官民ファンドに矛盾


                               @朝日新聞


官民ファンド

政府と民間が特定の目的のために資金を出しあって投融資するファンド。民間企業だけではリスクをとりにくいが成長が期待される分野へ、政府が公的資金を供給してリスクを補完し、民間資金の呼び水にするねらいがある。

このうち、国が中心となって資金を出し、民間の企業や事業に投融資するファンドを、とくに官製ファンドということがある。

投融資先事業が軌道に乗れば、配当や収益を分配できるほか、保有株式売却による売却益も期待できる

第二次安倍晋三政権は、成長戦略の一環として官民ファンドの活用を掲げており、官民ファンドの新設や機能拡充が相次いでいる。
 2013年(平成25)12月時点で設立されている官民ファンドは、以下の九つである(資本金等は官民あわせた額)。

(1)中小企業基盤整備機構(2004年7月設立。中小・ベンチャー企業を支援。資本金1兆1145億円)

(2)産業革新機構(2009年7月設立。先端技術の事業化を支援。資本金2800億1000万円)

(3)地域経済活性化支援機構(2009年10月設立。地域再生・活性化を支援。資本金231億円)

(4)農林漁業成長産業化支援機構(2013年1月設立。農林水産業の六次産業化を促す。出資金318億円)

(5)国立大学法人評価委員会官民イノベーションプログラム(国立大学の研究開発を支援。2013年1月より4大学に合計1000億円を出資開始)

(6)日本政策投資銀行競争力強化ファンド(2013年3月設立。企業におけるイノベーションや企業価値向上のための取り組みを支援。ファンド総額1500億円)

(7)耐震・環境不動産形成促進事業(2013年3月基金造成。国の基幹的な交通インフラの整備、耐震・環境性能を有する不動産形成を支援。ファンド総額350億円)

(8)民間資金等活用事業推進機構(2013年10月設立。民間資金によるインフラ整備を支援。資本金93億7500万円)

(9)クールジャパン機構(登記社名は海外需要開拓支援機構。2013年11月設立。日本の特色を生かした商品等の海外における需要開拓を支援。出資金375億円)。


 官民ファンドは民間の投融資リスクを軽減する利点がある一方で、民業を圧迫し、民間競争をゆがめる危険がある

また、企業経営者のモラルハザード(倫理の欠如)や、損失が発生する場合に過大な国民負担を生むおそれがあり、存続期間を限った時限措置とすることが望ましいとされている。安倍政権は2013年5月、官民ファンドが効果的に活用されるために、投資内容などを評価・点検する「官民ファンド総括アドバイザリー委員会」を設置した。[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) 


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