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「ねこ背」が体調不良の元凶だ


ねこ背の仕組みを知り、自宅で対策しよう 

自分が正しい姿勢であるか自信はありますか?

ここ数年、スマートフォンやタブレット型端末が普及し、子どもからお年寄りまで画面を見ることが増えました。もちろん、それを使用すること自体が悪いことではありません。でも、その様子を見ていると亀のように首だけを前に突き出していたり、肩を丸めたりしている人が少なくありませんし、すごく気になってしまいます。IT機器が急速に広がった影響で首や肩、背中や腰などに張りを感じたり、「まぁ大丈夫だろう」と放ったまま凝りにまで発展し、整骨院やマッサージサロンに駆けつける人が増えました。街中の人たちを観察してみると、やたらと「ねこ背」の人が目につきます。あくまで感覚値ですが、日本人の8割がねこ背、あるいはねこ背予備軍なのではないかと感じています。もともと四足歩行と言われる人間が、二足歩行の生活を送っている時点で、ずっと不安定な状態を続けているのです。にもかかわらず、人の体は優れた補正力を持っていて絶妙にバランスを保っています。でも、それがあだとなり、ほとんどの人が「自分がねこ背である」ことに気づきません。

ねこ背はどんな仕組みで起こっているか知っていますか? 例えば、女性の中には気づかないうちに内股になっている人も多いでしょう。内股になると、骨盤が前に倒れて、お尻が突き出たようになります。そうなると、お腹を出してバランスをとり、さらにそのバランスをとるように反り腰になってしまいます。人の体は、こういった「凸凹の法則」によって自然にバランスをとる仕組みになっています。そういう人たちを診察すると、まず太ももの前側の「筋肉がひどく強張っている」ことが目につきます。強張りとは、筋肉が縮んだ状態でなかなか伸びず、スムーズな伸縮機能が働いていないシグナルです。それがひどい状態へと発展してしまうと凝りに悪化します。当然ですが、筋肉が伸びなければ、関節の可動域が狭くなります。そうすると、正しい姿勢が保てなくなり、気づかないうちに悪い姿勢のままバランスを取るようになります。こうして人はねこ背になっていくのです。要するに、筋肉の強張りこそが、ねこ背の第一歩を引き起こしてしまっているのです。ねこ背の人は筋肉の縮まった可動域内でしか全体のバランスを取っていません。すると、どうなると思いますか? いつの間にか、ねこ背が徐々に体に形状記憶されていき、それがいちばん楽な姿勢に変わってしまうのです。もちろん、本人にその意識はありません。しかし、一度ねこ背が形状記憶されてしまうと、どんなに自分が正しい姿勢に戻そうと努力をしても簡単には治りません。部分的に少しくらい強張った筋肉を伸ばしたりほぐしたりしたところで「ねこ背の状態で体全体のバランスをとってしまっている」ため、治すことは難しいのです。だからといって、忙しく働いている日本人にとって、筋肉の強張りをほぐすため、毎日全身マッサージに時間をかけるなんて現実的ではありません。せいぜい週1か2くらいのものです。 

ねこ背は骨盤の歪みから起こっている

 具体的に、ねこ背の特徴をいくつか挙げてみましょう。 

・背中が全体的に丸まっている
・肩が前に出ている
・顔が出ている
・お腹が緩んでポッコリしている
・お尻が出っ張ったり、へこんだりしている
・足の親指が床から浮いている…etc.

 見た目には、上半身にねこ背の特徴が現れているように見えます。しかし、ねこ背は人間の土台を支える「骨盤」に原因があることがほとんどです。

例えば、骨盤が前に倒れたり後ろに倒れたり、右にねじれたり左にねじれたりすることで、結果としてそれを補うように下半身に歪みが生じたまま、上半身は「凸凹の法則」によってバランスをとっています。だから、上半身の症状が目に止まりやすいのです。そうなると、筋肉は正常な状態ではなく、緊張状態に陥っているので強張りを感じています。何よりも、骨盤を正しい位置に戻すことこそが正しい姿勢への第一歩なのです。

とはいっても、自分1人ではわかりにくいと思うので、正しい姿勢を簡単に説明すると、横から見て「耳、首、肩、骨盤、外くるぶしがまっすぐ1本の線になり、地面と直角になっている」ことが目安です。もちろん理想の姿勢なので、これができている人はそう多くはいません。まずは毎日鏡の前でチェックすることから始め、自分がねこ背であることを認識するという意識改革を行うことをお勧めします。普段の生活の中では気づかないうちにねこ背を引き起こしていることが多々あります。例えば、バッグを肘からぶら下げたり、電車やオフィスでイスに座るときに足を組んだり、デスクワークで画面をのぞき込んだりなど私生活においてたくさんのシチュエーションでねこ背の原因を作ってしまっています。 

バッグを肘からぶら下げるとどうなってしまうのか? 

単純に歩行の邪魔になるだけでなく、ぶら下げたほうをカバーしながら歩くため、どうしても姿勢の悪い状態で体全体を補正させてしまうことになります。代わりに、肩からぶら下げて歩くことでハンドバッグの重みを体全体で受け止めて歩くことができ、正しい姿勢を保つことができます。足を組んでイスに座ることも、骨盤がねじれている状態をつくることになるのでいいことではありません。また、PCを使ってのデスクワークや、座ってスマートフォンをのぞくとき、両方に共通しているのは、画面をのぞき込む頭の状態です。いろんな人を見ていると、画面に角度をつけすぎることでどうしても頭が垂れ下がるような状態になっていくため、ねこ背の原因になってしまいます。 

意識改革と寝る前のストレッチでねこ背を改善

では、ねこ背である自分の体をいつリセットするのがいいのでしょうか? 私は寝る直前がポイントだと考えています。それは寝る直前が最も人の体にとってストレスのないリラックスした状態をつくることができるからです。そういう体の緊張状態が和らいでいるときに1日1分でいいので簡単なストレッチをしてねこ背を作り出す筋肉の強張りや凝りをほぐし、なおかつ「ねこ背に形状記憶されている体」を元のあるべき姿に戻しておけば、寝ている間に逆にリセットした状態を形状記憶することができます。さらに、寝る直前にストレッチをお勧めしているもう1つの理由があります。それは筋肉をほぐして体全体がリラックスすれば血流がよくなり、いい睡眠へと誘ってくれるからです。いい睡眠は寝ている間も体をリラックスした状態にしてくれるため、心身にとってはすごく大切なことです。 「体を鍛えて正しい姿勢を身に付けよう」 そういうちまたの声を耳にしますが、筋肉を鍛えることと正しい姿勢を身に付けることは別問題です。ねこ背の状態で筋肉を鍛えたところで正しい姿勢には結び付きませんし、むしろ悪い姿勢を筋肉で固めてしまうことになるので状況は悪化していると感じます。とにもかくにも、まずは自分を「ねこ背かも?」と少し疑って意識改革することが改善への第一歩。次のステップは寝る前のリラックスした状態のときにストレッチし、強張ったり凝ったりしている筋肉をいかにほぐすかです。そうすれば体が最もいい状態で眠りにつくことができ、寝ている間に本来ある自分の姿勢を形状記憶することができます。


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