日銀が独自のGDP作成、消費関連の精度高め景気判断に活用


日高正裕、藤岡徹
2019年5月21日

  振れが大きな家計調査に代えて、精度向上の販売・供給統計を利用 

  → 日本のGDP改定幅、主要18カ国で2番目の大きさーOECD調査
 日本銀行は消費関連の基礎統計である家計調査を利用した内閣府発表の国内総生産(GDP)統計について、同調査の振れの大きさを問題視し、その影響を排除した独自のGDPを算出する。複数の関係者への取材で明らかになった。

 日銀は昨年来、内閣府に個人消費の推計過程のデータ公表を要請。内閣府は当初難色を示したが、2月に統計委員会の部会で承諾し、3月の18年10-12月期2次速報の5営業日後に公表した。

複数の関係者によると、これで日銀は精度が向上している販売・供給統計を使った独自のGDP作成が可能になった。20日発表された1-3月期のGDP速報値から算出する。公表するかどうかは政策委員の間に慎重意見もあり、今後議論する。

 自民党の萩生田光一幹事長代行は先月、6月の日銀企業短期経済観測調査(短観)などで示される経済情勢次第で10月の消費増税は延期もあり得るとの認識を示した。13日発表の3月の景気動向指数では、基調判断が景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に下方修正された。20日速報値が発表された1-3月実質GDPは、前期比年率2.1%増と事前予想を大きく上回った。

 JPモルガン証券の鵜飼博史チーフエコノミストは同日付のリポートで、「今回のGDP統計の強さによって増税延期確率が30-40%から20-30%に低下した」と指摘した。内閣府は27日に需要側・供給側・共通推計項目推計値(国内家計最終消費支出、民間企業設備)を公表。日銀はこれを基に独自のGDPを推計し、景気判断に活用する。

振れが大きいGDP統計
前回2014年4月の消費増税の前後も大きく振れた

消費税率が5%から8%に引き上げられた14年の7-9月期GDPは前期比年率1.6%減と2期連続マイナス成長となり、15年10月に予定していた10%への増税を先送りする材料となった。日銀も同年10月、増税による景気の落ち込みなどを理由に追加緩和に踏み切った。しかし、同期のGDPは最新値で0.3%増とプラス成長に改定されている。2010年以降の1次速報値と最新値を比べると、平均0.43ポイント上方改定されている。
 GDPの振れをもたらす最大の要因は家計調査だ。日銀は16年5月に公表した個人名入り論文で、同調査は「対象となっているサンプルに偏りがある可能性が指摘されており、他の消費指標とも異なった動きをする場合が少なくないほか、月々の振れも大きく、個人消費の実勢を把握しにくいという問題がある」と指摘した。
 統計委員会の専門委員を務める大阪経済大学の小巻泰之教授は、日銀による独自のGDP作成について「できるだけ振れの少ない統計を作ることは理に適っている」と評価。「1次速報値と改定値の振れが大きいため、日銀としては金融政策の判断材料として振れの少ないデータが欲しいのだろう」と述べた。
主要国で2番目に大きい改定幅
 国内で生産された財・サービスの付加価値を示すGDPは四半期ごとに作成され、1次速報値は1カ月半後、2次速報値はその翌月、第1次年次推計(確報値)は翌年末、第2次年次推計(確々報値)は翌々年末に公表される。改

定ごとに大きく変わることが多く、経済協力開発機構(OECD)の15年の調査では、速報から3年後の改定幅は主要18カ国で2番目に大きい。
 日銀は消費の実態をつかむため、家計調査の代わりに財・サービスの販売・供給統計を利用した消費活動指数を公表している。日銀前理事の門間一夫みずほ総合研究所エグゼグティブエコノミストは、「消費活動指数もGDPの個人消費の確々報を当てるように作っている。実際、14年以降、確々報ときれいに合っている」と指摘した。


☞ さて、・・・。

日銀が同じデータを利用して精度の高い分析結果を出せるなら、それはそれでいいだろうと楽観的な見方をされる方もいるかもしれない。しかし、一国の統計調査部門がまとめた数字が信用に足らないので、中央銀行が独自に分析してGDPを別途算出するなどという話は、いまだかつて聞いたことのない。近代国家の構成要件を著しく汚すような対応ではないかと、かなり飽きれている状況で、米国FRB傘下のアトランタ連銀は、独自に分析することで「GDPNOW」という予測モデルを発表しているが、あくまで地区連銀としてのシミュレーション予測モデルであって、アメリカ合衆国の責任ある機関がとりまとめた数字とは別に試算するなどということは行っていない。

一連の統計不正は、役人が勝手にしでかしていることなのか。はたまた人事権を握られているがゆえに、妙な忖度が働いて、時の為政者にとって都合のいい数字を改ざん・ねつ造するのがひとつのプロセスマネジメントとして確立してしまっているからなのか?この部分だけをとってみても、まともな仕組みにいっさい戻そうとしない安倍政権に、相当悪辣なものを感じる。

平成が始まった頃はまだここまで酷いことはなかったのではないかと思うが、我々が気づかなかっただけで、昔からこんな状態だったのか?いつの間にかこんな酷い国になってしまったことに、さすがに驚きを隠せない。

日本でバブルが崩壊した時期と時を同じくするように1991年末にソ連が崩壊し、69年の仕組みは完全に消滅することとなった。しかしその後、旧ソビエトのGDPは公表数値の半分程度しかなかったことがわかる。

国民所得も世界恐慌が起きてから1985年までで90倍に拡大したとされてきたが、実態はたったの7倍弱。平均成長率も、この間一貫して8%以上を維持しているとなっていたはずが、実際には3%強という、とんでもない低い数字がずっと後になって露見することとなった。50年代のソ連の為政者であったスターリンは、正確な調査に基づく統計をひどく否定し、まともな統計データを集計し発表する統計部門の職員をことごとく追放。安倍政権は追放こそしないものの、人事権をちらつかせて忖度を強要することでほとんど同じ効果を示現しているのではないかとさえ疑いたくなる。


メール・BLOG の転送厳禁です!!  よろしくお願いします。