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トランプ外交に正面からぶつかれば日本は破滅する

石破総理に足りない「神レベルの演技力」と「安倍になる勇気」

2024.12.04 

by 冷泉彰彦

トランプ次期米大統領は来年120日に就任予定。日本の石破総理は「トランプ外交」に上手く対応できるのか?早くも各方面から不安の声があがっている。これに関して、2025年の石破氏には「最高レベルの演技」と「安倍になる勇気」が必要になると指摘するのは米国在住作家の冷泉彰彦氏だ。   もしも対応を間違えれば、誇張ではなく日本という国自体が破滅しかねないため、こと日米外交に関しては国内政争の具にすることなくオールジャパンで挑む必要があるという。



日本は「またトラ」外交にどう対処するべきか?

トランプ次期大統領の閣僚人事、ホワイトハウス人事、主要大使等の国務省人事がほぼ固まってきました。

選挙前のトランプ本人の言動からは、ある程度予想されていた方向性に沿っているのは確かですが、それにしても、人事があまりに徹底的なことで、あらためてアメリカではサプライズの印象が広がっています。

今回は、特にトランプの志向している外交の方向性について、とりあえず見えている方向性と、現実に進行している国際情勢を照らし合わせながら、私たちがこのまたトラという現象を、どう理解すればいいのか、論点を整理したいと思います。 

まず先に「個別の衝動」が存在するのがトランプ外交

独裁者との個別交渉を好み、同盟国の民主的な手続きを嫌うという奇怪な態度がトランプ外交にはあります。

これを見ていると、トランプは危険な独裁者で、民主主義を破壊しているということになります。

ハッキリ言ってそうなのですが、そのように包括的な理解をして全否定をしても、そこからは具体的な対策は出てきません。

これは石破茂氏のような、恐らくは「トランプ的な人格とは合わなさそうな人」の場合に勘違いしやすいので注意が必要です。

トランプは独裁国の側の人間で、ファシストだという「レッテル貼り」をしてしまうと、そこで思考が止まってしまうのです。これではいけません。

どうして、トランプ主義があのような外交方針を掲げているのかは、もっともっと考察が必要です。注視すればするほど、イヤな気分になるというのはよく分かるのですが、そこで立ち止まっていてはダメだと思います。 

トランプ外交に「大方針」はない

まず、確認しておきたいのは、トランプの外交というのは「大方針」があって、そこから順次具体策を考えるように思考を「下ろしていく」ものではないということです。むしろ反対であって、つまり個別の衝動とか情念のようなものがあって、それが重なったりまとまったりしながら、外交方針「らしき」ものが形成されていく、そんな順序なのだと思います。

トランプ外交を構成する衝動や情念に関して、まず指摘できるのはアメリカ国内のエリートへの激しい反発という感情です。

そして、これまでエリートたちが維持してきた「現状」を破壊したいという衝動が続いています。 

トランプとその支持者たちが考える「外交」の危険な中身

では、そのエリートへの反発や現状破壊というのが組織的にまとまっているのかというと、そうでもなく、バラバラのエピソードの断片が、感情的に束ねられているというのが実情でしょう。

例えば、

「ヨーロッパはアメリカをバカにしているくせに、NATOの安全保障にはタダ乗りをしている。カネを払わないのなら切り捨てたい」

「米軍には、捕虜や傷病兵を功労者、英雄とするカルチャーがあるが、意味不明だ。捕まった捕虜、怪我をした傷病兵は敗者であって、英雄ではない」

「アメリカの根幹には秘密の権力組織『ディープ・ステート』が巣食っていて、これが軍産共同体の利権を代表し、世界で戦争を起こしている」

「この『ディープ・ステート』の悪を暴露してきたのが、ジュリアン・アサンジであり、エドワード・スノーデンだ。この2人は英雄だ」

「ヨーロッパは、シリア難民などを勝手に入れて国内が混乱している。これは自業自得だ」

韓国はアメリカと有利な通商条約を結んで、電子機器も自動車もやりたい放題だ。だったら、在韓米軍の維持費は100%払わせてやる」

日本も韓国も駐留米軍のコストを100%払わなかったら米軍は撤退だ。その代わりに、日韓には核武装を許してやる

「同盟国は民主主義なので、いちいち世論の意見を聞かないといけないので、何を相談するにしても時間が掛かる。それに言論が自由なので、アメリカの悪口を言ったりウルサイ。でも独裁国なら、独裁者との丁々発止のディールをすれば一発で問題は解決する」

