展示から提案へ、変わるシーテックの役割


 ロボットや自動化の「先」

2018年10月18日(木)

北西 厚一

自動車部品メーカー、デンソーが出展した、餃子を作るロボット。将来、コンビニの店内調理で使われることを想定しているという(写真:つのだよしお/アフロ)

 10月16日から一般公開が始まったIoTの見本市「CEATEC(シーテック)ジャパン2018」。                              初出展のローソンが先端技術を取り入れた「未来のコンビニ」を展示するなど、「商品の披露会」にとどまっていた従来からは大きく姿を変えている。ただ、主催するJEITA(電子情報技術産業協会)が目指す「ビジネスモデルの展示会」(長尾尚人専務理事)のハードルは高い。IoTで繋がった先に、どんな世界があるのか、そこから新たな発見を示せるか。未来への青写真が求められている。「IoTなんて誰も言わない。ネットに繋がっているのは当たり前ではないか」。2016年1月、米ラスベガスの国際見本市「CES」の会場でよく聞いた言葉だ。ここで主役だったワードは「スマート」と「VR(仮想現実)」。IoTなど当然。                                   インターネットに繋がることがどんな利便性と可能性を生むのか、それが共通のテーマだった。

「テロリストをいかに事前に発見するか」

 ここでいうVRは、ゲームで遊ぶそれではなかった。様々な先端技術の結集という位置づけで、いわば未来行動の予知だ。例えば、3000人いるショッピングモールで、テロリストをいかに事前に発見するか。             カメラやセンサーで状況を把握し、過去の学習データから将来の事象を予測する。「一種の軍需技術だから 可能性は大きい」という話も多く耳にした。来場者は、社会課題を解決するための必須技術として、AI(人工知能)やビッグデータの多様な使われ方を意識する。 CESはこのころから家電というキーワードも使わなくなった。主催者の名称も「米家電協会」から「米民生技術協会」に変わった。世界から、自動車、通信など幅広い業界の大手企業トップが集まり、スタートアップはここを出世の登竜門とも見据えている。15年からは中国をベースとする「CESアジア」もスタート。        4000社近くが参加した今年のCESでは、次世代通信「5G」時代の社会の在り方などが話題となった。

アクセルラボは気合の入ったブースを設けている

 シーテックはCESの成功を強烈に意識している。幕張メッセの広大な会場を「IoTタウン」や「スマートライフ」などの社会ニーズで区切り、その分野で何が必要なのかを提案することに躍起だ。かつての、大手家電メーカーが最新型テレビを並べていた「すべての面において意味のない展示会」(関係者)からみれば、隔世の感がある。今年の会場を歩いていて、気合の乗りがいい会社に出会った。「我々の母体は不動産会社。     デジタル技術を使って、不動産の課題を解決していけると考えている」。そう語ったのは会場でひときわ目立つブースを設けるアクセルラボ(東京都渋谷区)のシニアマネージャだ。                                                              住空間のスマート化などを手掛けるアクセルラボはシーテックのみならず、大型展示会への初出展。          「モデルを提案することによって、出展者らと連携する可能性を模索したい」と話す。

IoTは前提、何ができるのか

 ローソンも大胆な提案をしている。小売業として初の出展で、2025年を想定する未来のコンビニをブース内に設けた。同社幹部は「ロボットや自動化によって、お客様対応により注力できる。デジタル技術を使ったカルチャースクールなどもお店単位なら展開できる」と、街の「集会所」としてのコンビニの可能性を語った。JTBは家にいながらプランを立てられる次世代の旅行販売の姿などを展示している。                               シーテックは19日まで開催される。基調講演では、プリファード・ネットワークスの西川徹社長やファナックの稲葉善治会長らが登壇し、ロボットと共存する社会の到来などについて熱弁をふるった。共通テーマである「つながる社会、共創する未来」。IoTのもと、広がる世界は確かにある。その前提で何ができるのか、方向性を示せれば、総合展示会のあるべき姿が浮かびあがる。

「CEATEC(シーテック)ジャパン2018」に中央大学とAISTが出展した、お茶をたてるロボット(写真:つのだよしお/アフロ)

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