『知識を集める』のではなく、『知識を得る』


テクノロジーの急速な発展で、PCやスマホを使えば あらゆる情報を簡単に入手できる時代に !
しかし、楽をすることに慣れてしまい、自分の頭で深く考えて知恵を磨くよりも、できるだけ楽をして他人から知識を得て、自分の知識を増やすことに腐心する人が急増!
ところが、人間の深さ、器の大きさは 知識の量では得られない !
知恵と心に磨きをかけることで、はじめて得られる


「知識」と「経験」の違い

「知識(knowledge)」と「経験(experience)」の違いについて考えたことはありますか?

これらの2つは、脳内でどのように処理されているのでしょうか。

クリエイティブ思考には、どちらが役に立つのでしょうか。
図の出典は、漫画家のヒュー・マクラウド氏。ともすれば難解になりがちなこのコンセプトを、見事に表現しています。

図からも明らかなように、知識は、既知の点と点の間につながりを構築しない限り、それだけでは役に立たないのです。

これまでにも、数多くの作家、アーティスト、科学者らが、身の回りのアイデアとわずかな知識を吸収することの大切さ、そしてそれらの点を線で結ぶことがクリエイティブシンキングや新しい発想につながることを議論してきました。

 

 

この話題はとても刺激的で楽しいので、私の大好きなクリエイティブ思考の人たちが脳内で点と点をつなげることの大切さについて語った内容をまとめてみることにしました。重要な部分には補足を付け加えています。それぞれについて、原文と参考資料へのリンクを付けておくので、時間があればオリジナルの投稿を全文読んでみることをおすすめします(英文)。まずは手始めとして、脳内の物理的なつながりと知能の緊密な関係を調べた研究について紹介します。

 

知能とつながり:脳内の伝達が必要なわけ
カリフォルニア工科大学の研究により、知能は脳内の特定の部分ではなく、至るところに存在していることが明らかになりました。

研究者らは、一般的知能が存在するのはひとつの構造内ではなく、脳全体の領域をつなぐネットワークによって決定されていることを発見しました。

研究者の1人によると、この研究結果は、脳が分散システムとして機能していることを意味するのだそう。

「一般的知能にとってもっとも重要なのは、脳内の複数の領域とそれらの間のつながりだったのです」とGläscherは述べています。

「一般知能は、作業記憶などの様々な処理をひとつに統合する脳の能力に基づくものである」ということは知られていましたが、今回の研究結果は、その理論を裏付ける内容になっています。

ワシントン大学の研究では、前頭前皮質の特定領域とのつながりが、その人の一般知能と相関を持つという結果も出ています。

これはすなわち、知能は脳内の非常に高機能な領域に依存するだけでなく、脳内のその他の領域との伝達能力にも依存することを意味します。

脳内の物理的なつながりだけでなく、記憶に刻まれているアイデアや知識をつなぐことができれば、クリエイティブな思考が可能になり、より質の高い仕事ができるようになるのです。

つながりがクリエイティビティを高める:オリジナルなものなんてない

クリエイティビティやイノベーションを語るとき、スティーブ・ジョブズ氏を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。

だから、ジョブズ氏がかつてつながりについて語っていたことを知ったとき、私は特に驚きもしませんでした。

1996年の「Wired」のインタビューより。

クリエイティビティとは、何かと何かをつなぐことにすぎません。クリエイティブな人に、あることを達成できた理由を聞いたなら、きっとわずかな罪悪感を感じるでしょう。なぜなら、それを本当にやったのは彼ら自身ではなく、彼らはそれらをつなぎ合わせただけにすぎないのだから。

その後ジョブズ氏は、つながりの構築を容易にするための秘訣は経験であると語ります。ちょうど、上でお見せした図と同じです。

彼らは、経験と経験をつなぎ合わせることで新しいことを作り出せるからです。

そして、彼らがそれをできる理由は、人より多くの経験をしているから、または人よりも経験に思いを巡らせているからなのです。

 