「他国に言論の自由はあろうとなかろうと、知ったこっちゃない。ただ、アメリカ人が血で勝ち取った自由を脅かすものは始末する」

「合衆国憲法の基本的人権は先人たちが血で勝ち取ったものだから、不法移民やテロ容疑者には絶対に適用したくない

というのが、トランプとその支持者の考える外交です。21世紀の西側の産業国の人々が聞いたら非常に不愉快ですし、何よりも過去のアメリカが世界で果たしてきた責任感をほぼ100%捨ててしまっているわけで、非常に極端な発想法だと思います。

 

トランプが破壊する「3つの大原則」と日本の危機

トランプを突き動かしているこうした衝動には、確かに1つの底流はあります。

これはアメリカの孤立主義というもので、これが20世紀の後半以降で最も極端になったものがトランプ外交と言えます。

アメリカの孤立主義は、共和党の伝統にはしっかり組み込まれているものであり、基本的には「ヨーロッパのトラブルには介入しないことで、アメリカは勝手な繁栄を継続したい」という態度のことです。

歴史的には、第一次大戦の初期、第二次大戦の初期の2回、アメリカ共和党はかなり強硬にこうした孤立主義の立場から「欧州大戦への参加拒否」という態度を示しました。

これに対して、欧州の同盟国を救うために参戦を主張し、また後に実行したのは民主党だったのでした。

冷戦期においても、実際に「熱い戦争」であるベトナム戦争にのめり込んでいったのは民主党のケネディとジョンソンで、いずれも民主党でした。

冷戦を始めたアイゼンハワー、ベトナム戦争を止めたニクソン、冷戦そのものを終わらせたレーガン、ブッシュはいずれも共和党です。ですから、トランプが孤立主義に傾くとか、ウクライナ戦争を終わらせようとすることには歴史的必然はあるということになります。

問題は、アイク、ニクソン、レーガン、ブッシュが追求した「戦争をしない」「戦争を終わらせる」ことによる「国益」には「世界の安定」という目的が入っていたのに、トランプの孤立主義や介入拒否の姿勢はそうではない、ということです。ですから、国際社会としては、冷静な警戒感が必要なのは間違いありません。ただ、アメリカ保守の孤立主義には長い伝統があり、その延長にトランプ外交が位置づけられるのは事実だと思います。

その一方で、トランプの言動の中には、次のような印象を与える部分があります。

それは、20世紀の歴史によって作り上げられた3つの大原則、

東西対立の枠組み

日本の降伏と朝鮮戦争休戦による東太平洋の平和

イスラエル、パレスチナ2国家体制による中東和平

この3つをすべてぶっ壊してしまおうという野心です。

トランプの姿勢については、考えれば考えるほど、そのような意図を感じてしまうのです。

トランプの「放言」をそのまま受け止めて、そこにある種の一貫性を見るのであればそうなるわけですが、ここが一番大事な点で、うろたえてはダメです。

 

トランプ本人もコア支持者も「難しいことはわからない」

重要なのは、トランプ本人やコア支持者には「そんな難しいことはわからないのであり、だからこそ、メッセージにもならないし、目標にもなっていない、ということです。

そもそも、トランプ支持者は歴史などまったく興味がないし、まして世界の歴史など勉強したことはありません。

ですから、「冷戦構造におけるアメリカの負担は拒否する」などという発想はありません。

そもそも「冷戦構造」などという言葉の意味は理解できないのです。

「サンフランシスコ体制」などという難しい言葉などには、むしろ拒否感を持つと思います。

つまり、過去にある壮大な歴史をまったく知らないので、壮大な破壊をやろうというような頭の構造にもなっていません。

一見すると、トランプはG7で安倍総理やメルケル首相(いずれも当時)に囲まれて「それは違うでしょ」と言われていたときと比較すると、プーチンや金正恩と一対一で雑談しているほうが嬉しそうに見えます。ですが、それはそれだけのことなのです。強権主義が好きで、民主主義が嫌いというわけではないのです。これはトランプが実は民主主義を信奉しているということではなく、そもそも、強権主義とか民主主義といった「概念」とはまったく無縁の人々に支えられているというだけです。

例えばカマラ・ハリスは、トランプのことを「ファシズム」とか「ファシスト」といって批判しましたが、トランプ支持者は「そうした政治的な概念語」を知らないので、単に悪口を言われたと思っただけです。

