「GPT-4oは小学生でも解ける問題を間違える」からこそ「世界モデルを持つLLM」に投資資金が流入する
中島聡氏が見つけた「AIブーム」の伸び代
2024.08.27
by 中島聡
現役エンジニアはもちろん市場関係者からも注目を集めている中島聡さんは「Windows95の父」として知られる日本人エンジニア。そんな中島さんが、「今のAIブームは一過性のものではなく、まだ二合目ぐらいで、しばらくは積極的な投資が続く」と考える理由とは?
「世界モデルを持つLLM」に高まる期待。AIブームはまだ2合目、人工知能市場の伸び代大きく
GPTに代表されるLLM(大規模言語モデル)が、研究者たちの予想を上回るほどの能力を発揮した今、彼らが次に目指しているのが、LLMにWorld Model(世界モデル)を持たせることです。「世界モデル」とは、私たちが生まれてから、体を使って得た、重力・慣性・摩擦・反射・反作用などの物理法則を含めた、「私たちが生きている世の中は、こういうものだ」という主観的なモデル(=何かを理解したり説明したりするための、シンプルにした考え方)のことです。
私たちは、上に投げられたボールは下に落ちてくることを経験則から知っていますが、それこそが「世界モデル」で、それは、人間だけでなく、犬や猫も持っています。
LLMは、与えられた文章の次の言葉を予測するように教育された人工知能なので、もっともらしい文章を作ることは得意です。
しかし、犬や人間のように、自分の体を使って物事を体験していないため、世界モデルが(人工知能が持つニューラルネットの中に)構築されていないのが弱点です。
GPT-4oが間違える問題(1)「引くと書いてあるドアを押すと?」
この弱点が良くわかる問題を二つほど作り、ChatGPT(GPT-4o)に投げかけてみました。
この問題は、「引く」と書いてあるドアを反対側から押すとどうなるか、という小学生でも分かるような簡単な問題が、LLMには解けないことを示しています。
教育プロセスで与えられたデータの中に、引くべきドアの反対側から押すような記述がないから、と説明することも可能ですが、やはり実際の世の中の仕組みを自らの体で経験していないために「世界モデル」を持っていないという説明の方が、より汎用的です。
GPT-4oが間違える問題(2)「綿菓子の上にレンガを乗せると?」
こちらは、「綿菓子の上に、レンガを乗せたら、綿菓子が潰れてしまう」という小学生にとっても自明なことが、LLMには思いつけないことが分かる問題です。
LLMは、「綿菓子は柔らかい」ことも「レンガは重い」ことも(言葉では)知っていますが、それを繋ぐことができないのです。
研究者の中には、「LLMに世界モデルを持たせる、手足を与える(ロボットの中に入れる)しかない」と主張する人もいます。
ロボットや自動運転向けには、シミュレータを使って、ニューラルネットを教育することも十分に可能なので、それと(LLMのベースになっている)トランスフォーマーを組み合わせて、「世界モデルを持つLLM」を作れるかもしれません。
そう考えると、人工知能には、沢山の「伸び代」があることが分かります。
今の「AIブーム」が一過性のものではなく、まだ二合目ぐらいで、しばらくは積極的な投資が続くと私が考えている理由がここにあります。
☞【関連】AIを飛躍的に賢くする「世界モデル」とは何か? ☜ LINK
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