「見える化」でダメになった日本人技術者とは


大手メディア企業での飲み会での話です。話題はIoT(Internet of Things)に集中しました。酒の席におけるIoTとは、世間でよく出てくる事例が以下のケースです。
 「ある工場の生産ラインで、突然、搬送用モーターが故障した。当然、ライン停止で、その企業は莫大な損失を被ることになる。

一方、生産ラインには、生産技術者が毎日、そのラインの具合をチェックしている。生産技術者がいない中小・零細企業でも、熟練の作業者がチェックしているはず。それでも、突然のモーター停止。これを何度も繰り返していると、その企業はつぶれてしまうかもしれない。また、どれほど優れた生産技術者や熟練の作業者でも、その検知能力には大きなばらつきが存在している。

また、人間は常にミスを犯す。そこで、そのモーターに振動センサーや温度センサーを付加し、常にモニターする。

いわゆる、モーター異常の『見える化』が必要だ」──。
 「見える化」でダメになった日本人技術者とは、なんでもかんでもセンサーを付けてモニターし、「これが見える化だ」と主張する技術者のことです。

見える化で見えたものだけ。見えたもののこと以外は考えない技術者になってしまったというのです。

つまり、「なぜ短時間でモーター振動が発生したのか」とか、「なぜ発熱したのか」を全く考えない、深掘りしない技術者もどきの、感性で形を造形していくカンジニア」の増殖です。

 以上の現象を、「日経ものづくり」10月号の「挑戦者」において、トヨタ自動車の技術系副社長(下記リンク参照)も述べていたのには、当事務所のスタッフ一同、びっくりしました。大手メディア企業のベテラン記者も、老舗の料理長も、大手自動車企業の技術系副社長も、皆、感じていたのですね。
*有効なツールのはずが…
 かつてのTQCに基づくQC活動、その中に存在するPDCA、日本企業独特の5S、見える化、見せる化、そしてインダストリー4.0やIoT、AIと呼ばれる新たな産業革命が、日本企業に存在しています。
 これらはもともと極めて有効な概念やシステム、ツールなのですが、どこかの誰かが、または、どこかの企業がねじ曲げて実行しているような気がします。
 その代表例が ISO。本来は当たり前の規格、当たり前の行動が規定されているのに、多くの日本企業がこれでもか! これでもか! と自分自身(自社)を締め上げていきます。その結果、トラブル未然防止の見せる化に偏った開発ツールが氾濫し、社告・リコールが収束するどころか、増加の一途をたどっています。

この締め上げのストレスは、消費者を裏切る不正行為の連続につながっています。


メール・BLOG の転送厳禁です!!  よろしくお願いします。