おがわの音♪ 第586版の配信


自分がもつ知識をオープンにすると、これほどまでに得をする

 2018417

 グーグル、マッキンゼー、リクルート、楽天など12回の転職を重ね、「AI以後」「人生100年時代」の働き方を先駆けて実践する尾原和啓氏が、その圧倒的な経験の全てを込めた新刊『どこでも誰とでも働ける』419日より発売となる同書の一部を先行公開します。

「自分の知識はオープンにしろ!」とはよく言われることですが、これまではその理由が分からず、腹落ちしていなかった人も多いはず。

尾原氏は、知識をオープンにすることの明確なメリットをいくつも教えてくれます。

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尾原和啓 (おばら・かずひろ)

1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。

マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレイトディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)、Fringe81(執行役員)の事業企画、投資、新規事業などの要職を歴任。現職の藤原投資顧問は13職目になる。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。著書に『ITビジネスの原理』『ザ・プラットフォーム』(NHK出版)、『モチベーション革命』(幻冬舎)などがある。


 20人の目で記事を読める!

  誰にとっても、もっともギブしやすく、また受け取りやすいのが「知識」です。

  たとえば、ぼくは毎朝1時間かけてニュースをチェックして、おもしろい記事があったら、その記事のURLをメールにコピペして、最低でも20人の人にギブしています。 といっても、Ccで全員に同じメールを送るのではなく、相手に合わせて別々の記事を取り上げ、「あなたはこういう視点でこのニュースを読むとおもしろいと思う」と一言添えて送っています。

  なぜそんなことをしているかというと、・・・

 「このニュースは〇〇さんの役に立ちそう」「〇〇さんならこの記事をどう読むだろうか」とつねに視点を変えながら読むことになるので、結果として、20人分の視点を自分の中にもてるからです。

  誰かの目線で記事を読む習慣をつけることによって、ぼくは、お客様と打ち合わせをするときも、相手の視点に立って「どうしたら喜んでもらえるか」を考えることができるようになりました。また、自分のためなら3トピックくらいしか読まないところを、20人の目で記事を読むことになるので、1人あたり3トピックとして、20通りのモチベーションで、60本もの記事に目を通すことができるわけです。それによって、インプットの量を無理なく確保できるだけでなく、実際にその相手と会ったときに、「例のあの記事なんですけど……」と話の糸口がすぐに見つかります。

 その記事が相手の心に響いていれば、「そうなんだよ。実はこんなことを始めようと思っていて、よかったらちょっと助けてくれない?」と声をかけていただけるかもしれません。 

に言ったということ自体がブランドになる!

 「せっかく自分が先取りした情報やアイデアを、ただで他人に教えてしまうなんてもったいない」と思う人もいるかもしれませんが、そんな心配はいりません。 壁をつくって知識を隠すことのメリットはどんどんなくなっています

 昔は知識を自分だけのものにして、こっそり出し抜いてやるというやり方で一定の成果を上げることができましたが、いまはネットで調べれば、たいていの情報は手に入ります。自分だけが知っていることなんて実はほとんどないことがわかるし、自分が思いつくようなことは、世界中で1000人は思いついていると思ったほうがいい。

 そうなると、自分が隠しても誰かに先にやられてしまう可能性が高いのです。

  結局、スピード勝負ということであれば、自分だけでコツコツやるのではなく、オープンにしてまわりの人をどんどん巻きこんで スピーディに実現しないと間に合わないわけです。自分のもつ知識をオープンにすると、「旗を立てる」という効果もあります。

 要するに、最初にそれを言った人というふうに、まわりの人が認知してくれる。

 最初に言ったということ自体がブランドだし、旗を立てたところには、それに関心がある人たちや情報がどんどん集まってきます。

  会社という小さな枠組みの中で縮こまっているよりは、どんどん情報をオープンにして回していったほうがより多くの情報が集まるし、結果的に、あなたにも力が宿ることになります。

 もっと大事なのは、そうやって自分からオープンにしていれば、・・・

 「あいつの頼みなら聞いてやろう」「あいつが会いたいというなら会ってやろう」と思ってもらえるようになることです。

 こちらが先に信じて頼れば、相手も返してくれるわけです。

  だからぼくは、相手が初対面の方でも「騙されたと思って、30分間ぼくと話をしてください」とお願いしたりしています。

 30分もあれば、たいていの方に満足していただけるので、そこで意気投合して、それがまた次のネットワークにつながっていきます。

会ったことがない方でも、フェイスブックに「◯◯さんに会ってみたい」と書きこめば、知り合いの誰かが紹介してくれます。

  自分からも、この人とこの人をつなげたらおもしろいと思えば、どんどん紹介しています。

 「尾原が言うなら、会ってみるか」ということで、実際に会うと、一定の割合で「あの人、おもしろかったよ。最高!」といったリアクションが返ってきます。

 そこから事業が生まれることもあります。仮にぼくがそこに絡んでいなかったとしてもいいのです。ぼくには「分け前をよこせ」みたいな気持ちはまったくありません。

  そうしたことが可能なのは、ぼくがそれまでやってきたことを、みんな知っているからです。

 「尾原の言うことなら間違いない」という信頼の貯金が貯まっているわけです。

  結局、知識や情報は隠すよりもオープンにしたほうが自分のためにもなり、他の人からも信頼されるから、圧倒的に得なのです。

  営業なら、たとえば顧客リストやお客様に関する情報を、自分の手柄をあげるためだけに囲いこむよりも、社内で情報共有すれば、

 「それなら、あの人に会うといいよ」「こんな提案のほうが受け入れられるかも」とアドバイスをもらえるかもしれません。

自分が情報を出していれば、相手も返してくれる

それによって、自分の業績が上がるだけではなく、チーム全体の士気も上がり、同僚からも信頼されるという好循環が生まれます。

 もし、あなたが今いる会社が情報を囲いこんだほうが勝てるゲームをしていたとしても、ちょっと外に出てみれば、壁をつくらず、他の人からの信頼を蓄積したほうが有利になるゲームが大々的におこなわれています だったら、外に出て、人とのつながりを大事にしたほうがいいのでは、とぼくは思います。

 壁をつくらないことで生じるデメリットなんて、実はほとんどないのですから。