ですから、サンフランシスコ体制の破壊だとか、中東和平の破壊だとかという、壮大なプログラムがあるわけではありません。

そもそも、そうした歴史、政治、思想、概念といったものと無縁の人々に支えられているのがトランプ現象だからです。 

ただし「おまえは敵か味方か」を判別する感覚は異常に鋭い

では、トランプ外交は衝動的な感情論の寄せ集めであり、とにかく大過なく4年が過ぎるように傍観していればいいのかというと、そう簡単ではありません。

それは、トランプという人間、そしてトランプ派というのは、相手が敵か味方かを判別する感覚が異常に鋭いからです。

そして一旦敵とにらまれたら「ネチネチと攻撃」を続けます。そして、そこで真に受けて論争を仕掛けようものなら、相手が激怒するような誹謗中傷を繰り出して、どんどん自滅に追い込むのです。

2016年の最初の当選からトランプ第一次政権の時代において、日本は、当時の安倍総理を外務省と官邸がしっかり支える中で、「安倍と日本は敵ではない」という「演技」を極めてハイレベルにやり通しました

天皇皇后両陛下までが、当時は国際社会からバカにされていたメラニア夫人をターゲットに、ハイレベルな腹芸を展開して「メロメロにさせる」ことに成功したのでした。

一部には、日本のこうした態度は卑屈であり、国家の威信という観点から、また暴言や性差別を平気でやるトランプに屈したという印象論から「安倍外交はダメだ」的な批判がありました。もしかしたら、石破茂氏などは、そのような印象を持っていたかもしれませんが、これは違うのです。

トランプとその背後の支持者は、いわば宇宙人なのですから、味方だよ」と思わせて暴発を防ぐのが国益だという、冷徹な理解が何としても必要です。 

石破総理に求められる「最高レベルの演技」と「安倍になる勇気」

仮に、本当に仮にですが、石破さんはどう考えても「トランプ的なるもの」が嫌いであり、どうやってもトランプの「味方」だという演技はできなさそうだから、ここは石破さんの好きにやらせて自滅してもらおう――政界にはそんなイタズラを考えている部分があるかもしれません。

麻生氏にしても、あるいは高市氏にしても、本人はともかく周囲には、そんな発想もあるのではと思います。

ですが、これはダメです。そんなことをしたら、石破さんだけでなく、日本全体が破滅してしまいます。

ですから、石破さんにはどうしても「最高レベルの演技」をしてもらわねばなりません。それが嫌なら、本日ただ今、即刻退任してもらわねばダメです。

 

日本が絶対に隠し通すべきこと(1)在日米軍への態度

日本のリスクは石破リスクだけではありません。それ以上に怖い2つのリスクがあると考えておいたほうがいいです。

1つは在日米軍への態度です。沖縄で顕著ですが、全国にも「在日米軍が駐留しているのは負担だ」という態度があります。

例えば米軍のヘリが事故を起こしたり(屋久島など)、緊急着陸したり(神奈川など)といった場合には、日本の報道は「危険だから米軍が悪い」ということになります。

基本的にトランプ支持者は「海外ニュース」など興味はないし、「世界のローカルな視点」などは持っていません。ですから、現時点ではバレていません。

ですが、仮にこれからの4年間にこうした点がバレてしまうと、大変なことになると思います。

「こっちがカネもリスクも出してやって守ってやっているのに、米軍が負担だと?敵視だと?テメエが被害者だと?冗談じゃねえや、じゃあ、さっさと出ていってやるぜ」

ということになるからです。 

日本が絶対に隠し通すべきこと(2)核兵器の問題

もう1つは核兵器の問題です。

「えっ?核の傘っていうのは、こっちが再報復されるリスクを取って守ってやってるんだぜ。それを核禁止条約で違法にしようとか、持ってねえくせに核軍縮がどうとか、アホかってんだ。いいよ、じゃあ、核の傘は外してやらあ」

と言われるのがせいぜいでしょう。

とにかく、在日米軍と核兵器という2つの話題はナシにしておかないと大変なことになります。

私は、日本は核禁条約のオブザーバーになって、NPTとの二重体制にすべきだと思っていますが、向こう4年間はそのような提言はできないと判断しています。また在日米軍に関しては、地位協定の改定は必要ですが、これも向こう4年間は封印すべきだと思います。

むしろ現状を維持して抑止力を堅持することが何よりも大切です。

トランプに妥協したり、媚びを売りたいのではありません。そもそも、敵か味方かという単純な発想法しかなく、「高度な概念」とか「詳細な事実」にはまったく興味がないのがトランプという政治現象なので、現実的に無理だからです。

