よみがえれ、プラ 静電気で精密分別
家電がおもちゃ材料に
2024.10.08.
朝日新聞デジタル
頑張って分別しても、実際には多くが焼却・熱利用されているプラスチック。再びプラとしてよみがえらせようと、企業が技術を磨いている。国内でも再生プラの利用が一部義務化される見通しで、有限な資源をできるだけ循環させる「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の流れが強まりそうだ。
9月1日まで都内で開かれた東京おもちゃショー。ダイヤブロックで知られる玩具メーカー「カワダ」(東京)の新作「メグリイロ」が家族連れの注目を集めていた。ブロックは赤、黄、青、色とりどりながら、シックな風合い。
「これは家電に使われていたプラスチックを再生したもの。再生プラは様々な色が含まれるので、ベースが少しくすんでいる。色合いをいかした自然な色味になることを意識しています」 説明してくれたのはカワダと共同開発している三菱電機の奥田勇さん。メグリイロという名にはプラが循環する理想の姿を重ねた。
プラの原料は石油だ。高温で熱分解してできる0・1ナノ(ナノは10億分の1)ほどの炭素と水素の小さな部品(モノマー)を無数につなぎ合わせてプラが作られる。100種類以上あり、使用後に回収しても分別しないと再生利用しづらい。
「社会で何周もプラスチックを利用できないか。20年近く電機メーカーとして開発を重ねてきました」。三菱電機の井関康人さんは振り返る。同社が取り組む分別方法が「静電選別」だ。その名の通り、静電気の力が肝になる。分別を行う千葉市の子会社の工場を見せてもらった。家電由来のプラが数ミリのフレークに砕かれ、工場のラインを流れていく。
この状態ではポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)の主要な3種が混ざっているが、水に浸して、浮かぶPPをまず分ける。沈んだPSとABSを、ミキサー車のような筒の中でグルグルすりあわせると、材質の違いでPSはマイナス、ABSはプラスの静電気を帯びる。それぞれのフレークを、二つの電極の間をヒラヒラと落とすことで、PSはプラス、ABSはマイナスにそれぞれに吸い寄せられるように二手に分別できるという。
プラの種類を高精度で分別できる技術は珍しく、三菱電機は自社の家電への再利用のほか、プラ容器などを使う大企業とも分別研究を進めている。
投入されるPSやABSの比率によって、静電気による分別の精度が変わってしまう課題を、AI(人工知能)で補う技術開発も進める。(竹野内崇宏)
マイクロ波で加熱、原料に戻す
プラスチックを、油(ナフサ)やモノマーにまで戻して、再び使えるようにする技術も研究が進む。
活躍するのが、電子レンジで食べ物を温めるときにも使われる「マイクロ波」という電磁波だ。
大阪大学発のベンチャー「マイクロ波化学」(大阪府吹田市)によると、マイクロ波は波長1ミリ~1メートルの電磁波。
波長などを調整すれば、ねらった物質を熱することができ、エネルギー効率が高い。制御が難しく、大型化が必要な産業界ではあまり使われてこなかった。
同社は、化学メーカーと協業して、プラをマイクロ波で加熱して、原料となるモノマーや油に戻す「ケミカルリサイクル」の研究開発を進めてきた。様々なプラに幅広く対応できるのが強みだという。
2021年度からの三菱ケミカルとの実証では、車のテールランプに使われるアクリル樹脂の分解、リサイクルに成功。事業化に向けて検討を進めているという。
マイクロ波化学では26年の販売開始を目指して、場所の制約が少ない、小型装置の開発も始めた。
事業開発部の河東田祐理部長は「プラは軽くて、輸送効率が非常に悪い。廃プラが出る工場で油に戻し、工業地帯に送って、使ってもらいたい。そんな事業モデルの検証や開発を進めている」と話す。(鈴木智之)
再生プラの利用計画、策定義務化 政府方針
政府は、大量にプラスチックを使う企業に対し、リサイクルしたプラの利用を義務づける方針を固めた。
利用計画や実績を報告させる。再生利用の流れを強化し、資源の確保や脱炭素にもつなげる考えだ。早ければ来年の通常国会で、資源有効利用促進法などの改正を目指す。
義務化の対象は、製品の製造過程で一定量以上のプラを使用している企業を想定。再生材の使用拡大に向けた計画の策定とともに、使用実績の定期報告を求める。
再生プラの使用量には義務を課さないが、取り組みが不十分な企業に対する改善命令や、罰則の導入も検討する。
再生プラの利用推進の流れは欧州が先行している。欧州連合(EU)では早ければ2030年ごろに、新車の生産に使うプラの25%以上を再生材にする規制案を発表。
一方、日本国内では、すでに同法が企業に対し、再生プラの活用に努めるよう努力義務を課しているものの、具体的な方法までは定めていなかった。
プラスチック循環利用協会の統計では、廃プラの「有効利用率」は87%にのぼる。
だが、燃やして熱からの発電などにいかす「サーマルリサイクル」が全体の62%で、二酸化炭素の排出につながる面がある。
プラを材料に再びプラに生まれ変わる「マテリアルリサイクル」は22%にとどまっていた。
6月には、経済産業省の有識者会議が、再生プラ利用の義務化などを求める報告書案をまとめていた。
焼却処分だけでなく、製造段階でも二酸化炭素が出るため、プラ対策は、脱炭素をめざす上でも重要となる。
プラの原料である石油を含め、物価高騰や円安、途上国の発展に伴う需要の増加などで資源確保が厳しさを増す。
回収後に焼却するのではなく、資材として再び活用することでサーキュラーエコノミーへの転換や経済成長を促す狙いがある。
資源循環の強化をめぐっては、コバルトなど希少金属(レアメタル)も対象とする見込みだ。
コバルトやリチウムを使う「リチウムイオンバッテリー」の製造工程で出る端材などについて、再生利用を義務化する方針としている。(竹野内崇宏)
「わかる」とは「分ける」こと・・・
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