おがわの音♪ 第815の配信★


年収2100万円!「キーエンス社員」は激務なのか

現役社員やOBが明かした「働き方の実態」

劉 彦甫 : 東洋経済 記者
2019年07月01日

「思った以上に伸びなかったですよ」――。
昨年度の年収を教えてくれた20代のキーエンス社員はそうつぶやいた。

平均年齢35.8歳、平均年間給与2110万円。6月に開示されたキーエンスの有価証券報告書(2019年3月期)に記載された年収は、相変わらずほかの企業で見られない高い水準だった。



 

社員やOBによれば、一般的な営業社員の1日は午前810分から始まる各営業所の朝礼からスタートする。その後、830分から営業に出向き、夕方まで外回りを続ける。営業所に戻ってから翌日以降の準備や営業計画の発表や議論を行う。 

「やるべきことは多く、時間が足りないとよく思う」(関東地方配属の20代社員)と業務量は少なくない。だが、オフィスの照明やPCの電源が切られるため、残業はどんなに遅くても午後930分までOBによれば業務で使用する携帯電話は持ち帰れず、家で仕事をすることはないという。「時間内で業務を終わらせられるよう生産性を上げることが何よりも重要1時間当たり、どれぐらいの付加価値を出せるかが求められる」(30代の元社員)。午前8時には出社し、午後9時半に帰宅するということは、1日の勤務時間が13時間以上となる。激務のように感じるが、複数の現役社員は「土日や連休にしっかり休めるから苦ではない」と語る。



キーエンスが実践しているデータ活用について、「知る」「考える」「やってみる」という3つの視点。
「知る」に関しては、顧客に合わせたタイミングでのアプローチ方法、そしてデータドリブンで営業活動を最適化。
「考える」では、キーエンスが目指す「全員データドリブン」と
そして、知って考えた後には、実際にデータを活用して施策を生むプロセスを「やってみる」

営業は結果ではなくプロセス重視

ただ外部の声として圧倒的に多いのは、「営業ノウハウがすごい」(国内証券アナリスト)という指摘だ。キーエンスに約20年在籍し、現在も機械業界で活躍するOBのA氏は、「キーエンスの本当の強みは製品開発とその製品を売るときの戦術にある」と明かす。

「『世界最速』など製品のコンセプトがしっかりしているので、製品を説明しやすい。営業マン個人のメリットも、相手先の導入メリットも開発に組み込まれているので、販売戦略を立てやすい」(A氏)。新製品の営業のしやすさと商品としての魅力が、営業力の強さにつながる。

営業においても絶えず合理性が問われるという。A氏によれば、重要となるのが「施策」という営業計画だ。「施策」では売上目標を達成するための細かなストーリー作りが求められる。たとえば製品パンフレットを何冊発注し、誰に対しどのように配布するのかなどを事細かに決めるのだ。

しっかりと市場の先を読み、正しい戦略・戦術を組み立てられるかが問われる」(A氏)。キーエンスではこの「施策」を入社して間もないころから実践し、営業を学んでいくという。「棚からぼた餅式でたまたま営業成績がよくなっても、計画が甘すぎると評価されない。なぜ結果がよくなったか説明を求められる」(A氏)。結果よりもプロセスをしっかり踏めているかが重視されるという。

そのため「若い人のなかには途方もない空振りをしていると思う人がいるかもしれない」とA氏は言う。実際、「営業成績ではなく、チラシの配布枚数や営業先の件数の達成度など細かなものばかり指摘されて意味がわからず辛かった」と明かす元社員もいる。

ただし「施策」を重視するのは、営業も戦略を組み、先読みする力を身につけるため。キーエンスで長年海外事業に携わったOBのB氏は、「いかに合理的な営業を常に行えるかを普遍化したような会社」と振り返る。

合理性の追求は営業に限らず、会社組織として浸透しているようだ。キーエンスは現名誉会長の滝崎武光氏が1972年に設立した。滝崎氏は同社株の7.7%を持つ大株主だが、オーナー色は思った以上に薄い。同社の採用サイトには社員の親類縁者は応募できないと明記されている。実際、役員名簿には滝崎氏の親類縁者は見当たらない。

合理性の塊ともいえる組織で、その点では「フェアな会社」(B氏)なのだ。B氏はかつて、転職が盛んな海外で人材のつなぎ止めができていないと指摘されたことがあった。この時、B氏は海外の転職市場のデータを示して反論。転職が前提の海外に合わせた社員教育や人事制度の確立を提案し、本社を納得させたという。

「上司や役員などの誰が言ったのかではなく、何を言ったのかが重視される」(B氏)。根拠に基づいて論理的に説明できれば、新卒1年目の社員にも耳を傾ける社風という。「上司におもねることや派閥を形成するようなことはなく、経営陣を含め上司に対しても基本的にはさん付けで呼び合っていた」(同)。 

キーエンス、高収益企業が決算期変えるワケ            2015/05/15   東洋経済新報の記事抜

キーエンスほど税金を払っている上場企業は決して多くない。利益が多いからだ。2014年度の調整後法人税額(法人税・住民税・事業税の合計に法人税等調整額を加減した会計上の納税額)は652億円だ。これに対して、同じ14年度におけるFA関連大手の調整後法人税額をみると、ファナックはさすがに1030億円(売上高7297億円)と目立つものの、三菱電機749億円(同4兆3230億円)、オムロン288億円(同8472億円)、安川電機96億円(同4001億円)などは売上規模を考えると、キーエンスに比べて税額が大きいとはいえない。

営業利益率5割超に達してもなお、税務メリットを追求するために臆面もなく決算期の変更までやってのける――。こうしたところにも、高収益企業の利益に対する飽くなき貪欲さをうかがい知ることができる。


メール・BLOG の転送厳禁です!!  よろしくお願いします。