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ユニクロ「無縫製ニット」を支える黒子の正体

 石井 洋平 : 東洋経済 記者

20180921

島精機はアパレル業界の構造を変えられるか
 9月中旬、ファーストリテイリング傘下のユニクロが配布した折り込みチラシ。
「3連休特別号!」と題したこのチラシには最近販売を開始した「3Dニット」について「1本の糸から生まれた今までにない美しさと心地よさ。」とうたいあげている。そのチラシには「日本発の最先端技術が創るホールガーメント」と大きく書かれ、「ホールガーメントは株式会社島精機製作所の登録商標です」との注記があった。

これまでのニット衣料は、編み糸をまず長方形の板状の編み地としたうえで、型紙に沿って前身頃・後ろ身頃・袖といったパーツを切り取り、そうしたパーツや裏当て布などをミシンで縫製することで1つの衣料に仕立てるという手順を踏んでいる。今回、販売する3Dニットは、1本の編み糸からニット服を1着丸ごと編み上げる、「ホールガーメント」という技術を採用。襟部分のネームや洗濯ラベルなどを除き、ニットそのものは完全無縫製で編み立てられている点に特徴がある。

衣料のシルエットが、縫製をしないことで、縫いしろや裏当て布で線や凹凸が出ることがなくなり、布が肌に当たるゴワゴワ感も解消される。ニットならではの伸縮性に富んだ柔らかい外観と着心地をもたらすメリットがあるのだ。 

このホールガーメント技術を独自に開発したのが島精機製作所だ。同社は衣料向けなどの編み機の大手メーカー。

1961年に手袋向けの編み機で創業し、現在はコンピューター制御の横編み機で世界トップのシェアを誇る。 

ファーストリテイリングと島精機が提携を発表したのは201610月のこと。 

島精機のホールガーメント製品の生産子会社であるイノベーションファクトリーにファーストリテイリングが49%出資し、資本参加した。 

ファーストリテイリングは「ニット生産技術を活用した新しい生産システムの確立」や「将来的には、画期的なニット商品の生産を実現化するマザー工場」にすると表明。 すでに2016年、2017年には一部の店舗でホールガーメント技術によるニット衣料が販売されていた。

販売が好調とみた7月、ファーストリテイリングは島精機との「戦略的パートナーシップを強化し、中長期的で包括的なニット商品の開発と技術革新への取り組みを加速」するとし、アジア一円での海外量産体制拡大と生産効率向上、オンデマンド量産システム開発などの目標を表明。そして9月から大々的に3Dニットの販売に踏み切った。


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