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知らないと大損する保険契約「3つの基本」


知り合いや「いい人」に勧められると契約してしまうが……その保険は本当に必要か?

老後不安をあおる勧誘の罠から逃れるには?

岩城 みずほ : ファイナンシャルプランナー
2019年08月04日

老後資金2000万円不足問題」でマネーセミナーが盛況だそうです。金融庁審議会の報告書について新聞記事が出て、ツイッターで大荒れした日からしばらくは、雑誌でもよく紹介される会社のセミナーは、無料のものはもちろん、有料のものも申し込みが殺到していたということです。
「中立だ」とうたうこの会社のセミナーに出た後、個人相談で外貨建て保険を買わされてご相談に来られる方は以前から何人もいるので、私は「あらー」という思いでした。
また、かんぽ生命と販売受託している日本郵便の不適切な保険販売も明るみになり、そのあまりのひどさに暗澹(あんたん)たる思いです。人を信じて買った結果、トラブルが生じてしまったという、つまりは「人のリスク」によるものです。

このようなリスクは、どうやって回避したらいいでしょうか。


なじみの「いい人」に勧められると買ってしまう

「人のリスク」の厄介なところは感情が介在することです。

かんぽ生命の件は、普段からなじみのある郵便局の人に勧められたことで、多くの方々は疑うこともなかったのでしょう。かんぽ生命、ならびに日本郵便の罪は重いと思います。
ただ、売り手側は「この人をだましてやろう」とは考えてはいないでしょう。

「ノルマのため」「手数料を得るため(収入のため)」に顧客本位ではない販売をしたのですが、保険販売の不思議なところは、「お客様のため」と信じて販売している人もいることです。「私たちは保険を売っているのではない。お客様に安心を提供しているのだ」と心から信じている販売員も多いのです。
保険販売を手がけているファイナンシャルプランナーもいますが、「お金を殖やしたい」というニーズに対し、少し勉強すれば、保険以外に顧客に有利な選択肢が存在するとわかるはずですから、プロとしては知識不足です。
しかし、消費者も、「自分の資産は自分で守る」という基本を肝に銘じることが必要だと思います。
内容を100%理解できないものは絶対に買わないこと」です。保険に限らず、金融商品を買った後で後悔したり、心配になったりしてご相談に来られる方々からよく聞く言葉は、販売者について「いい人なのよ」「一生懸命勧めてくれて」「これは安心(元本保証)だからって」ということです。どれも商品にはまったく関係のない理由です。
村山静香さん(仮名・46歳・会社員)は、老後資金不足をどうにかしたいと、冒頭でご紹介した会社の女性セミナーに行き、その後個人相談で勧められた「米ドル建て変額保険」を買いました。一時払い保険料として625万円支払い、15年後に1300万円になるというシミュレーションを信じてのことでした。
変額保険は、運用次第で受け取る保険金額が変わります。シミュレーションでは「15年後の返戻率は209%」と記されていました。変額部分の運用年率が10%の仮定で計算されたものです。為替レートは加入時と変わらない前提で、満了時の受け取り金額は「1300万円」、仮にドル円が10円高になったとしても「約1180万円」と記されていました。

 

「12%で15年の運用」を想定していた変額保険
村山さんは、こう話していました。

「今ならこんなうまい話はない、とわかりますが、セミナーの講師がとても話上手で引き込まれ、老後に困らないようにすぐ何とかしなくてはと……何の疑いも持たずに契約してしまいました。株や投資信託なら元本割れすることもあるとわかりますが、保険だから安心と思ってしまったのです」
外貨建て保険では、保障と運用の両方にコストがかかるうえに、さまざまな手数料もかかります。村山さんが契約した保険では、変額部分の運用コストは約2%でした。10%の実質リターンを得るためには、12%で15年運用しなければなりません。
老後不安をあおられたうえ、解決策のように保険商品を提示されたら「渡りに船」という気持ちになるかもしれません。

でも、「お金を殖やす」ことの前に大切なのは、「大きく間違えない」こと。村山さんも「人のリスク」を回避することができませんでした。
では、どうしたらいいでしょうか。基本的なマネーリテラシーを身に付けていれば、「そんなうまい話はないだろう」と避けられると思います。

とくに保険については、次の3つを覚えておいてください。

保険でお金を殖やすのは難しい

今の利率では保険でお金を確実に殖やすのは無理です。保険会社だけが魔法のように上手な運用をできるなんてことはありえません。それでも「高金利の外貨建て保険は別だ、お金は殖える」と思っている人は私の過去の記事「『保険でお金を貯める』のはやめたほうがいい」をぜひお読み下さい。

保険は、もしものときに経済的に困らないために入るものだと心得ましょう。「保障と貯蓄は別々に考える」ことです。

②保険は、お金の「何にでも使える」機能を奪う

貯蓄の特徴は「何にでも自由に使えること」です。しかし保険は違います。お金に色をつけ、使い道を限定してしまうことになります。
保険という箱に入れてしまうと、保険会社が決めたことに当てはまらないと保険料は支払われません。
しかも、この箱にお金を入れておくには、たくさんの手数料がかかります。銀行の普通預金に入れておけばコストはタダ、必要なときに自由に引き出せるのに、保険ではわざわざ高い手数料を支払って、お金を使いにくくするのです。
「いやいや、保険はもしものときのために入るのだから、貯蓄とは違う」と思いますか? 確かに、一般的な保険はそうです。お金を殖やすのに長い時間がかかる預貯金とは違い、1年しか保険料を支払っていなくても支払い事由に該当した場合、約束した金額が支払われます。
でも、それはあくまで、「もしものとき」に該当した場合。保障のために入る保険は、必要最小限にすべきです。保険料は抑えて、その代わりに自由に使えるお金を殖やしいてくことが正しいリスク管理です。
死亡保障は、経済的に困る遺族がいる場合に、国民年金保険、厚生年金保険で保障される内容を確認し、不足分を私的保険で補うようにしましょう。

また医療保険は、保険内容を充実させたからといって病気の罹患率が下がるわけではありませんので、公的な健康保険で保障される内容を知ったうえで必要性を考えましょう。

 

長期契約すると、未来の「モノを買う力」が損なわれる
 そして、3つ目の基本です。
③長期契約の保険は、未来の「モノを買う力」を損なう

多くの保険は、契約時に、支払われる金額が決まります。例えば、契約時に決められた保険金額が100万円なら、満期時に受け取るのは100万円です。
15年後、ビックマック390円が700円になっていれば、お金の価値は下がります。モノを買う力が下がるのです。今の100万円と未来の100万円の価値は同じではないということです。

入院給付金や介護給付金なども同じです。何十年先の高齢になってから給付される保険金額は今の価値とは違いますし、制度自体が変わっている可能性もあります。
また貯蓄性保険も同じです。契約時に積立利率(何%で運用するか)が決められます。世の中の利率が上がっても上げてはくれません。

高コストの箱に入ったお金は大きくなれないのです。先ほどの村山さんが買ってしまった変額保険は、積立利率が決まっている定額部分と、運用次第で利率の変わる変額部分の組み合わせでできています。約80%に当たる定額部分の積立利率は15年間変わりません。
こう考えると、高コストの保険という箱は、お金を殖やす目的にはまったく向いていないし、もしものときの備えとして自助努力で加入する保険は「必要最小限でよい」ということになりますね。これが、最低限知っておいてほしい保険のマネーリテラシーなのです。

 

今回は普段から「こんな事は、当たり前」と思っているコトをご紹介しましたが、慌てると…トンデモナイことが起こるのも現実です♪

 


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