバカでもおカネの効果を知り尽くしているから、なにがなんでも出世しようとするはずなのだ。ともあれこれは直らない。知り合いで一般人よりリッチな生活をしていることをSNSで晒しそうになった人に対してボクは注意している。嫉妬心にかられた敵を作るだけのことだと。ボクももちろんたまにはフレンチレストランに行くが写真は載せない。空港でもお約束のビジネスクラスラウンジのカレーまでだ。基本的にはB級昼飯料理しかSNSには載せない。みんな日本の活力がどうなろうと、自分が日本社会で生きていけなくなることが怖いのだ。ロールモデルがない唯一の国かもしれぬ



 要約すると、嫉妬しやすい国民性だから、成功した人がロールモデルとして表に出てこない、という話。
米国では、そもそも慈善事業は、税金ではなく、個人の寄付によって成り立っているため、お金持ちが大口の寄付をするのは当たり前だし、それも記名式(誰がいくら寄付したのかが公開される)が一般的です。
私自身も、地元の Seattle Symphony や Children’s Hospital に毎年のように寄付をしているし、寄付集めのイベントのために自宅を提供して音楽会を開いたこともあります。
Roger Federer とテニスをすることが出来たのも、Roger Federar Foundation に寄付をしたからです。
そんな活動をしていれば、自然とその地域では誰がお金持ちか、どんな家に住んでいるかを知られることになりますが、それもごく自然の話で、社会の反応も、大半は「自分もいつかは成功して、そんな生活がしたい」というポジティブなものです。
文化の違いと言ってしまえばそれまでですが、それが結果として、日本人の上昇志向にマイナスの影響を与えているというのは大きな問題だと思います。

日本の「AI人材教育」に意味がないワケ

「AI エンジニア」の給料が高騰しているという話です。

この記事で紹介されている Indeed.com のデータによると、シリコンバレーのソフトウェア・エンジニアの平均給与は $134,135 (約1420万円)ですが、AI エンジニアの場合は $169,930(約 1800 万円) だそうです。ちなみに、この記事で紹介されている「AI エンジニア」とは、単に AI 関係のプログラムが書けるだけでなく、しっかりとした科学知識を持った、博士号や修士号を持ったエンジニアのことで、New York Times によれば世界に1万人しかいないそうです(Element AI によれば2万2千人)。

AI 教育に関しては、カーネギー・メロン、MIT、スタンフォード、University of California、University of Washington がトップ5の教育機関として紹介されています。
結局のところは、「AI エンジニア」を育てるには、高等教育を充実させるしかないのです。
日本政府は文系の学生にもAIの初等教育を受けさせるという「AI戦略」を立てたそうですが(参照:政府「AI戦略」を発表 、新たなAI人材教育を業界はどう見る!? ーすべての高校生・大学生がAIの基礎を習得へ)、行列や統計の勉強をしていない学生に「AIプログラミング」だけを教えても意味はないと思います。
そんな表面的なアプローチよりも、高校での行列や統計の授業を充実させる数学が優秀な学生を進学しやすくする、優秀な理系の学生には返済不要な奨学金を与える、などのアプローチの方が私は効果的だと思います。


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