なぜ日本は「部品」が強いのか? 


世界の製造業を支える日本の微細加工技術


ものづくり=開発設計・デザイン+製造+生産プロセス 

 世界のものづくりを俯瞰してみると、

 ・限界費用ゼロのソフトウェア・プラットフォームビジネスの米国

 ・高品質かつローコストな商品を全世界に供給する台湾・中国

 ・安定的な大量生産を支える生産財・部品・材料を供給する日本

 

加工技術は、左図に示した「製造の7分類」のどれか1つで完結することはありません。例えば、「切削」とはフライス加工・旋盤加工がその代表的な加工技術ですが、対象物である「素材」が鋼なのか特殊鋼なのか樹脂なのかによって、その技術・ノウハウは異なります。 さらに多くの場合、「切削」だけでなく「素材」の中に分類されている「熱処理」や「表面処理」を伴います。部品の耐久性や強度を高める上で、「素材」「切削」の知識はもちろんのこと「表面処理」の知識も不可欠です。 「塑性」の場合も同じです。「塑性」加工とは切削とは異なり切り粉を出さない“非除去加工”の1つですが、加工対象となる「素材」が鋼の薄板の場合は板金加工・プレス加工になります。板金加工は薄板の切断・曲げ・打ち抜きが主な加工方法ですが、「接合」の中の溶接技術も合わせてよく使われます。もちろん「表面処理」もです。 鋼のブロック材であれば熱間鍛造・冷間鍛造を適用することが多いでしょう。例えば、冷間鍛造の場合は多くの場合で2次加工の「切削」を伴い、さらに「素材」の中に分類される「熱処理」や「表面処理」を伴います。 この様に多くの場合、加工技術は1社では完結しません。1つの部品を造るにしても、数多くの工程が必要であることがよく分かります。 日本国内に約40万事業所あるといわれている製造業のうち、受託型加工業の事業所数は半分の約20万事業所といわれています。この20万社のうちの多くが、多様な加工技術を提供しているのです。裾野の広い、かつ細分化された膨大なサプライチェーンの存在こそが、日本のものづくりの最大の強みといってよいでしょう。



以下、記事のURL:https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/column/15/051900112/00001/ 

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   ものづくりの3分類と輸出に占める割合


電子部品ハンドリング用微細ノズルの例 

電子部品を吸着させ、ハンドリングするための微細ノズル(上2つはCAD図、下2つは写真)。耐久性が求められるため超硬合金でできており、先端には0.1mm台の微細な穴あけ加工がなされる。 近年は電子部品の小型化により、こうした吸着ノズルもより微細穴、かつ高アスペクト比(深穴)の加工技術が必要とされている。
                              資料提供:プラスエンジニアリング

 “ものづくり”は大きく「素材」「部品」「商品」に分けることができます。これを日本の輸出品総額(約70兆円)に置き換えると比率は1:1:2となります(左図)。

日本の“ものづくり”を語るとき、我々も目にする機会が多い「商品」、すなわち家電やAV機器・モバイル機器などについて、日本製「商品」の凋落が取り沙汰されてはいますが、輸出額の約半分を占める「素材」「部品」において日本は世界でも高い競争力を保有しています。例えば、米Boeing社に最新旅客機の炭素繊維を供給する東レ、自動車の軽量化に欠かせない超ハイテン(高張力鋼板)材などは日本の鉄鋼メーカーの独壇場です。

なぜ日本は「部品」が強いのか? 

それは日本の部品「加工技術」が世界一だからです。

特に「微細加工」と言われる、近年のIoT(Internet of Things)に必要とされる高精密分野の加工において日本は世界一と言えるでしょう。
 例えば、高性能なスマートフォンを造るためには、組み込まれる電子部品の小型化が必須テーマとなります。そうすると、今度はその小さな電子部品をハンドリングするためのノズルが必要となりますが、このノズルに開ける穴はより小さく、より長い穴である必要があります。想像してみれば容易に理解できることではありますが、穴が小さくなればなるほど長い穴を開けるのは困難です。
しかし、こうした困難に逆行する加工技術があるからこそ、日本はiPhoneの電子部品のうち50%ものシェアを握っているのです。

微細加工技術は小規模・中小企業の技術

 こうした微細加工技術の大半は大企業ではなく、中小企業(資本金3億円以下または従業者300人以下)あるいは小規模企業(従業者20人以下)が有しているケースが大半です。日本国内には約420万社の企業のうち、大企業は0.3%の1万2000社にすぎません。全体の99.7%は小規模・中小企業です。さらに従業者でいえば69%、製造業付加価値の53%が小規模・中小企業です。このように日本は中小企業大国ともいえるわけですが、こうした製造業の小規模・中小企業が担っているのが「部品」の中でも「加工技術」なのです。 



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