医師に運動を勧められても「何もしない」人が多い理由
健康診断の結果が悪かったときなどに医師から「運動しましょう」と勧められても、なかなか一歩が踏み出せない人が多い理由と、そんな場合にどんな運動をすればいいのか?
健康診断などの結果を見て、こうした言葉を医師からかけられることが多い。
運動を始められない理由は…
厚生労働省が2016年に発表した「国民健康・栄養調査」によると、20〜69歳の男女で日頃から運動習慣がある人は21%しかいない。日常生活が便利になって体を使う仕事や作業が減り、その上、慢性的な運動不足ときたら、急に「運動しなさい」と言われても、できる人は少ないのだろう。 「私のところへも、『医師から何度も運動しなさいと言われたので…』と、ようやく重い腰を上げて、勇気を振り絞って訪ねて来る方がたくさんいます。しかも、『これ以上、放っておくと本当にひどい病気になりますよ!』と、半ば脅されるようにしてやってくる人もいます」と語るのは、アスリートだけでなく一般人の生活習慣病対策も指導するフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんだ。
医師に運動するよう勧められてもなぜ、なかなか一歩を踏み出せないのだろうか。●運動しろと言われても、何をすればいいのか分からなかった
●運動すると痛くなる部分がある
●そもそも、あまり運動が好きではない
運動指導には医師の側にも問題があった
医師から運動を勧められても何をすればいいのか分からない、と思う人が多いのは仕方がないのかもしれない。運動を勧めた医師本人に、個人に合わせた運動メニューを考案してもらったり、それを指導してもらったりする機会は少ないのが現状だ。 「具体的なトレーニングのプログラムを考え、指導するのは、私たちフィジカルトレーナーの役割です。運動すると体が痛くなる方には、痛くならないようなメニューを考えます。また、運動が苦手だったり、あまり好きではないという方にも、やり方を工夫して指導します」(中野さん)
同書を医学的な観点から監修した、生活習慣病の運動療法に詳しい慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センターの田畑尚吾さんはこう話す。
「糖尿病や心血管疾患の予防、肥満の解消、それに筋肉や関節、骨の強化などによるロコモティブシンドローム予防など、運動療法には多くの効果が期待できます。ただ、運動療法の実施について問題を感じている医師がいることも確かです」(田畑さん)
医師の側から見た運動療法の実施の問題点とはなんだろうか。2015年の調査では、運動療法指導を行うにあたっての問題点として、265人の糖尿病専門医が以下のような項目を挙げている。
●診療報酬に反映しない(58.1%)
●適切な運動指導者がいない(51.3%)
●適切な運動指導ガイドラインがない(46.0%)
(括弧内は回答した糖尿病専門医の割合。出典:糖尿病 2015; 58(8): 568-575)
運動を先送りしがちな人が今すぐやるべきこと
すでに糖尿病などにかかってしまった人ではなく、その「予備群」や、健康診断の結果が少し悪かった人が今すぐやったほうがいいことはなんだろうか。そういう人こそ「まだいいか」と運動を先送りしがちだ。
中野さんは「最初からキツイ運動をする必要はありません。息が切れるような激しい運動から始めてしまうと、嫌になって継続できなくなります。まずは運動習慣を身につけて、体を動かす楽しさを感じることから始めてください。最初はぶらぶら歩きのウォーキングでも構いませんし、軽い筋トレでもいいです」と言う。「運動を続けるコツは、少し頑張れば達成できる目標を設定することです。例えば、ウォーキングであれば、同じ距離を10分かけて歩いていたところを、次の日はかける時間を10~20秒でも縮める。スクワットを10回やっていたのなら、次の日は11〜12回やってみる、といった具合です。小さな成功体験を積み重ねることが運動を継続するモチベーションになりますよ」(中野さん)
目標をクリアできたら、次のレベルへとステップアップしていくのが望ましい。同じ運度を続けていると、体はそれに慣れてしまい、体力の向上などには貢献しなくなってしまう。運動の負荷を高めて行くと、体型も数値も変わってくるので、それがまた運動することの喜びやモチベーションにもなるのだ。
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