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日本企業が「既得権」を断ち切らないと日本経済は終了する


もうずいぶん以前から、女性活躍推進という掛け声や一億総活躍社会という言葉を耳にし続けていますが、実感を持って受け取れている方は少数かもしれません。

なぜ日本社会ではこういった「改革」がなかなか進まないのでしょうか。

アメリカ在住の作家で社会システムに関しても詳しい冷泉彰彦さんが、これを詳しく分析・解析しています。


2019年の現在、財界はようやく終身雇用を止めると言い始めました。その結果として、能力主義とジョブ型雇用*というアジアでも欧米でも当たり前の雇用制度が導入される可能性が出てきました。改革の方向性としては正しいと思います。
ですが、今回の改革でも同じように「既得権は否定しない」ということになれば、例えば現在「総合職」つまり「ジョブの専門性を固定しないで、ブラックな丁稚奉公に耐え、家族にも苦痛を与える転勤にも耐えて」年数だけを積めば「管職にも役員にもなれる」という契約で入ってくる人間の「既得権」は今後30年間守られることになります。
それだけでなく、その「生え抜き社員」という「過去の経験でしか判断できない」グループが企業を率いていくことが、向こう30年続くことになります。

改革に更に30年もかかっていては、それこそ各企業も日本経済も終了ということになりかねません。

そうならないためには、既得権を切るという「痛み」に耐えなくてはなりません。

「令和おめでとう」などと言っている経団連などの「お偉方」は、そのことを分かっているのでしょうか?


* 日本の雇用を説明する上で欠かせない用語がジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用です。

   ジョブ型雇用とは職務や勤務地を限定した雇用契約を指します。
   一方でメンバーシップ型雇用とは職務や勤務地、労働時間などが限定されない雇用契約を指します。


 ジョブ型雇用は、諸外国が主に採用している雇用契約であり、自分自身の専門スキルを活かして、職務や勤務場所を絞り込むことができる、限定正社員または有期契約労働者を指します。
企業は専門性の高い優秀な労働者を確保できます

一方で労働者は自らの職務を提示することができ、職務記述書に記載された内容や条件以外のことを行う義務は発生しないので、ライフワークバランスが取りやすい傾向にあります。
企業側はこの職務記述書に書かれた職務を一方的に変更ができませんが、企業の経済状況により、労働者に依頼していた仕事がなくなった場合は配転を行う必要がありません。労働者にとっては明確に職務と勤務場所が定められていることから、労働者は景気の動向によっては失業するリスクがあります。

 メンバーシップ型雇用は、日本企業に多く見られる雇用契約の一つで、日本特有の年功序列や終身雇用を前提にした、職務や勤務地を限定しない無限定正社員を指します。
新卒一括採用で大量に人材を獲得し、OJTや社内研修で教育を行い、職務に必要な知識と経験を積ませます。職務や勤務地の範囲を限定していないことから、基本的には企業の都合により、自由に配置転換を行えるのが特徴です。上場している大企業に多い日本的雇用で、総合職に多く見られる雇用形態でもあります。
また、表面化している長時間労働による過労死や、正規労働者(正社員)や非正規労働者(契約社員や派遣社員)の待遇格差の原因ともされています。



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