セミの羽の構造に抗菌作用


08月27日

研究を行ったのは、関西大学システム理工学部の伊藤健教授らのグループ。
クマゼミやミンミンゼミなどのセミの透明な羽には抗菌作用があることが知られていましたが、これまで詳しい仕組みは分かっていませんでした。グループではクマゼミの羽を詳しく観察したところ、羽の表面に直径5000分の1ミリ以下の、極めて細かい突起が規則正しく並んでいることに注目しました。
そこで、セミの羽をまねて表面に同じようなごく小さな突起が並んだシートを作り、表面に大腸菌が含まれた液体を加えたところ、菌は10分から20分ほどで細胞膜が壊れて死んでしまったということです。
突起の構造が鍵だということで、グループでは家庭の台所から医療関係まで、さまざまな分野に応用が期待できるとしています。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20180827/0006125.html   TV動画アリ

※【技術資料】制御可能なナノ構造を利用した高感度センサーと抗菌素材の創出

                                               @関西大学システム理工学部機械工学科  准教授  伊藤健  

研究の経緯

バイオセンサは医療、食品、環境など様々な分野で 利用されている。バイオセンサには分子認識、信号変換素子、ナノ構造、機能性表面、流体回路など様々な要素技術が必要である。これら要素技術の研究と具体的なアプリケーションを想定した計測システムの開発までを一貫して取り組んでいる。

研究テーマ

 ナノ界面・構造を利用したバイオセンサの開発
 ナノサイズ材料の物理化学的評価とセンサへの応用
 バイオミメティクス(生物がもつナノ・マイクロ構造の模倣と機能評価)
 ナノ構造表面での細胞の挙動観察

 

    ☞ PAT 水晶振動子の製造方法及び水晶振動子 

     https://jstore.jst.go.jp/nationalPatentDetail.html?pat_id=35886

請求項1

水晶からなる基板の表面に、金属からなる電極本体を設ける工程と、

前記電極本体の表面にめっきを施すことにより、前記電極本体を構成する金属に対して、またはそれらの

金属酸化物からなり、前記電極本体の表面に立ち並ぶ多数の柱状体を形成する工程と、を含む水晶振動子の製造方法。

・・・ 


※【特許】殺菌作用を備えた表面を有する合成高分子膜  @シャープ株式会社 

 * ☞ 今回発表された関西大学の製法と同様の主旨の特許情報(文献からの発想特許)

https://patents.google.com/patent/WO2017179531A1/ja

<Description>  殺菌作用を備えた表面を有する合成高分子膜

 本発明は、殺菌作用を備えた表面を有する合成高分子膜、合成高分子膜の表面を用いた殺菌方法、合成高分子膜を製造するための型および型の製造方法に関する。ここでいう「型」は、種々の加工方法(スタンピングやキャスティング)に用いられる型を包含し、スタンパということもある。また、印刷(ナノプリントを含む)にも用いられ得る。
 最近、ブラックシリコン、セミやトンボの羽が有するナノ表面構造が殺菌作用を有することが発表された(非特許文献1)。ブラックシリコン、セミやトンボの羽が有するナノピラーの物理的な構造が、殺菌作用を発現するとされている。
 非特許文献1によると、グラム陰性菌に対する殺菌作用は、ブラックシリコンが最も強く、トンボの羽、セミの羽の順に弱くなる。ブラックシリコンは、高さが500nmのナノピラーを有し、セミやトンボの羽は、高さが240nmのナノピラーを有している。また、これらの表面の水に対する静的接触角(以下、単に「接触角」ということがある。)は、ブラックシリコンが80°であるのに対し、トンボの羽は153°、セミの羽は159°である。また、ブラックシリコンは主にシリコンから形成され、セミやトンボの羽はキチン質から形成されていると考えられる。非特許文献1によると、ブラックシリコンの表面の組成はほぼ酸化シリコン、セミおよびトンボの羽の表面の組成は脂質である。


仏マルセイユ(Marseille)で撮影されたセミ(2013年7月28日撮影、資料写真)。(c)AFP/BORIS HORVAT


ナノ表面構造に強力な抗菌効果、トンボの羽から着想     豪研究    /  発信地:パリ/フランス [ ヨーロッパ フランス ] 

                                                                                                                                                     2013年11月27日   

【11月27日 AFP】細菌が存在しない病室、ドアノブ、台所の調理台などを想像してほしい──しかも細菌を殺すのに熱湯やマイクロ波の放射、殺菌剤の1滴も必要ないとしたら――。オーストラリアの科学者らによる驚くべき発見をもたらした背景には、このような発想があった。豪スウィンバーン工科大学(Swinburne University of Technology)のエレーナ・イワノワ(Elena Ivanova)氏率いる研究チームは26日、昆虫のトンボからヒントを得て、細菌を物理的に殺すナノテクノロジー表面構造の発見に至ったとの研究論文を英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表した。殺菌効果を持つのは、1990年代に偶然発見された「ブラックシリコン」で、現在は太陽電池パネル用の半導体として有望視されている物質だ。ブラックシリコンの表面を電子顕微鏡で見ると、高さ500ナノメートル(1ナノメートルは、10億分の1メートルに相当)の先が鋭くとがった突起が林立する構造になっている。この構造に細菌が触れると、細菌の細胞膜が破れることを研究チームは発見した。撥水性を持つ表面はどれも、このような殺菌剤としての物理的性質を持つことが明らかになったのは、今回が初めてだ。研究チームは2012年、人間にも感染し、抗生物質への耐性を持つようになる「日和見菌」の1種の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対して、セミの羽が強力な殺菌作用を及ぼすことを発見して驚嘆した。       詳細な調査の結果、答えは羽の生化学的な性質ではなく、羽の表面に等間隔に並ぶ「ナノピラー極微細突起)」にあることが分かった。細菌は、この表面に付着すると粉々に切り裂かれてしまう。 研究チームはこの発見をさらに追究するために、ベニヒメトンボ(学名:Diplacodes bipunctata)と呼ばれる、豪州に生息する赤い体色のトンボの透明な前羽の表面を覆うナノ構造を調べた。             ベニヒメトンボの羽には、ブラックシリコンよりも少し小さな、高さ240ナノメートルの突起構造がある。このトンボの羽とブラックシリコンの性能を実験室で検査したところ、両方とも極めて強力な殺菌能力を持っていた。指触りが滑らかなこれらの表面は、グラム陰性菌(Gram-negative)とグラム陽性菌(Gram-positive)と呼ばれる2種類の細菌と、特定の時期の休眠細菌の表面を覆う保護膜の芽胞(がほう)を破壊した。今回の実験対象となった細菌は、緑膿菌、悪名高い黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、広範囲に生息する土壌細菌で炭疽菌の仲間の枯草菌(Bacillus subtilis)の極めて丈夫な芽胞の3種だ。細菌を付着させてから3時間経過後の表面1平方センチ当たりの殺傷率は、1分当たり細菌細胞45万個ほどだった。これは、黄色ブドウ球菌を人間に感染させるのに必要な最小量の810倍で、緑膿菌では7万7400倍に相当する。ブラックシリコンの製造コストがネックになるのであれば、ナノスケールの細菌殺傷能力を持つ表面を作るための選択肢は他にも多数あると研究チームは指摘しており、「同様の有効性を示す抗菌性の合成ナノ物質は、幅広い分野で容易に製造できる」と記している。(c)AFP

http://www.afpbb.com/articles/-/3004075


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