何かと何かをつなぎ合わせて新しいものを創造するというアイデア「組み合わせのクリエイティビティ」(combinatorial creativity)を提唱しているマリア・ポポーワさんは、自身がその好例でもあります。

 

 

 

私たちが新しい何かを創り出して世界に貢献するためには、無数の点と点をつないでいくことが必要です。

さまざまな分野のアイデアを掛け合わせ、小さなピースを何度も何度も組み合わせて、新しい城を築きあげる能力が求められているのです。

ポポーワさんは、「Creative Mornings」のイベントで講演を行い、素晴らしいことを述べていました。幅広い話題の本を読めることが、とても重要な要素のひとつなのだと。

これは直感的な深いレベルでは誰もが理解していることですが、私たちのクリエイティブなエゴは、何も受け入れようとしません。すなわち、クリエイティビティは組み合わせによるものであり、完全にオリジナルなものなど存在しないのです。すべては、過去に見たもの・聞いたものの上に築かれるのです。 

さらにポポーワさんは、知識の点と点をつなぐには、レゴのようにブロックを組み合わせていく必要があると語ります。 

持っているブロックの数が多いほど、そしてそのブロックの色や形が豊富なほど、面白いお城を創ることができるでしょう。

つながりやリミックス・アートと聞いて、オースティン・クレオン氏を連想する人は多いのではないでしょうか。

クレオン氏は、著書『クリエイティブの授業』(Steal Like an Artist)において、他者の作品に刺激を受けて自分の作品を特徴づける方法を書いています。

その書き出しはこうです。 

アーティストであれば、この質問を受けない人はいないでしょう。

「どこでアイデアを得たのですか?」

その質問に、正直なアーティストはこう答えるはずです。

盗んだんです」 

クレオン氏がすごいのは、他者の作品が自分の作品の一部になっていることに極めて正直なところ。また、マリア・ポポーワさんと同じで、「オリジナルなものなんてない」とも述べています。 

新しいアイデアとはすべて、過去のアイデアの寄せ集めかリミックスに過ぎないのです。 

自分の持つ知識と知識の間につながりを生み出す方法についてのアドバイスを知りたければ、クレオン氏の本を読むといいでしょう。同氏がおすすめしているのは、次のような方法です。

  • いつでもノートを持ち歩く
  • たくさんの本を読む
  • ひらめきファイルをつける

新しい経験のチカラ

結局のところ、持っている知識の数が多いほど、多くのつながりを作ることができます。まずはより多くの本を読み、より幅広い本を読み、知識を集める新たな機会を模索するところから始めてください。それは旅行でも、会合への参加でも、新しい趣味の開始でも、新しいことを経験できるのであれば何でも構いません。研究者のDuezel博士は、新しい経験についてこのように説明しています。

 

中脳の活発な働きをもたらすのは完全に新しいことだけである。 

ですから、新しい何かにトライして脳に軽い負荷をかけてやることで、脳の働きが劇的に改善されるのです。

すべてを書き留めるシャワー中でも!) 

オースティン・クレオン氏が言うように、どこにでもノート(または電話)を持ち歩いて、メモする癖をつけてください。脳にすべてを覚えてもらおうなんて期待をするのではなく、思いついた重要なコンセプトやアイデアを書き記しておくことで、脳を助けてあげましょう。メモをしているときに、過去のメモから関連するものを思い出すこともあります(これこそ、つながりの構築ですよね!)。シャワー中でも 防水メモ帳などを使えば、メモを取ることができます。

 毎日メモを振り返る

必要な時にメモを思い出せるようにするには、折に触れてメモを読み返しておく必要があります。これまでのメモにひととおり目を通すことで、古いメモとつなげることができる知識のレパートリーが増えたことを実感できるはずです。実際この方法は、ベンジャミン・フランクリンが続けていた秘密の1つでもありました。フランクリン氏は毎朝毎晩、次のようなシンプルな質問を自問することで、1日を振り返っていたそうです。 

「今日、どんないいことをしようか」
「今日、どんないいことをしただろうか」

 最後に、フランクリン氏の日課をお見せしますので、ご参考まで。


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