 

関連記事 抜粋

米大統領選は“歴史的大接戦”の前評判をよそに、蓋を開けてみればトランプ氏の圧勝で終わった。

アメリカの有権者は何に怒り、何を期待してトランプ候補に一票を投じたのだろうか。

物価・雇用・住宅の3点から詳細に分析すると、意外な事実が見えてきた。

実はハリス候補の敗因となったこれらの問題はトランプ氏にも到底解決は不可能なのだ。

いわばトランプ新大統領は「戦う前から負けている」状況と言える。

 

 ☞ 今回の場合は、物価、雇用、住宅の3点セットだと思います。

これが大きな国民の関心事というよりも、困窮の原因となっているわけですが、この点をハリス候補は訴えることができませんでした。

トランプ陣営にも具体的な対策があるわけではないのですが、とにかく現政権批判をすれば、ハリス氏は現職の副大統領ですから簡単に批判できてしまうわけです。そんな選挙戦では、民主党に勝ち目はなかったのだと言えます。

とにかく物価高への怨念が全国に渦巻いていたこと、この点を政権がしっかり認識して国民に説明することができなかった、これが一番の敗因だと思います。

 

 ☞ 今回のアメリカの物価高は、非常にタチが悪い現象です。とにかく多くの要因が複合しているからです。

物価にしても、雇用、住宅にしても、とにかく有権者の苦しみの原因としては格差の問題があります。

トランプ陣営は、格差を放置し富裕層には減税を与えるクラシックな共和党路線と、貧困層、現場労働者の怨念をすくい上げるイデオロギー運動を接続するというウルトラC続けています。この無理な組み合わせがどういう展開を進むかは全く不透明ですが、とにかく、富裕層の代表であるにもかかわらず、格差の底辺を実感している層を取り込んでいるのは事実です。

一方で、民主党の側は結局のところ「持てる層」「意識の高い層」の代表という位置づけを脱することができませんでした

これが今回の選挙の本質的な敗因であると思います。


トランプの石油増産が招く世界危機


産油国の経済破壊、金融市場の混乱リスクも

斎藤満

20241128

「トランプ政権2.0」のエネルギー政策は、世界の温暖化対策や地政学的リスクにどのような影響を及ぼすのでしょうか。 化石燃料増産によるエネルギー価格下落が予想されますが、ほかにもOPECやロシアの苦境、イランの石油施設攻撃リスク、さらには米国経済やドル基軸体制への影響も考えられます。

化石燃料増産が世界危機を招く?

20251月にスタートする「トランプ政権2.0」では、再びパリ協定から離脱し、石油・天然ガスの増産を図り、米国のエネルギー価格を下げてインフレの改善を進めるといいます。少なくとも4年間、化石燃料の増産を進めれば、世界のCO2抑制努力が報われず、温暖化を促進してしまうリスクがあることは指摘される通りです。

米国自身、近年は自然災害で大きな被害が出ているために、多くの国民が温暖化の抑制を求めますが、今回はそれ以上にトランプ氏の強いリーダーシップに賭けたい国民が多く、温暖化防止は、少なくとも米国ではしばし棚上げとなりそうです。

しかし米国のエネルギー増産は、地球の温暖化危機を招くだけでなく、別の形で世界に大きなリスクを課す可能性を秘めています。

 

OPEC、ロシアが苦境に

まず、米国のエネルギー増産は、OPEC、ロシアの「減産をして石油価格を維持しよう」との努力に水を差します。

石油収入を国家の柱とするこれらの国は、原油価格を高値維持するために、あえて減産を進めています。

その中心はサウジアラビアで日量300万バレルの減産をしています。UAE140万バレル、OPECプラス全体で586万バレルの減産中です。

その他の中東産油国ではそもそも減産余地が少なく、もっぱらサウジとロシアの減産が柱になっています。このうちサウジアラビアは多くの王族メンバーを養うためには石油収入の確保は不可欠で、減産してでも価格を維持しなければなりません。

ロシアもエネルギー収入が国家財政の中核になっているので、戦争を続けるロシア経済はエネルギー価格いかんとなっています。今は価格維持のためにやむなく減産に応じています。

そこへ、すでに世界一の産油国になっている米国が、トランプ政権のもとでシェールガスやオイルの増産を計画しています。すでにトランプ氏はEUのフォンデアライエン委員長と会談し、欧州向けに米国の天然ガスを供給する話もつけています。

