会社拡大戦略で大きく失敗した2つの事例
2024.09.04
by 吉田猫次郎
事業をするからには拡大させたい会社の規模。しかし、それにはくれぐれも注意してほしいと語るのは、著者の吉田さん。
失敗の事例を2つ挙げて注意を促しています。
会社拡大のおそろしさ
拡大戦略を全否定するつもりはありませんが、これまでに沢山の失敗事例を見てきましたので、会社を拡大させる事にはくれぐれも注意してほしいというか、綿密な計画を立てて実行してほしいと思います。特に計数計画。
【PL項目】
1.売上高 - 拡大すれば、それに比例して売上が上がるのか?(一過性ブームはNG)
2.粗利 - 拡大すれば、粗利率が上がるのか?(率が大事)
3.営業利益 - 拡大すれば、営業利益が上がるのか?
【BS項目】
1.拡大に伴い、必要資金も増加するが、現預金残高はキープできるのか?
2.売掛金、在庫などは、気持ちが大きくなって必要以上に増加しないか?
3.固定資産も同様。設備投資は良いが、気持ちが大きくなって利益の出ない固定資産(別荘、社宅、高級車、豪華な本社など)が無駄に増加しないか?
4.拡大のために、借入金過多に陥らないか?(それが成長戦略なら良いが)
5.未払金や未払費用(特に消費税と社会保険料)が増加する心配はないか?
6.資金調達はできるのか?(借入でも資本でも)
7.自己資本比率が低い、あるいは債務超過なのに、無謀な拡大路線を突っ走っていないか?
などなど。
上記をそのまま、事業計画に落とし込むこともできます。拡大を目指す際には、ぜひこれらのチェック項目を満たしてほしいものです。
【失敗事例1】
あるキャンプ用品メーカーがありました。この会社はキャンプブームに乗り、2017年までの年商3000万円水準から大きく飛躍し、2021年には年商2億円、2022年には2億8千万円を突破しました。「めざせ5億!」が合言葉でした。
利益も出て、2021年は営業利益2000万円超、2022年には営業利益2500万円超を計上。銀行も融資に積極的で、2021年から2022年の間に2億円のニューマネーを借り入れました。
しかし、「一過性のブーム」であるという自覚が無かったのでしょう、この会社は、ある工場を数千万円で買収して、自社工場を立ち上げました。本社ビルも大きく拡げ、内装や事務機器を全て一新。従業員も、自社工場の職人から本社の受付嬢まで増員し、年商3億足らずの事業規模なのに、総勢30名を超えました。
こうなると、固定費の負担だけでも大変な金額になります。
経営に陰りが見えてきたのは、2022年暮れ頃からでした。キャンプブームはまだ続いていましたが、リサイクルショップにキャンプ用品が溢れ、競合先も増え、思うように売れなくなってきたのです。
2023年の売上は伸び悩み、2億円にとどまりました。こうなると、過大な設備投資が裏目に出てしまいます。多額の経費がかかっている為、5000万円を超える営業赤字となりました。とりわけ、人件費、社会保険料、家賃、消費税の負担が重く、たちまち資金が枯渇していきました。
私はこの会社から相談を受けたことはありません。社長さんとも面識はありません。
なので詳細はわかりませんが、昨年から資金ショートを起こし、あらゆる支払が遅延しているようです。
【失敗事例2】
無計画・放漫経営による失敗事例です。
この会社の社長さんは資本金1億円を集めて、10年ほど前に起業しました。ビジネスモデルそのものは将来性があり(広い意味でIT系)、実際、初年度から年商3億円を超え、5年後には8億円に達し、税引後当期純利益も5千万円を叩き出し、毎年、千万単位の法人税を払っていました。
しかし、この会社はさまざまな問題を内包していました。
まず社長。年間の交際費は2000万円近くに達し、そのほとんどを社長が使っていました。会社名義で車両が10台ほどありましたが、その中の3台は社長の車で、中にはイタリアのスポーツカーなども並んでいました。保養所や社宅もあり、これらの多くは社長が私物化していました。(後に、税務調査が入り、スポーツカーと社宅が否認されました・・・)
社内のマネジメントも悪く、1年以内に従業員が離職する率は4割以上にのぼりました。
こうなると、商品の「質」が低下するのは時間の問題です。案の定、質の低下に伴い、売上の伸びにも陰りが見え始めてきました。
設立7年目になると、悪循環からどうにも脱却できなくなってきました。
・従業員の定着率は低い。その分、採用コストがかかる。
・売上が伸び悩んでいるから、広告宣伝費を増やし、値段も下げないと売れない。
・必然的に、薄利多売、いや、赤字体質に陥る。
・社長が社宅やスポーツかーなど私物化しているので、銀行は社長に個人保証を求めてくる。(しかも思うように借入できない)
・税務調査で追徴課税をくらい、これを一括で納付できなかったので、ますます銀行借入ができなくなる。しまいには税務署から差押予告が来た。
・資金ショート。ここでやっと、役員報酬カット。交際費カット。スポーツカーと社宅を売却。
・しかしそれでも追い付かず、銀行にはリスケを求め、年金機構と税務署には換価の猶予を申請。
・従業員からは愛想を尽かされて、良い商品は生まれてこない。
拡大すると、自分が大きくなったと勘違いしたり、増収増益がいつまでも続くと勘違いしたり、何かと勘違いしやすいものです。
その点、特に気をつけてください。拡大と成長は違います。
※ メール・BLOG の転送厳禁です!!
よろしくお願いします。
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