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築地市場のネズミ、どこへ?「数万匹」の指摘も 銀座も影響か


 

 産経ニュース 

 2018.9.28 18:30

10月6日に閉場する築地市場(東京都中央区)の敷地内に大量のネズミが生息し、都が駆除に悪戦苦闘している。5月以降、1700匹以上を捕獲したが、そもそもの生息数を把握できていないため効果は不明。一方で、豊洲市場(江東区、10月11日開場)への引っ越しに伴い、餌を失ったネズミがどこに向かうのかも予測不能だ。場外に残る飲食店や近隣の繁華街まで流出し、「周辺環境に悪影響を与えるのでは」との懸念が出ている。

不安の声噴出
 都は9月に入り、2回あった3連休で駆除作戦を実施。さらに豊洲市場への引っ越し調整期間の10月11~17日、同18日~11月16日にも予定している。
 この間、粘着シート3万9千枚、殺鼠(さっそ)剤260キログラム、捕獲かご600台を投入。樹脂板などを設置し、フェンスの隙間や建物の床下からネズミが場外に出ないよう封じ込めを行っている。中央区も予算を計上し対策に当たっている。
 ただ、周辺住民や飲食店関係者から不安の声が相次ぐ。9月20日、同区で行われた築地市場解体工事に関する説明会では、参加者から「本当に駆除できるのか」「周囲の飲食店に逃げ込むことはないのか」といった声が噴出。都は「問題が起こらないよう徹底的に行う」と理解を求めた。
 都は今年5月の集中駆除で約700匹、8月にも同様に700匹余りを捕獲した。しかし、9月に入って実施した2回の駆除では200匹余り(15~17日)、100匹余り(22~24日)と徐々にその数を減らしている。
 都の担当者は捕獲数の減少傾向について「生息数が確実に減っているのか、効果が薄れてきているのか評価が難しい」と漏らす。そもそも市場内にどれくらいのネズミが生息するのか、その数は不明だ。都が依頼した専門家が市場内で生息実態調査を行ったものの、「生息数を把握することは不可能」との報告があった。
 都が平成27年に実態調査を行った際には、「500匹程度が生息」との推計が出たが、敷地の中で大きな割合を占める水産仲卸売場は対象外だった。建物の老朽化や構造が複雑なことから「調査が難しい」と判断されたという。
 開放型の市場は出入りがしやすく、鮮魚の切りくずなど豊富に餌がある。古い建物には隠れる場所が多く、ネズミにとっては格好の生息場所だ。このため、一部の専門家からは「数万匹規模」との指摘も出ている。
 果たして10月6日の閉場以降、何が起きるのか。引っ越し・解体作業が本格化し、関係車両の通行のため正門など3カ所の出入り口はほぼ開放されるが、当然、ネズミにとっても出入りは自由だ。
 市場周辺には、名称存続が決まった場外市場など多くの飲食店が集まる。閉場で餌を失ったネズミが逃げ込む可能性は否定できない。また、近くには複数の医療機関や住宅街があり、衛生環境の悪化も懸念される。日本を代表する繁華街・銀座までは、わずか数百メートルの距離。大挙して押し寄せるような事態になれば、ブランド価値を落としかねない。
 築地市場そばで飲食店を営む経営者は、「既に市場から逃げたネズミがこっちに来ている。都が対策を一生懸命やっているのは理解しているが、完全な駆除は無理なのでは」とあきらめ顔だ。

【用語解説】築地市場
 昭和10年、関東大震災で焼失した日本橋の魚市場などが移転して開場。戦後復興とともに世界最大級の魚市場を有するまでに成長した。老朽化から昭和60年代には築地を現在地で再整備する案が浮上し、後に頓挫。平成13年、豊洲市場移転が決まったが、28年に就任した小池百合子都知事が延期を決断した。当初予定から1年11カ月遅れの10月6日に築地市場が営業最終日を迎え、同11日に豊洲市場が開場する。


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