中国をはじめとするエネルギー需要低迷の中で、米国がその増産に出て世界への供給を増やせば、世界のエネルギー需給は緩和し、価格が下落しやすくなります。

減産していながら価格が下落すれば、OPECもロシアも大きな打撃となります。

ロシアはトランプ大統領のイニシアティブで停戦となれば、戦争のための経済負担は軽減されますが、それでも石油などの国家収入は減り、経済的には大きな打撃となります。

またOPECは単純に原油価格の低下で収入減となり、減産は収入減に追い打ちをかける懸念があります。

しかしOPECまで増産すれば、どこまで価格が下落するかわからないジレンマとなります。原油価格が急落すればロシア経済も持ちません。 

イランの石油生産破壊も

OPEC諸国には反米感情が高まりかねませんが、米国とまともに喧嘩はできません。

そこで狙われそうなのがイランです。サウジは自ら減産したくないものの、原油の供給を減らすためには、イランの石油生産施設を破壊し、全体の供給量を抑える手段としたいのではないかと思います。47

イランは現在、日量320万バレルの石油を生産し、中国などに170万バレル輸出しています。

サウジは近年、イスラエルに接近し、ユダヤとイスラムの敵対関係を超えて良好な関係を構築しています。

サウジと米国との間には厄介な問題もあり、米国にイランを攻撃させるのは容易でありません。

しかし、イスラエルはすでにガザのハマス、レバノンのヒズボラと戦闘を続け、背後のイランとも報復戦の応酬を展開しています。

いずれも世界地図から消滅させたい敵対関係にあります。

サウジはイスラエルに働きかけ、イランの石油施設を空爆し、破壊するよう求める可能性があり、イスラエルシンパのトランプ次期大統領も反対しない可能性があります。

この場合、イランの輸出余力がなくなる程度の被害なら米国は今より170万バレルほどの増産をしても全体の需給は変わりません。

またイランの石油施設全体を破壊すれば、ロシアが増産してイラン、中国に輸出する道が開けます。しかし、イランの石油施設破壊となれば、市場では地政学リスクが高まり、原油価格の上昇だけでなく、いったんはリスクオフの株売り、米国債買いが生じ、リスクオフのもとで円やドルが買われる可能性があります。

イスラエルがヒズボラと停戦に出れば、こうした地政学リスクは軽減されますが、反面イランを攻撃する口実もなくなり、原油需給の悪化、原油価格の下げが問題になります。 

米国のインフレは改善せず

トランプ氏のエネルギー増産の狙いは、エネルギー価格の下落を通じて米国のインフレを退治し、バイデン政権で実現しなかったインフレ抑制を、トランプが実現することを狙っています。

しかし、米国によるエネルギー増産は米国自身の生産増、所得、雇用の増加を通じてインフレ圧力になる面があります。

トランプ政権ではこのエネルギー増産とともに、企業や個人への大幅減税を予定し、金融や仮想通過などでの規制緩和も予定していて、これらが米国景気を刺激し、潜在成長率(1.8%前後)を上回る成長が続き、需給ひっ迫の中でインフレ圧力が高まります。

しかも関税賦課で安い輸入品が入らなくなり、その面からもインフレを助長しかねません。

このため、少なくともFRBが注視するエネルギーを除いたコアのインフレ率はむしろ高まる可能性があり、トランプ氏が狙うインフレ抑制の効果は上がらないリスクが大きいとみられます。 

ドル高からドル暴落リスク

そうなると、FRBはインフレ再燃リスクの中では利下げを続けられなくなり、少なくとも市場では長期金利がさらに上昇して、為替市場ではドル高が進むとみられます。トランプ氏はドル高を是正するためにFRBに利下げを求めますが、さすがにFRBはインフレ懸念があれば政治圧力があっても利下げには応じられません。

政治的にドルを下げる場合、1985年の「プラザ合意」にならって「トランプタワー合意」を試みようにも、欧州との関係が悪化する中では協力を得られないとみられます。

そうなるとトランプ大統領は、思い通りにならないFRBをワシントンの直轄下に置き、あるいは1913年以前のように、FRBを廃止し、政府が直接金融政策から通貨の発行、管理に乗り出す可能性があります。

そうなると為替市場、金融市場はパニックに陥ります。ドル基軸体制が揺らぎ、ドルが急落するリスクがあります。新NISAで米国株を買った多くの日本の投資家は、大きなダメージをこうむります。 

トランプ氏の金融政策管理には要注目です。



 

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