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ゾンビ経済の末路


 世界経済の成長が続き、日本の景気回復も戦後最長に迫りつつある。多くのエコノミストや経営者は、貿易戦争の悪影響を懸念しつつも、回復はまだ続くと見ているようだ。しかし楽観論者は、成長基盤が極めて脆(もろ)く、大きく揺らいでいることを見落としている。
 第一に、今の経済成長はかつてない債務膨張が支えている

国際通貨基金によれば、2017年世界の非金融セクター債務残高・GDP比率は250%で、リーマン・ショックが起きた08年210%を大きく超える。だから、超金融緩和環境に変化が起きると、リスクに敏感な市場は激しく動揺する。

1990年代後半以降の日本で、金融緩和で生き永らえた多くのゾンビ企業が不良債権問題を深刻化させ、長期経済停滞や株価下落をもたらしたと指摘された。それに倣うなら、今の世界経済は、正常な金利に耐えられないゾンビ経済といっても過言ではない。
 第二に、そもそも経済成長力が失われている

グローバリゼーションによる格差拡大が消費を停滞させ、デジタル革命やそれに伴う市場の寡占化がイノベーションを萎縮させ生産性を押し下げている。だからこそ、成長を維持するために債務に依存せざるを得なかったとも言える。
 第三に、危機への対応力がなくなっている

財政金融政策の余地は限られ、貿易戦争や欧州分断、ポピュリズムの台頭という状況では、各国間の政策協調も難しい。

何より米国が、自国のことしか考えなくなっている。今年の世界経済は、混乱と停滞に直面するだろう。その中で、経済成長の過半を輸出に依存してきた日本経済が無傷で済むとは思われない。楽観論は危うい。(山人)

 ◆この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。 @朝日新聞


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